ワールドカップを楽しむウイスキーコレクション

6月 8, 2026

サッカーのワールカップ開催にあわせ、大会を非公式に記念したウイスキーのコレクションが英国で登場。そのユニークな内容とは?

文:ブラッドリー・ウィアー

第23回FIFAワールドカップの開催が目前に迫っている。今回は米国とメキシコの共催で、代表48チームが競い合う史上最大規模の大会だ。

今大会は、カーボベルデ、キュラソー、ヨルダン、ウズベキスタンの4カ国が初出場を果たす。だがウイスキーファンの注目は、「タータン・アーミー」ことスコットランド代表にも集まるはずだ。スコットランド代表の本大会出場は、1998年のフランス大会以来。ウイスキーマガジンが英国で創刊されてから、スコットランドは一度も出場していない。

そして英国からは、もちろんイングランド代表も出場する。下馬評では、スコットランド代表よりも好成績を収めるという大方の予想だ。だが例年通り、イングランド人が優勝以外の結果に満足することはないだろう。

このビッグイベントにあわせて、マスター・オブ・モルトは面白い記念ウイスキーを発売した。イングランド、スコットランド、アイルランドの独立系ボトラー商品5種類による新しい限定コレクションだ。

このうちイングランド産ウイスキーは2種類で、イングリッシュ・ウイスキー(2013年蒸溜の12年熟成)と、アドナムス(9年熟成)だ。アドナムズは、フレンチオーク樽で熟成されたライウイスキーである。この9年という数字は、歴代イングランド代表のエースストライカーを務めてきた背番号9の選手たちにオマージュを捧げている。ギャリー・リネカー、アラン・シアラー、マイケル・オーウェン、ウェイン・ルーニーを思い出してほしい。そして今年の9番は、もちろん主将のハリー・ケインだ。

アイルランド産のウイスキーは1本のみで、赤ワイン樽の12年熟成原酒とバーボン樽(ファーストフィル)の8年熟成原酒をブレンドしたものだ。

意地悪なサッカーファンのみなさんなら、「でもアイルランドは、予選敗退でしょ?」とツッコミを入れることだろう。だがマスター・オブ・モルトのチームは、どうしてもアイルランドをラインナップに加えたかった。なぜなら予選が開催されるずっと前から、ラインナップに含める銘柄選びを進めていたからである。アイルランド代表のファンのみなさんは、サッカーはともかく美味しいウイスキーだけでも楽しんでいただきたい。

そしてコレクションでもっとも注目すべきは、2種類のスコットランド産ウイスキーだ。ひとつはハイランドの蒸溜所で蒸溜された12年もの(蒸溜所名は非公開)で、オロロソシェリーのホグスヘッド樽で熟成されている。

もうひとつのボトルが、ベン・ネヴィス27年だ。このシングルモルトウイスキーは、1998年のヴィンテージである。つまりスコットランドが前回出場を決めたフランス大会の年に樽入れされたものだ。まさに運命的な巡り合わせともいえるウイスキーは、ペドロヒメネスのシェリー樽で27年間の熟成を経ている。

このコレクションは全ラインナップが限定品であり、各銘柄につき66本から340本という数量で販売される。

サッカー愛がみなぎるラインナップ

コレクションの仕掛け人は、「ドクター・ウイスキー」ことサム・シモンズ氏だ。アトム・ブランズおよびマスター・オブ・モルトの親会社であるアトム・グループのウイスキー部門責任者を務めている。

サッカーをテーマにしたウイスキーというアイデアは、チームメンバーのおかげで魅力的な内容に仕上がったのだとサムは言う。

サッカーとウイスキーを愛する人なら、スコットランド代表に注目してほしい。日本企業が所有するベン・ネヴィス蒸溜所で、1998年のヴィンテージ。スコットランド代表はこの年以来の本大会出場であり、同じ年に日本代表も初出場を果たした。

「うちにはサッカー好きが何人かいます。特にヴィッキーというメンバーが、『ワールドカップに合わせてイングランドのウイスキーを商品化しよう』と主張してくれたんです。どの蒸溜所の原酒を使うべきか、すぐにピンときましたよ」

当初はイングランド代表チームだけのアイデアだったが、それだけは済まなくなった。そもそも会社の貯蔵庫が、エディンバラにあるのだ。サムがワールドカップの記念ボトルについて話すと、チームメイトのゴードン・ホッガンが「スコットランド版も用意するよね」と尋ねてきた。

「実はスコットランドのことなんて、まったく考えていませんでした。でも『ああゴードン、確かにそれはいいアイデアだね。うっかり見落としていたよ』と言ったら、ゴードンは『例のベン・ネビスで行きますか?』と提案してきました。ちょうど熟成中で、ペドロヒメネス特有のレーズンっぽい風味も加わっています。いずれは使うつもりだったし、蒸溜年もぴったりでした」

このアイデアに敬意を評し、ボトルには「ウィスキー・ガファー」(ウイスキーの親方)という肩書きでゴードン・ホッガンの名前も刻まれている。スコットランド代表チームの監督にはなれなくても、ゴードンはこれで満足してくれたはずだ。

風味の組み合わせに関しても、サム・シモンズは工夫を凝らしている。イングランド産もスコットランド産も、熟成期間の長短で飲みやすさに明確な違いがあるというのだ。

「2種類あるウイスキーで、熟成年が若いアドナムズの9年とハイランドの12年は、どちらもぐいぐい飲めるタイプ。でも熟成期間の長い2種類は、じっくり味わうタイプです。後者は観戦中に1杯だけ楽しむためのウイスキーといってもいいでしょう」

仕掛け人が応援する意外なチーム

クリエイティブなアプローチの一環として、社内デザイナーのベン・マッケオンとクリス・ガンサーがラベルを制作した。イングランドとアイルランドが出場したイタリア大会(1990年)や、スコットランドが出場したフランス大会(1998年)など、英国とアイルランドのチームがワールドサッカー史で活躍した時代を想起させる。サム・シモンズは、デザイナーたちの技量に称賛の言葉を惜しまない。

優勝候補の一角と目されるイングランド代表。今回はハリー・ケインが背負う伝統の「9」をアドナムスのライウイスキーでオマージュした。

「ベンとクリスは最高の仕事をしてくれました。驚くほど短期間で、こういうデザインを仕上げてくれるんです。依頼内容を的確に理解し、アイデアを生き生きと具現化してもらいました」

サム・シモンズとチームにとって、このように創造的で自由な商品開発はいつでも楽しい出来事だ。

「月曜日に思いついたアイデアが、金曜日に現実のものとなるようなスピード感。時には失敗することもあるし、実現できなくて諦めるアイデアもあります。どうしてもウイスキーの味わいが合致しないことだってありますから」

さてサム・シモンズ自身は、ワールドカップでどの代表チームを応援するのだろうか。

「今回はノルウェーを応援しなければなりません。妻がノルウェー人で、私も2年前からノルウェーに移住しています。スコットランドと同様に、ノルウェー代表も久しぶりの本大会出場ですよ。前回出場した時は、ブラジルに勝って国中がお祭り騒ぎになりました」

アーリン・ハーランドがノルウェー代表の攻撃を牽引し、番狂わせがあるかも知れない。イングランドやスコットランドを応援するみなさんも、大会記念のウイスキーがあれば心強い。どんな結果に終わっても、素晴らしいウイスキーだけは楽しむことができるのだから。

ここで紹介したウイスキーは、FIFA、UEFA、各国サッカー協会、ユニフォーム提供メーカーとの提携関係は一切ない。

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