シンガポールの夜を行く
夏も近づき、長期休暇には海外旅行を計画されている方も多いのではないだろうか。スコットランドへ!!と思うのはもちろんかもしれないが、もう少し近場で、となったらシンガポールはいかがだろう?
シンガポールは、人口500万人の小さな都市国家である。友人と連れ立って外食をする機会が多いお国柄だが、最近までは日本や台湾のような成熟したウイスキー文化が根付いていなかった。この国で最も人気のあるスピリッツは、ブランデーとスコットランド産のブレンデッドウイスキーである。夜の街を車で流すだけで、シーバスリーガルやジョニーウォーカーブラックラベルのネオンサインがすぐ目に留まるだろう。
シンガポール初のウイスキーライヴがラッフルズホテルで開催されたことをきっかけに、輸入業者がベンリアック1990やタリバーディン1965などのシングルカスク製品をシンガポール限定で販売し始めた。
ブランドの威光を高めるため、世界的なブランドがシンガポール市場を重要視する傾向がはっきりと見受けられる。ブラックボウモア、ホワイトボウモア、ゴールドボウモアの3種を味わう「トリロジー・ディナー」が開催されたのはニューヨークとシンガポールのみ。ウイスキー業界のブランドアンバサダーたちが、ディナーやテイスティングのためにこぞってシンガポールを訪れる契機となった。
状況が変わり始めたのは2005〜06年のことだった。シンガポール川沿いのクラークキー地区に「ハイランダー」が、リバーバレーロードに日本生まれの「Coffee Bar K」が続けざまにオープンしたのである。時を同じくして、ウイスキーに強いリテーラー「ザ・ウイスキー・ストア」と「ラ・メゾン・ド・ウイスキー」がそれぞれ出店し、さまざまな銘柄のシングルモルトが容易に入手できるようになった。
マキシウム(マッカラン)とペルノ・リカール(グレンリベット)の2社が、本格的にシングルモルトのプロモーションを開始したのはその直後だ。マッカランのファイン&レア(1926〜1976年)が大量に販売され、シンガポールでマッカランの実力を示す基盤を作り上げている。しかし当のマッカランは人気過剰のためにストック不足に直面しており、シンガポールで需要が高まっているシェリーカスク25年や30年を供給できていないのが実情だ。
東南アジア最大のバー
シンガポールのウイスキー愛好者は、25〜40歳の男性が中心である。好みはシェリーカスクで甘味のあるウイスキー。オーヘントッシャンスリーウッド、グレンドロナック15年、アベラワー18年、山崎18年などが大人気である。サントリーとニッカが代表する日本のウイスキーは、ここ数年のホットなトレンドだ。
ウイスキーの飲み方はオンザロックが主流で、とりわけ球状の氷がもてはやされている。大手の氷店「タック・リー・アイス」が、今では最初から球状に凍らせた氷をバーやレストランに配達しているのだ。
ウイスキー市場は急速に成長し、最初は2軒だったウイスキーバーも10軒近くまでに増えている。2011年1月、チャイムスにオープンした「オールド・アライアンス」は東南アジア最大規模のボトルセレクションを誇り、日本のウイスキー120本を含む1,000本以上のウイスキーを常備している。
シンガポールは都会的な美食の宝庫であり、楽しくウイスキーを飲んだ後にもまっすぐ帰宅することはほとんどない。ポークリブのスープ「肉骨茶」、インドの「ロティープラタ」、定番の汁麺「スライスフィッシュヌードル」などが、飲んだ後の「しめ」に人気の軽食である。
昨今ではマリーナベイ・サンズという巨大プールを有する総合リゾートホテルがメディアでも多く取り上げられていたが、日中にプールを楽しんだりするだけではなく、カジノやナイトサファリ 、ウイスキーバーと、夜を楽しめる国でもあるのだ。
The Auld Alliance
30 Victoria Street Chijmes
豊富なセレクションの中には非常に希少なコレクターアイテムも常備。
Quaich Bar at Resorts World Sentosa Waterfront
26 Sentosa Gateway, Resorts World Sentosa Waterfront, #01-293
Quaich Bar at Grand Copthorne Waterfront
390A Havelock Road, Waterfront Plaza, #01-09/10
クーンとジョイスのカップルが経営。シガールームもある。
La Maison du Whisky
80 Mohamed Sultan Road, Robertson Quay
パリにある本店を小型化した12席のバー。カウンターを囲む棚が壮観。
Coffee Bar K
76 UE Square on River Valley Road
日本スタイルのオーセンティックバーで、カクテルとウイスキーに定評。