グレンリベットのフードマリアージュ

April 4, 2013

家でひとり孤独に酒をたしなんでも得られるものは限られている。イベントなどに参加する事で得られるウイスキー世界との相互交流こそが、あなたのウイスキー経験を豊かにしてくれる。


ザ・スピリッツ・オブ・スペイサイドのようなウイスキーイベントが発展し続けるのも当然である。こういったイベントへ参加すると、本サイトのような媒体で読んだ知識に五感を通じて体感できるだけでなく、ウイスキー仲間や、ウイスキーのつくり手たちとあれこれ話すこともできる。だから、スペイサイド・フェスティバルザ・グレンリベットが後援したフードとウイスキーのマリアージュ(組み合わせる)イベントで、親睦的な相互交流の精神に触れたことは非常に嬉しかった。

2009年のフェスティバル初日。土曜日の夜に、蒸溜所で開催されたレセプションは、ザ・グレンリベット初めてのウイスキーとフードのマリアージュに関する本、『ア・スピリテッド・マッチ』の発売を記念するものだった。この本の目玉は、ザ・リッツの料理長であるジョン・ウィリアムズのレシピである。ロンドンで一番有名な高級ホテルの大物料理長が考案した料理を紹介するとなると、重々しいダイニングルームの椅子に座ってフォーマルな料理がでてくると思ったかもしれない。

ところが、今回のテイスティングは、高級ホテルの料理長に協力を要請した既存のウイスキーとフードの組み合わせのイベントとは明確に一線を画したものだった。以前よりもはるかに気楽な会で、料理は、立食形式でさまざまな料理がウイスキーと一緒に出され、参加者はウイスキーとの組み合わせを楽しみながら互いに交流して話し合うことができた。その結果、活気に富む議論が生まれ、参加者はいろいろな組み合わせについての考えを他の参加者と分かち合い、シェフのジョンとも直接意見を交わすことができた。ジョンは、彼らの意見と評価を歓迎した。

さらに、このイベントに同席していたのは、『ウイスキーマガジン・フランス』のウイスキーマリアージュの権威、マルティーヌ・ヌエだった。彼女は、共著者としてこの本に非常に貴重な貢献をした。ザ・グレンリベットのウイスキーのシリーズと新鮮なフルーツ、ドライフルーツ、スパイス、チョコレート、チーズとの、シンプルだが非常に美味しい組み合わせについて、この本に協力している。組み合わせに関する彼女の原則は、読者が家庭で試せるようにすることを目的とし、ジョンのレシピの多くの基礎にもなった。

ジョンは、フードにスピリッツを組み合わせることをこれまでは考えてこなかったが、喜んでこの難題に立ち向った。
当然ながら、ジョンが最初にしたことは、ウイスキーをもっとよく理解するために蒸溜所に行くことだった。グレンリベットのウイスキーを同時に数種類のウイスキーを目の前に用意してすべて試せば、さまざまな特徴を比較、対比し、それぞれを分別することが出来ると考えた。この方法ならグレンリベットのさまざまなシリーズを横断できるので、多様なすべてのアロマとフレーバーを理解できる。
ジョンは論理的に考え抜いて、各シリーズが持つ個性を選び、付け合わせる料理のための基本的構成要素を整理し、それに他のフレーバーの層を付け加えることができるようにした。数多くのテイスティングと慎重な検討を経て、マルティーヌとザ・グレンリベットの関係者のテイスティング・ディナーがリッツで開催され、本に掲載するのための最終レシピの確定に達した。この発売記念イベントが人々にどのように受け止められるかが、マリアージュ企画が実際にどれくらい成功したかを示す最初の真のバロメーターになるだろう。

その夜の最初の組み合わせは、エスプレッソのカップに詰められたクリーミーなロブスター・ビスクザ・グレンリベット12年だった。この料理を思いついたのは、ジョンがスコットランドの「テロワール」はつまるところ海だと考えたときだった。この料理ではシーフードとウイスキーは仲間だが、濃厚なビスクのクリームっぽさもまた、12年のシルクのような口触りと通じるものとして機能した。全ての人がどんな飲物でもビスクのようなスープ状の料理と一緒に出そうと思うわけではないだろうが、ウイスキーを飲みながら食べる甘くジューシーなロブスターは身も厚く美味しかった。

次はワサビをそえたマグロのタルタルステーキだった。これは今晩のメニューのなかで、唯一本に載っていない料理だったが、セラミックのスプーンの上に載せて出されるという愉快で楽しい料理だったので、メニューに加えるだけのことはあった。ここでジョンは、一緒に添えた醤油のカラメルの特徴を利用してより熟成している18年と結びつけたのだが、ワサビの強烈さに立ち向かうのに十分なパワーを持っていた

3品目の前菜にもシーフードを中心としたメニューが続き、マンゴーのチャツネを添えたホタテのローストグレンリベット・ナデューラと一緒に出された。最初、それは柑橘っぽいウイスキーとチャツネに乗った芳しい少しのライムの皮とにつながりがあるように思えるが、口のなかで料理とウイスキーが組み合わさると驚くほどのショウガが爆発する。ジョンがこの料理をカクテル「ウイスキー・マック」の料理版と呼んだのも当然だ。

次にキッチンから届けられたおいしいご馳走は、大豆、ゴマとショウガと一緒にパートフィロで包まれたダックの三角包みだった。フィロ・ペイストリーと同じように、この料理にも見事にバランスがとれているたくさんのフレーバーの層が見いだされた。ほろ苦く、ショウガとトウガラシの暖めるような熱っぽさと対照的なチョコレートのリッチさをともなって、グレンリベット15年オールド・フレンチ・リザーブのリッチなオークっぽさを完成させた。

他には、スズキの赤ワイン添えウイスキーに浸したドライフルーツのチャツネが詰まったカマンベールチーズがあり、ティラミスとコーヒークレーム・ブリュレのクリーミーなデザートが美味しく締めくくった。

歓談していろいろ考え、皆と一致した意見は、料理が一口サイズで出されてもその素晴らしさだけでなく、いろいろな種類の料理を気楽に食べる余裕ができるというものだった。ホタテ、そして、ダックの料理の珍しいフレーバーの組み合わせが全ての料理の中で一番熱狂的に受けいれられたことは明白であり、ジョンに寄せられた意見も同じだった。彼は、それは参加者が何を期待するかに関係していると考える。つまり「驚き」は、より強い効果をもつ。だからおそらく、予想通りのチーズやデザートは、それがどんなに美味しくても、話題にそれほど上がらなかったのであろう。

私にとってこのイベントは、ウイスキーを飲む人が家で試している組み合わせについて会場で意見を聞くのに役に立った。そして、この出版記念イベントは確かに彼らを刺激して、さらに多くの組み合わせを試させるだろうという点で、目的を達成しているように見えた。

本書『ア・スピリッテッド・マッチ』に載っているレシピの長さと複雑さが少し心配だったが、参加者と話したところ、家でテイスティングをしている彼らの多くは何か特別なものを創造して共有しようとしているのは明らかだった。

可能な限り多くの人と経験を共有するということ。おそらくこの点こそが、すべてのなかで最も重要な要素として強調されなければならない。そうすれば、自分の好きな時に自分好みの相互交流に満ちたフェスティバルを開くことができるだろう。

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