新しいジャパニーズウイスキーの楽しみ方
三郎丸蒸留所(富山県)と嘉之助蒸溜所(鹿児島県)が、互いの原酒をブレンドしたモルトウイスキーを発売する。際立つ個性の融合を楽しみ、新しいジャパニーズウイスキーの実力と多様性を味わうチャンスだ。
文:WMJ
日本国内のウイスキー蒸溜所は、10年ほど前から急増している。計画中の事業も入れると、もうすぐ130箇所に達する勢いだ。かつての大手数社による寡占市場は終わり、日本のウイスキー業界は全国的な群雄割拠の時代に移行した。いまや数の上では国内の9割以上を占める新興メーカーだが、売上総額では全体の1割にも満たない。小規模な事業が多く、まだ原酒の大半が熟成中のためである。それでも世界的なアワードで表彰され、国内外から大勢の来訪者を引き寄せる生産拠点も増えてきた。
富山県砺波市の三郎丸蒸留所は、そんな新しいウイスキーメーカーを象徴する存在だ。独自に開発した世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」から、ピートの効いたスモーキーなモルト原酒を生み出す。国際的なアワードやイベントでも、その豊かなポテンシャルが注目されている。
そんな三郎丸蒸留所が、限定商品『三郎丸 龍虎 Double Distillery SABUROMARU×KANOSUKE』を発売する。これはジャパニーズウイスキーの新時代を象徴する画期的なボトルである。モルト100%だが、シングルモルトではない。なぜなら鹿児島県の嘉之助蒸溜所の原酒をブレンドしているからだ。嘉之助蒸溜所でも、同時に三郎丸蒸留所の原酒をブレンドした商品を発売するのだという。
蒸溜所同士によるモルト原酒の交換は、スコットランドで古くから盛んな商慣習だ。小規模メーカーがギルドのように連帯し、互いの価値を高めあう。個性的なウイスキー生産者が増えた日本でも、このようなメーカー同士の協働が始まりつつある。
今回コラボした三郎丸蒸留所と嘉之助蒸溜所には、もともと共通点が多い。どちらも日本の伝統酒を製造してきた老舗メーカーで、創業家の末裔が社長を務めている。本格的なウイスキー製造に乗り出したのもほぼ同時期だ。世界的なアワードで、共にウイスキーの品質やビジター体験が高く評価されている。良きライバルであり、同志でもある2つの蒸溜所の原酒交換プロジェクトなのだ。
異なる個性が解け合うブレンド
だが三郎丸と嘉之助は、それぞれに異なる酒質で知られている。三郎丸はヘビリーピーテッドのモルトを使用した「スモーキー」な香味が特徴。また嘉之助蒸溜所は、ノンピートのモルトと先駆的な焼酎樽熟成による「メロー」な飲み心地が身上だ。
この対照的なモルト原酒をブレンドすることで、どのような香味が生まれてくるのか。実際に『三郎丸 龍虎』の処方を手掛けた稲垣貴彦氏(三郎丸蒸留所代表兼マスターブレンダー)が語った。
「今回の特別ボトルは、三郎丸のモルト原酒を主体としながらも、嘉之助のメローな甘やかさで丸みを出しています。両者の酒質を引き立て合うようなブレンドに仕上げました」
実際に味わってみると、三郎丸らしいピートの主張にまったく不足はない。そこに嘉之助の特徴であるまろやかな口当たりや甘さがプラスされた贅沢な印象だ。嘉之助蒸溜所代表でマスターブレンダーを務める小正芳嗣氏が、このウイスキーを味わって感想を述べた。
「三郎丸のしっかりとしたピート香のなかに、嘉之助のメローな甘やかさが柔らかく溶け込んでいます。素晴らしい形で融合した仕上がりに驚き、今回のプロジェクトをやってよかったと心から感じました」
タイプの異なる酒質だからこそ、巧みなブレンディングによる新境地に驚かされる。嘉之助蒸溜所が発売する『嘉之助 コラボレーションシリーズ01 KANOSUKE x SABUROMARU』も、この原酒交換の面白さを嘉之助の側から表現したウイスキーだ。ラベルに記された「MELLOW MEETS PEATED」というコンセプトが、その香味に美しく結実している。
稲垣貴彦氏は、今回のプロジェクトの意義について次のように説明した。
「ジャパニーズウイスキーの価値を世界に発信していく上でも、蒸溜所同士が力を合わせる取り組みは有効です。このような商品がきっかけとなり、それぞれの蒸溜所の個性が多くの人に理解していただけるように願っています」
そんなコラボレーションの精神は、ラベルのデザインにも表れている。海外でも知られた日本古来の「龍虎図」が、現代の浮世絵師の手でアレンジされた。伯仲するライバルが対峙するのではなく、同じ舞台で共演する絵柄だ。この「龍虎」のモチーフは、今後も同様のコラボレーションで発展していくことになる。
『三郎丸 龍虎 Double Distillery SABUROMARU×KANOSUKE』の国内流通は2500本程度で、希望小売価格は1本20,000円(税別)。料飲店を中心に展開され、蒸留所直営店の大正蔵では嘉之助限定品との2本セット限定60組も用意される。総本数の35%程度を海外に割り当て、龍虎のラベルとともに日本のクラフトウイスキーの実力を世界のウイスキーファンに示す。
今回のプロジェクトを追った動画「三郎丸 龍虎SABUROMARU × KANOSUKE COLLABORATION The Story Behind (コラボレーション ザ・ストーリー・ビハインド)」が、6月11日から順次公開される。三郎丸蒸留所の公式SNSアカウント(Instagram、X)から最新情報をチェックしよう。
ジャパニーズウイスキーの新たなステージ
今回手を組んだ三郎丸蒸留所と嘉之助蒸溜所は、ともにウイスキー観光の分野でも高く評価されている。ウイスキーとその風土を体験する旅のスタイルは世界的なトレンドだ。
そんなウイスキー観光にぴったりのツールが、このたび日本でも誕生した。その名もジャパニーズ・ウイスキー・パスポート「銅印帳」である。
スタンプラリーの旅といえば、まず四国のお遍路を思い出す。八十八箇所霊場巡拝の「納経帳」相当するアイテムが「銅印帳」だ。この銅印帳に記載されている蒸溜所で「銅印」を購入し、指定のページに貼っていく。全蒸溜所の「銅印」をコンプリートすれば、記念の「銅カード」(有料)が発行できる。北海道から沖縄まで、三郎丸蒸留所を含めた現在28箇所の蒸溜所がこのプロジェクトに参加している。
東西南北に長い日本列島で、現在100軒以上の蒸溜所が個性豊かなウイスキーをつくっている。大好きなウイスキーを味わうため、日本を訪ねる世界のファンも増加中だ。ジャパニーズウイスキーの多様性や成長のダイナミズムを体験するのに、これほど相応しい旅のスタイルもない。読売旅行出版社が発行するジャパニーズ・ウイスキー・パスポート「銅印帳」の詳細はこちらから。
原酒交換による限定ボトルや「銅印帳」を携えたウイスキーツアーは、新しいジャパニーズウイスキーの魅力を発見するチャンスになる。ウイスキーグラスのなかに産地それぞれの風土を感じながら、多様性や独自のこだわりを感じてほしい。未知との出会いが点と点をつなぎ、ウイスキーの未来が垣間見えてくるはずだ。
![]() |
ブレンデッドモルト・ジャパニーズウイスキー
|
WMJ PROMOTION








