第20回を迎えた「モダンモルトウイスキーマーケット2026」が盛況
景気の動向にかかわらず、世界のウイスキーは着実に進化している。秋の恒例イベントは、その現在地を知るチャンスだ。
文・WMJ
上質なウイスキーは、季節を選ばず楽しめる。それでも秋の恒例イベントは、やはり新しいシーズンの始まりを感じさせてくれる。そして気になるブランドの変化や近況を確認できるチャンスでもある。
三陽物産が主催する「モダンモルトウイスキーマーケット」は、今年で記念すべき第20回を迎えた。大阪と東京の2会場で開催されるプロ限定のイベントだが、開場時間にはいつも入口に長蛇の列ができる。最高の1杯を求める人々の熱気は例年通りだ。
ウイスキーの香りが漂う会場に入ると、いつも人々のざわめきで満たされている。ウイスキーのみを取り扱う見本市としてはもっとも歴史があり、規模も国内最大級という業界のビッグイベントだ。
グラスに注がれたウイスキーをめぐって、カウンター越しに語られるさまざまな言葉。新進メーカーに注目するバー店主たちは、昨年の記憶をたどりながら熟成の進行をチェックしている。メーカーや輸入代理店は、実験的な新商品でプロたちの反応を探っている。
別フロアの会場では、テイスティング付きのセミナーも開催される。どんな経験値の聴衆であっても、各ブランドがとっておきのウイスキーとストーリーで魅了する。ここで出会った新しい知識と感動は、料飲店や酒販店でウイスキーファンを育てる原資になるだろう。
激動の20年を越えて
「モダンモルトウイスキーマーケット」の第1回が開催された2006年は、ウイスキー市場にとって冬の時代だ。ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏が2007年に秩父蒸溜所を設立したときも、ウイスキーの将来に懐疑的な人は多かった。
だが2007年頃から、ワールド・ウイスキー・アワードでジャパニーズウイスキーが世界最高賞を獲り続ける。金融危機の2008年を乗り越えると、2009年にサントリーがハイボールブームを仕掛けて世界に波及させた。
やがて世界的なウイスキーブームが到来し、日本では2014年のNHK朝ドラ『マッサン』が社会現象にまでなった。ウイスキーの需要に刺激され、世界中でたくさんのクラフト蒸溜所が設立される。日本での設立ラッシュを後押ししたのは、先駆者たる秩父蒸溜所の実績とノウハウだ。
その頃にウイスキー製造を始めた厚岸蒸溜所、静岡蒸溜所、長濱蒸溜所、津貫蒸溜所は、みな今年で10周年を迎えている。つまりそろそろ10年熟成の商品も視野に入ってくる頃だ。関係者やファンは、ますます新進メーカーの発売情報に敏感である。
今年の「モダンモルトウイスキーマーケット」には、もちろんそのような日本各地の蒸溜所から新作のウイスキーがたくさん持ち込まれている。これまではニューメイクしか味わえなかった蒸溜所からも、一定期間の樽熟成を済ませたサンプルが出品されるようになっている。ワールド・ウイスキー・アワードの予選にも、しっかりと熟成されたジャパニーズウイスキーが例年よりもはるかに多く寄せられたようだ。
着実に発展する業界
イベント会場にはビッグブランドと新進ブランドが共存し、ウイスキー市場のさらなる成熟を示している。メーカー担当者も来場者も、みな眼差しは真剣だ。サンプルについてあらゆる質問や意見が飛び交い、最後は「おいしい」の一言で互いに笑みがあふれる。
新進のジャパニーズウイスキーだけでなく、有名ブランドもさまざまな限定商品でウイスキー通を惹きつける。料飲店や酒販店としては、発売前のボトルも試飲できるのがイベントの魅力だ。限定ボトルの購入券は抽選制で、「ハイランドパーク54年」(800万円)や「オールドプルトニー50年」(400万円)といった超高級銘柄のボトルも並んでいる。
東京会場の出店者は、昨年よりも1社増えて22社となった(大阪会場は21社)。グランフロント大阪で開催された大阪会場(9月28日)の入場者数は1000名で、アキバ・スクエアで開催された東京会場(10月2日)の入場者数は1530名。昨年と比べても微増している。
世界では経済の先行きを不安視する人も多い。嗜好品であるウイスキーは、もちろん景気の影響を大きく受ける。しかし製造に長い期間を擁するため、他の飲料のように慌てて対応できる余地は多くない。焦っても時短はできないが、そのかわりに辛抱強く待てばしっかり実を結ぶ。それがウイスキー製造の世界だ。
それではウイスキーファンに気の長い人が多いのかといえばそうでもない。みんな新しい話題が好きで、変化を楽しみにしている。年に一度のイベントは、そんなウイスキー特有の時間感覚を体感できる機会でもある。
「モダンモルトウイスキーマーケット」は来秋も酒類業界関係者限定で開催される予定だ。気になるあの蒸溜所も、また1年熟成を重ねたウイスキーで新境地を見せてくれるだろう。時間はゆっくりとしか進まない。だがウイスキーの熟成も止まらない。







