ザ・イタリアン・ボルツ
イタリア人が采配を振るう、エディンバラのウイスキーバーを訪問
Report:ガヴィン・D・スミス
エディンバラでは、ウイスキーを提供するバラエティと創意工夫に満ちたバーやホテルにはもはや事欠かない。だが1902年製のハイランド パーク1ショットを販売する場所はひとつしかない。最近オープンしたばかりのザ・ウイスキー・ラウンジだ。190ポンド出せば、年代物のオーカディアンをはじめ、約千種類以上のシングルモルトがすべてグラス1杯から楽しめる。
ザ・ウイスキー・ラウンジはリースで長年の創業を誇るレストラン、ヴィントナーズ・ルームズの一角にあり、イタリア生まれの料理店主シルヴィオ・プライーノが采配を振るっている。ヴィントナーズ・ルームズがスコットランドの首都エディンバラの美食家たちによく知られた存在なら、これらをテナントとしているこの建物もまた、多くのモルトウイスキー愛好家にはおなじみとなっている。というのも、上層階はザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(ザ・ソサエティ)の本部だからだ。
ボルツは1682年、ヨーロッパ大陸から輸入したワインを貯蔵するためにリースに建設されたもので、その一生はワインとウイスキーに捧げられた。1985年にザ・ソサエティが移ってくる前は、ここは、この建物と1753年から先祖代々からのつながりがあると主張するウイスキーブレンダーJ・G・トンプソン社が長らく共同経営者となっていた。
2009年11月以来、ヴィントナーズ・ルームズはシルヴィオ・プライーノと彼の仲間で同胞のジュゼッペ・ベニョーニとの共同経営となっている。ふたりは20年来の付き合いで、ベニョーニは1969年からウイスキーのコレクションを始め、現在はイタリアのボローニャに拠点を置く「ウイスキーパラダイス」のビジネスを行っている。ウイスキーパラダイスは、コレクターにとっては世界的に知られたリソースだが、ベニョーニ自身のウイスキーの一連のコレクションも、1996年に死去したエドアルド・ジアッコーネの膨大な数のコレクションが加わったことで急増した。
ベニョーニによると、「トータルで約5万本のボトルを個人的に所有しているが、スコットランドにザ・ウイスキー・ラウンジを持つことは長年の夢だった。ここに置いてあるのでは、主に60年代から80年代にかけてのものだ。全て、もはや市場には出回っていないボトリングばかり。我々は、ウイスキー愛好家にここを訪れてもらって、こういった年代物のボトルを試飲する機会を持って欲しいと思っている。これほどの種類の年代物のウイスキーのボトルを開けて、売り物にしているのは他に誰もいないからだ」
ザ・ウイスキー・ラウンジは小粋で居心地がよくスタイリッシュだが、気取ってもおらず、控えめだ。年代モノのウイスキーのボトルが並んでいる棚の数々が全てを物語っている。1902年製のハイランド パークは多分、ここのメニューの中では最も年代物で高価だが、レア物ウイスキーの愛好家にとってこのラウンジへの訪問は、お菓子屋さんで子供を自由にさせるようなものなのだ。
例を挙げてみると、このバーの目玉とも言えるのだが、オリジナルにナンバリングされたワイン「貯蔵庫」のひとつには、ゴードン&マクファイルの1936年のボトリングを始め、70種類にも上るマッカランが揃っている。当然ながら、ウイスキーのリストはワインリストと同様広範囲に及び、リスト自体にも1974年製バローロといった至宝の数々が収録されている。
これまではシングルモルトだけしか提供してこなかったが、ザ・ウイスキー・ラウンジは常に進化するプロジェクトであり、ベニョーニは「スコッチウイスキーブレンドを250から300種類加えるつもりだ」と抱負を語った。
プライアーノは、彼の既存のクライアント層がザ・ウイスキー・ラウンジの顧客になってくれることを期待しているが、「我々は全く新規の顧客層を獲得したいとも願っている。ザ・ウイスキー・ラウンジを本当に目当てに来る人々だ」と言う。
しかし、この点ではプライアーノは心配する必要はない。このラウンジのオープニングとともに、スコットランドのウイスキー専門店の多くが、自分たちの名声を保つよう、気をつけなければならないからだ。17世紀に建造された「ザ・ボルツ」への新たな入居者であるザ・ウイスキー・ラウンジは、世界中の真剣なウイスキー愛好家にとって、必ず訪れるべき場所のトップになりつつあるようだ。