アイラ・フェスティバルが40周年【第1回/全3回】

5月 4, 2026

アイラ島の人々、文化、音楽、自然、そして名高いウイスキーを称えるアイラ・フェスティバル。愛されるイベントの現在地に迫る。

文:ティス・クラバースティン
写真:ベン・シェイクスピア
©Ben Shakespeare

アイラ・フェスティバルの意義を伝えるのに、フランス人女性の逸話を持ち出すのは不自然に感じられるかもしれない。だがアイラを外部と内部から見つめてきた人の視点は、この島の特殊性を描き出すのにぴったりなのだ。そのフランス人とは、ウイスキーライターのマルティーヌ・ヌエである。

マルティーヌ・ヌエは、アイラ島に惚れ込んで約20年にわたって島に住んでいたこともある。初めてアイラ島を訪れたのは、1990年代初頭のことだった。ボウモアのプレスツアーに参加し、島内の小さな空港で飛行機を降りた瞬間に人生が変わってしまったのだという。

アイラ・フェスティバルは、ウイスキー以外の魅力を発信して観光客を誘致するために始まった。今でも音楽や踊りの催し物は活発である。

「そのまま飛行機のドアの前に立ち尽くして、しばらく動けませんでした。あらゆる匂いに魅了され、もう気絶しそうなほどでした。そんな出会いの瞬間はすぐに過ぎ去りましたが、同行していた仲間のジャーナリストたちも私の様子に驚いていました。いくらアイラが好きでも、ちょっと度を越しているんじゃないかと。でもそれほど強烈だったんです。『一目惚れ』ならぬ『一鼻惚れ』ですね」

フランス料理とウイスキーを専門に記事を執筆していたマルティーヌ・ヌエは、アイラ島に漂っているさまざまな香りに圧倒された。海藻、ヨード、羊毛、草などの匂い。当時の彼女にとっては、すべてが新鮮だった。

だがそんな島の匂いも、イーラッハたち(ゲール語で「アイラっ子」の意)にとっては変わらぬ日常の一部でもある。

それはアイラ島のウイスキーも同様だ。ウイスキー産業は島中の至る場所で営みを続け、その影響は土地の隅々までに及んでいる。地元の人々はもとより島の魅力を誇りに思っているが、アイラモルトの世界的な影響力についてはやや戸惑っている。その大きさをまだ受け止めきれていない面もあるのだという。

かつてラガヴーリンやポートエレンに在籍し、現在は新興のポートナーチュラン蒸溜所で蒸溜所長を務めるジョージ・クロフォードは言う。

「昨夜テレビ番組を見ていたら、画面にラガヴーリンのボトルが映り込んでいたので驚きました。ウイスキー業界で長いこと働いていますが、あいかわらず島の地酒が世界で愛されているという現実を受け止めきれません。なにしろウイスキーは私たちの生活そのもので、ささやかな日常のすべてみたいなものですから」

ウイスキー不況の時代に始まったフェスティバル

アイラ島の経済は、ウイスキー産業と共に浮き沈みを繰り返してきた。ここ数十年はおおむね上昇傾向にあり、かつてないほどの人が島を訪れた。このような観光ブームは、島がどれだけの人数を受け入れられるのか試す機会にもなった。いずれにしてもウイスキー業界全体の成功が、島の経済にとって有益であることは証明されている。

フェスティバル開催中は、島の人口が普段の3倍になる。どんな時間を過ごすかは、訪れる人次第だ。

逆にウイスキー産業全体が不振に陥ると、すぐに地域経済も打撃を受けることになる。特に1980年代はその典型だった。蒸溜所が次々と操業停止や閉鎖に追い込まれ、働いていた多くの人々が職を失った。それはとても厳しい時代であり、アイラ島内の地域社会は対策を講じなければならないという焦燥感に駆られた。

苦境に陥った島民たちが切望していたのは、島外の人々を呼び寄せるような催し物だ。つまりアイラ島の魅力をアピールできて、自分たち住民だけでなく、外部の人たちも引き寄せてくれるようなイベントだ。

まさにそんな役割を果たしたイベントが、「アイラ・フェスティバル」(正式名は「Fèis Ìle」で発音は「フェイシュ・イール」)だった。

アイラ・フェスティバル協会は1985年に設立され、当初から地元の文化振興を目標に掲げていた。現会長のフローレンス・グレイが説明する。

「アイラ島は観光地でもありますが、観光シーズンは夏に限られていました。だから新しいイベントでこれまでにない面白さを打ち出しながら、観光シーズンを引き伸ばしたかったのです。私自身も旅行が大好きですが、いつも故郷に戻ってくるたびにアイラの良さを実感します。以前は5月も6月も閑散期でしたが、アイラ・フェスティバルの開催によって新たな活路を開くことにもなりました」
(つづく)

2026年のアイラ・フェスティバルは、5月22日から31日まで開催される。公式ウェブサイトはこちらから。

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