アイラ・フェスティバルが40周年【第3回/全3回】
文:ティス・クラバースティン
写真:ベン・シェイクスピア
©Ben Shakespeare
アイラ・フェスティバルのために、ラガヴーリンの樽を選定したこともクロフォードにとって印象深い思い出のひとつだ。ラガヴーリンの貯蔵庫を長年にわたって管理していたピンキーことイアン・マッカーサーと一緒に、樽の選定プロセスに参加できたのは光栄だったと振り返る。
このようなフェスティバル限定ボトルへの需要は極めて高いので、各蒸溜所は最終的に生産ロットを拡大しなければならなかった。それはラガヴーリン蒸溜所も同様だったとクロフォードは語る。
「雨の中で4時間も並んでボトルを手に入れようとしたのに、結局手に入らなかった人も出てきました。当然ながら不満が出て、蒸溜所のスタッフが対応しなければなりません。このような需要を現場で管理するのは難しかったのです」
かつてはアイラ島への巡礼者だけが手に入れられた限定ボトルだが、現在では生産量を増やして、世界中で販売する蒸溜所もある。だがキルホーマンのアンソニー・ウィルズは、この方針に完全には賛同していないのだと語る。
「キルホーマンでは、今でも初心を貫いています。フェスティバル限定ボトルを手に入れられるのは、オープンデーにキルホーマンを訪ねてくれた人々だけ。わざわざフェスティバルに足を運んでくれる人たちには、世界中のどんな場所でも手に入らない唯一無二のウイスキーを手に入れる権利があるべきだと思うからです」
フェスティバル限定ボトルの一般販売が増えるにつれ、アイラ・フェスティバル期間中の行列は減ることになった。もうかつてのような長蛇の列は見られないとウィルズも述べている。だがキルホーマンがアイラ・フェスティバルへの参加を始めた当初は、本当に長い行列ができたものだ。
このような変化には、アイラ・フェスティバル協会のフローレンス・グレイ会長も気づいている。昨年は島内の混雑ぶりは以前と変わらなかったが、以前よりも全体的に運営がスムーズだったという各蒸溜所からの評価も寄せられた。グレイ会長は語る。
「フェスティバルを訪れるウイスキーファンも、目利きになってきました。ただ高額なボトルを必死に集めようとはしなくなったのです。ボトルの購入より、フェスティバルそのものを体験して楽しむのが優先です。アイラの蒸溜所は、みんな一度このプレミアム路線に突き進みました。でもそんな商品が目当ての富裕層は、そんなに大勢いるわけでもないんです」
エリクサーが手掛ける40周年記念のブレンデッドモルト
アイラ・フェスティバルの40周年を記念し、アイラ・フェスティバル協会は独自の限定品を発売する。これはエリクサー・ディスティラーズ(ポートナーチュランを所有する独立系ボトラー)と提携し、名だたるアイラモルトをブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーだ。詳細は5月上旬に発表される予定だが、フェスティバルが開催されてきた各年代のモルト原酒がブレンドされる見込みである。
このウイスキーは、フェスティバルのルビーアニバーサリー(40周年)にちなんでルビーポート樽でフィニッシュされ、販売利益の100%が協会に寄付されるのだという。
この寄付金は、蒸溜所から集められた「Fèis Ìle」表記の使用料とともに業界の資金となる。フェスティバル開催前後はもちろん、年間を通じて島で開催される文化イベントの支援に充てられる予定だ。こうした地元のイベントは、ウォーキングやケイリー(伝統の唄と踊り)など、第1回フェスティバルとよく似た内容になると見られている。
現在の運営委員会は、この機会に初期(1980年代)のアイラ・フェスティバルの精神を再現しようと考えている。フェスティバルの開催を通して、地域社会や地元住民のための企画を再び充実させたいというアプローチだ。
通常ならすぐに完売する人気イベント「フォークナイト」は、より多くの人を収容できるようボウモア・ラウンド・チャーチで開催される。フローレンス・グレイ会長が、その内容について教えてくれた。
「本当の意味で、アイラの人々と一緒に過ごせる夜になるでしょう。地元のミュージシャンに加え、今年は合唱団も参加します。伝統音楽を演奏する学校のバンドや地元の歌手たちはもちろん、別の島から来たゲール語の歌手たちも加わって盛り上げます。私たちアイラ島民が、どんな人生を楽しんできたのか、さまざまな側面が披露されることになるでしょう」
例年の盛り上がりの中心となるウイスキーよりも、今回のイベントではアイラ島の素晴らしさを多角的に楽しむ要素がたくさん盛り込まれる。
アイラ島の住民たちは、なぜ故郷アイラをここまで誇りに思っているのか。アンソニー・ウィルズやマルティーヌ・ヌエのように、島外で生まれた人々をなぜここまでに惹きつけるのか。そんな秘密が、フィスティバルを通して再び明らかになるだろうとウイスキーライターのマルティーヌ・ヌエは語る。
「アイラ島の魅力は、そこに住む人々そのもの。アイラの人々は、いつもあたたかく迎えてくれます。たとえ苦しい状況にあっても、笑顔を絶やすことがありません。ここに来るたび、いつも故郷の家に帰ったような気持ちになります。受け入れられていないと思ったことは一度もありません」
そんなマルティーヌ・ヌエが、アイラ・フェスティバルの未来に望んでいることは、フェスティバル期間中にやってくる観客たちが、アイラ島のウイスキーや蒸溜所以上だけでなく、島のすべての魅力を楽しんでくれることだ。
「この島には、あらゆる魅力が溢れています。自然だけをとっても、本当に他に類を見ない美しさです。アイラ・フェスティバルに来るなら、少なくとも数時間はウイスキー以外の時間をとってください。ウイスキーのボトルを持って、ビーチに散歩に出かけるのもいいでしょう。岩の上に座って、ラガヴーリンを飲んでみてください。それが私の好きな『ラガヴーリン・オン・ザ・ロック』なんです」
2026年のアイラ・フェスティバルは、5月22日から31日まで開催される。公式ウェブサイトはこちらから。







