Lost Distilleries―セント・マグダレン
ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド(DCL)の創立時につくられ今もウイスキーファンを夢中にさせる蒸溜所のひとつについてその歴史を語る
Report:ガヴィン・D・スミス
バーナードが訪れたときにセント・マグダレンを所有していたドーソン一族は1912年まで蒸溜所を操業していたが、この年にA&Jドーソン有限会社は破産。その同じ年に貪欲なディスティラーズ・カンパニー・リミテッド(DCL)が蒸溜所を買収したことを知っても、熱心なWMJ読者は驚かないだろう。1915年、セント・マグダレンはDCLの子会社であるスコティッシュ・モルト・ディスティラーズ(SMD)がその創立当初から所有した5つの蒸溜所のひとつになった。他の蒸溜所は(ラナークシャーのウィショウにある)クライスデール、グレンキンチー、(ファイフのバーンティスランドにある)グランジ、そしてローズバンクである。セント・マグダレンはDCL帝国のなかでは目立たない蒸溜所のひとつだった。つくられたほとんど全てのウイスキーはブレンド用の樽に送られる運命にあり、1980年代、DCLの合理化計画が始まると、セント・マグダレンは生産過剰の蒸溜所と見なされた。
この蒸溜所は町の中の一角に位置し、比較的周囲を閉ざされていたので拡張の可能性はなく、払い下げたり、再開発した方が重要な価値を得られた。加えて、ブレンデッド・ウイスキーのマーケットはローランド・モルトを比較的少量しか必要とせず、DCL自体は、ローランドの蒸溜所としてグレンキンチーとローズバンクの操業を継続させた。
1980年代に閉鎖された多くの蒸溜所は、再開発計画により完全に建物が取り壊されているのだが、セント・マグダレンの主要な部分は住居として生き延び、チャールズ・ドイグ設計のモルト・キルン・パゴダは、その地の過去をはっきり記憶するものとして今も存在している。
閉鎖されてから30年を経たが、セント・マグダレンのシングルモルトは見つけるのがそれほど困難ではなく、うまく熟成したという評価をも得ている。
3つの23年エクスプレッションがディアジオ社からレアモルト・シリーズとして販売され、その後は、19年として発売された1979年、2004年にはスペシャル・リリース・プログラムの一環として30年の「リンリスゴー」を売り出した。
近年ではベリー・ブラザーズ&ラッド、ダグラスレイン、スコティッシュ・リキュール・センター、そして、シグナトリーが出している1982年のシングルカスク・ボトリング、ゴードン&マクファイルは、「レアオールド」にラインアップされている1975年のボトリングを売り出している。









