ウイスキーと料理の相性占い

August 16, 2012

 

ウイスキーは、様々な料理にぴったりと合わせられる食中酒にもなる。 ただし、その作法を間違えさえしなければ……。 本誌「最新ボトルテイスティング」でもおなじみ、 フランス生まれのマルティーヌ・ヌエが、 マリアージュの基本を解説する。

文:マルティーヌ・ヌエ

ウイスキー・ディナーが、世間でも徐々に人気を増しているようだが、いつも最高の調和が約束されているわけではない。合わせてみてがっかりするようなマリアージュの失敗は、アロマの特性だけに注目してマッチングしてしまうことが原因でよくおこる。素材のテクスチャー、色、調理法なども考慮に入れなければならないのだ。
色々な食材でマリアージュの検証をした後、私は日々の食卓でウイスキーを楽しみたいと思っている方々のためにいくつかのガイドラインをまとめようと考えた。

アロマの化学に基づいた科学的なアプローチは、この問題に確かな指針を与えてくれるかもしれない。分子レベルから料理を検証すれば、さらに多くのことを学ぶこともできるだろう。しかしそれと同時に、私は自分の官能評価、直感、経験、調理技術の専門知識などに基づいて判断することも大切だと信じている。

読者の皆様にマリアージュ経験を深めていただくため、このアプローチが目安となることを願う。堅苦しいことは不要。目指すゴールはただひとつ、楽しさと面白さだ。
そんなわけで、まずは戸棚と冷蔵庫を開けて、すぐに楽しめそうな食材を吟味することから始めよう。キャビネットには、世界中のすべてのウイスキーが入っていると仮定する。
料理の技法と盛りつけなどの供し方のヒントについては、また別の機会に検証するので乞うご期待。

 

●アンズ

熟れたジューシーなものも、乾燥させたものも、様々なマッチングの面白さを提供してくれるフルーツだ。

おすすめ:アプリコットパイ(カスタード入りもOK)をグレンリベット、ロングモーン、グレンロッシーなどのスペイサイドモルトと一緒に。

NG:アンズをベースにした料理を、オーク香の強いモルトと合わせてはいけない。果実の酸味がウイスキーの苦味とぶつかって喧嘩する。

 

●ナッツ類

ウイスキーの相棒といえば、やはりナッツ!

おすすめ:アーモンドは比較的若いウイスキーに。煎ったヘーゼルナッツはちょっと古めのウイスキーに。長期熟成ものにはクルミがよく合う。

NG:ナッツとウイスキーなら、どんな組み合わせでも失敗しない。

 

●チーズ

実に多彩な実験意欲をかき立てる食材。チーズとウイスキーは相性抜群のデュオだ。

おすすめ:ブルーチーズをピート香の強いウイスキーと組み合わせる。例えば、ラガヴーリンとスコットランド産ラナークブルーのペアリング。チーズは「パン・ド・カンパーニュ(フランスの田舎パン)」のスライスの上に乗せ、添え物のセロリスティックを橋渡し役にしよう。

NG:チェダーチーズ、ゴートチーズ、ブルーチーズなど雑多なチーズの盛り合わせを、ひとつのウイスキーに合わせても意図した調和は得られない。チーズは同系統のものからで揃えること。

 

●チョコレート

ご存知の通り、かなり一般的に楽しまれているマリアージュ

おすすめ:ダークチョコレートを、シェリーカスクで熟成されたリッチで深みのある古いウイスキーに合わせる。

NG:ミントチョコレートをウイスキーと一緒に食べるのは、個人的に嫌い。ミントと砂糖のミックスが舌を支配してうんざりさせ、ウイスキーを重たく感じさせたり、ウイスキーの風味を圧倒したりしてしまう。

 

●鴨

シェリー熟成のウイスキーと最高の相性を見せる。

おすすめ:シリンジ(注射器)で、鴨肉にウイスキーを注射する(ウイスキーにサラサラのハチミツを混ぜてもいい)。

NG:軽くてフローラルなシングルモルトには合わない。

 

●ニンニク

ニンニクの香りはいかにも食欲をそそるが、残念ながらウイスキーの天敵だ。

おすすめ:ニンニクだけは、まったくおすすめできない。

NG:ニンニクは吸血鬼を殺すというが、同じようにウイスキーも殺してしまう。

 

●牡蠣

なんと素晴らしい組み合わせ!

おすすめ:肉厚の牡蠣に、ラフロイグを2滴。

NG:牡蠣を開けて、中の汁をとっておいてもいいことはない。ウイスキーの繊細な塩気が失われてしまうので、捨ててしまおう。

 

●洋ナシ

若いスペイサイドローランドアイリッシュなどのウイスキーが洋ナシと合う。

おすすめ:洋ナシにブルーチーズを添える。

NG:洋ナシ自体に失敗はない。ウイスキーに合いそうなレシピで食べよう。

 

●根菜

野菜のなかでも、根菜類がもっともマッチングしやすい食材だ。

おすすめ:皿にウイスキーを振りかけておき、オーブンであぶり焼きにした根菜を皿の上でなじませる。

NG:根菜とウイスキーのマッチングで、失敗する理由は見当たらない。

 

●サラダ

脂っぽい舌触りのあるノジシャ(ラムズレタス)や、スパイシーなコショウソウ(クレス)が面白い

おすすめ:サラダを他の食材の下に敷いて、料理のプラットフォームとして用いる。

NG:濃厚なドレッシングは避けよう。

 

●スカンピ(テナガエビ)

相性の良いウイスキーは2種類。ピート香とヨード臭が強いモルトか、バーボンカスクで熟成されたモルトだ。

おすすめ:平鍋にウイスキー少々、ショウガひとつまみ、ライムジュースを数滴入れてなじませてからスカンピを調理する。

NG:調理前にエビをウイスキーでマリネするのはやめた方がいい。

 

●スモークサーモン

よく知られたマリアージュ。

おすすめ:レモンとディルをふりかけると、ウイスキーとサーモンをつなぐ素晴らしいブリッジになる。

NG:スモーキーなウイスキーとスモークサーモンを合わせてはいけない。スモーキーさがぶつかって大喧嘩になる。

 

●酢

ウイスキーの味わいを引き立てることもあるが、取り扱いは慎重に

おすすめ:バルサミコ酢を使ってみよう。酸味が弱く、面白いアロマの広がりを感じられる。

NG:生酢は使わない方がよい。火を通すとその特性が感じられなくなる。

 

●カスタード

バーボンカスクで熟成した多くのモルトウイスキーは、香りも味もカスタードのようなクリーミーさを見せる。

おすすめ:コーヒー入りのカスタードなら、グレンロセス1985に合わせてみよう。オレンジの皮やココナッツ入りのカスタードには、オーヘントッシャンクラシックがいい。

NG:カスタードにウイスキーを混ぜてはいけない。間違いなく、げんなりさせる味になる。コニャックとラムならいいのだが、ウイスキーではだめなのだ。

 


【注意】

★必ず新鮮な食材を用いて料理すること

★フレーバーの組み合わせを欲張りすぎて混乱させないこと。私はいつも食材を三次元的に考えている。ひとつのメインの食材(肉、魚、サラダ、フルーツ)に、互いに異なった方向性を持つふたつのサブ食材。このふたつの食材は正反対の方向性を持っていたり、融合したり、補完し合ったりする。

★ウイスキーと料理をつなぐブリッジを探す。マッチングは共通の要素を増幅させるので、相乗効果を促進させる橋渡し役のようなものがあるといいのだ。それは調味料だったり、スパイスだったり、他の食材だったりする。ブリッジ役は、共通の分母のようなものだと考えて。

★常に季節を意識すること。夏にシチューのことを考えたり、冬に夏の果物のことを考えたりする必要はない。食事に合わせてウイスキーを選ぶこと。単一の蒸溜所が生み出す銘柄のなかにも、それぞれに季節を想起させる特性がある。

★料理とウイスキーのマリアージュを強化するため、調理の過程でウイスキーを加えてしまうという手もある。このような場合、ウイスキーは香り付け用食材として活躍する。

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