ウイスキーとチーズの相性

November 30, 2013

ウイスキーとチーズは夜の食卓を飾る最高の組み合わせのひとつである。
Report:ケイト・ポートマン

大雑把に考えなければならない時もある。
フードとウイスキーのマッチングが、新しい世代がウイスキーへの扉を開けるために本当に重要なことであるならば。あるいは、まだ疑り深いウイスキー愛好家を味の新境地と向き合わせようとするならば。

手の込んだ料理に合わせてウイスキーを見つけ出すことよりも、むしろ幅広く大胆にウイスキーと本当に合うフードを提案し、いろいろな可能性を含めて実際に試せないだろうか。ではウイスキーとチーズという組み合わせを提案しよう。

チーズは種類、舌ざわり、一連のフレーバーにおいて非常に多彩であり、同じくらいに素晴らしい多様性を持つモルトウイスキーを組み合わせることにより、ひとりひとりの嗜好に合うウイスキーを見つけられるかもしれない。

ちょうどチョコレート(私にとってウイスキーと合うもうひとつの簡単で最高のフード)と同じように、チーズは多くの愛飲家の関心を引き寄せられるフードである。しかし、チョコレートとウイスキーとの組み合わせと違って、チーズとウイスキーは予想外の組み合わせであり、ウイスキーを飲まないほとんどの人には決して思いつかないことだろう。だからこそ、その効果に気づくと、より大きな発見になる。この発見が話題のネタとなり、地元のウイスキークラブや友人とのテイスティング会でも簡単に試す事が出来る。準備不要、料理不要という手軽さから、容易に実施できるのだから。

チーズはワインとの理想的な組み合わせであるというこの古い先入観を払拭することによって、まだウイスキーを試したことの無い人達にウイスキーを知ってもらいたい、という本誌の目的は遂行できる。

実は、ワインとチーズは素晴らく相性が良いというわけではない。チーズは、そのピリッとした刺激と強いフレーバーが口の中で出会うほとんどすべてのものを負かす力があるので、ワインと組み合わせるのは、本当は非常に難しい。チーズの脂肪は味を隠し、ワインのより繊細なフレーバーを味わう嗅覚を鈍らせる。同時に、ワインの中でも最近人気の高いビッグなパンチのあるタイプは逆に、高い酸度とタンニンによって私たちの味蕾芽を効かなくしてしまうのだ。

一方ウイスキーはチーズとのマッチングに、はるかに良い立場にいる。アルコール度数が高いので、口の中で溶剤のように作用し、鼻につくチーズの効果を切り離すのに役立つ。チーズの特徴はウイスキーのフレーバーを妨げることなく、むしろウイスキーのフレーバーと結合する。この過程では、また意外なことに、隠れていたチーズのフレーバーが引き出され、美味しいモルトに本来備わっている甘さも引き出される。お互いの特徴が強いので、ウイスキーの方が同格の組み合わせであり、より軽い種類のウイスキーでさえもこの油断ならない食べ物に拮抗できる。

ドライフルーツ、ナッツや塩味のビスケットのように、チーズに合わせるものを考えると、ウイスキーがその多くのフレーバーを提供できることは明白だ。同様に、ウイスキーにはチーズに合うたくさんの舌触りと食感がある。例えば、クライヌリッシュのあのワックスっぽい舌触り、あるいは、カリラのようなアイラモルトが持つオイルっぽさだ。

ウイスキーとチーズの組み合わせを試みる理由が確かに増えてきた。では、実際にはどうやるのが一番良いのだろう?

まず、もし上質のウイスキーでこの組み合わせを試そうとしているなら、質の良いチーズを選ぶことが重要である。チーズを専門に扱っている店舗で買うのをお勧めする。自分が味わうまでそれが正しく、かつ最適の条件で保存されていることが保証されるからだ。グループでテイスティングするのなら、全員がチーズかウイスキー、あるいは存分に楽しむためにはその両方を持ってくるように頼むべきだろう。一度のテイスティングには3種類から6種類くらいがちょうど良いと思う。ウイスキーに関しては、私は200mlの小瓶の大のファンなのだが、このサイズが小さな集まりにはまさに最適なのだ。

テイスティングの進行として、少し上品なフレーバーを持ち、かつ一番マイルドなチーズから始めるといいだろう。ソフトなゴートチーズなどがお勧めだ。次にブリーグリエールに進み、それから固めのチーズやピリッとする熟成したチェダー、最後はスティルトンロックフォールのようなブルーチーズで終わるのが合理的である。

ウイスキーを時々飲む人やウイスキーを好きになり始めたばかりの人と一緒にテイスティングするなら、最初にウイスキーに数滴の水を加えることを提案してみよう。そうすればアロマが開いて、フレーバーも広がる。ウイスキー通も1滴の水から恩恵を受けることになる。なぜならチーズの味を強めることができる『甘さ』を生じさせるからである。

テイスティングを始めるにあたって、まずウイスキーを軽くひと口含んで口慣らしをする。そのままウイスキーを口の中に留めてから、飲み込んでフィニッシュを味わう。ふた口目のウイスキーで、チーズを食べて、その結果を味蕾芽(舌)で堪能する。もちろん、すべてが一緒に上手く作用するとは限らないが、うれしいことに成功率は高い

さて普通はここまで来たところで、さまざまな種類の具体的な組み合わせについて詳論し、それぞれが効を奏する理由を説明するところだが、大雑把さに始めて実際に試すことが大事だという最初の論点に戻り、話はここまでにすることに決めた。
以下に、インスピレーションを得るためのいくつかの組み合わせ例を紹介しているが、次は読者自身にお任せして、素晴らしいアイディアを思いついてもらいたい。

お勧めの組み合わせ

スティルトン:バルヴェニー21年ポート・ウッド、あるいは、ロングモーン16年
チェダー:コンパス・ボックス・アシラ、あるいは、タリスカー18年
パルミジャーノ・レッジャーノ:グレンキンチー10年
カシェル・ブルー:レッド・ブレスト・アイリッシュウイスキー
ブリー・ド・モー:ザ・グレンリベット18年、グレンモーレンジ・オリジナル
ゴートチーズ:アードベッグ・ブラスダ
ロックフォール:ラガヴーリン16年

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