WMJ的酒場放浪記・4 【大阪東通編その2】

June 10, 2013

通のアーケードから脇の路地に入ると、アーケードのまぶしいくらいの明るさとは対照的に暗い夜道に飲食店の看板が両側に煌めく。ウイスキーマガジン・ジャパンの酒場放浪記、第4回は大阪東通のバー「g-bless」へ

g-blessは飲食店が多く入るビルの1階、すこしだけ奥まったところに入り口がある。遠目からだと少し見つけづらいが、ドリンクメニューの看板と入り口に面した30cm四方の小窓からかろうじて中の様子を伺うことが出来るので、そこが目的のBARだと気づくことが出来た。いわゆる隠れ家BARと呼んでいいだろう。

扉を開けるとまずその重厚なJazzな音色に圧倒される。重厚でしっとりしていて音圧がある、非常に存在感のある音だ。音の力強さは存分に感じるものの、不思議なことにそれがうるさく聞こえたり耳についたりすることがない。

 

オーナーの秋山さんによると

秋山さん「BGMにはこだわっています。スピーカーもちょっとお金がかかっていますね。ウチはオーセンティックなスタイルというよりもお客様との会話を大切にする店ですが、お客様にくつろいでもらうため音楽も同じくらい大事にしています。」

女性の共同経営者田良尾さんと10年前に開店した同店は、今年の7月4日で10周年を迎える。隠れ家的にひっそりと、そして上品な大人の社交場というコンセプトを貫いている。店はカウンターのみ11席と決して広くはないがその分人間同士の距離が近く、暗い店内でもお互いの喜怒哀楽といった表情をしっかりと認識できる、まさに社交場だ。

そのカウンターを取り囲むボトルはやはりシングルモルトが中心だ。その数は約400にものぼる。さらにg-blessではワインも専用セラーでストックしており、しっかりとコンディション管理されたワインを楽しむことも出来る。時間があれば久しぶりにじっくりワインでも楽しみたいものだが、ウイスキーマガジンの取材であることと終電の時間が迫っていることを思い出し、秋山さんにおすすめの2杯をセレクトしていただくことに。

まずは飲みやすいもので、というところで「オフィシャル グレングラント10年(1,000円)」を頂いた。オフィシャルスタンダードといわれるグレングラント蒸溜所の基本アイテムだが、改めて飲むのは何年ぶりだろうか。

秋山さん「水割りでもソーダ割りでも、ストレートでも。オールマイティでこれぞスペイサイドモルトと呼べる味わいですね。青りんごの香りとか果実系のアロマがどんな方にも飲みやすいスタイルだと思います。」

改めて説明を聞きながら飲むと、なるほど確かにその通り。フルーティでスムースで飲みやすい。バーテンダーと話しながら飲むと、なんとなく飲むよりもずっとおいしく感じることができる瞬間だ。

2杯目にもらったのは何とも珍しい「ベンローマック オーガニック(1,000円)」。最も有名なボトラーのひとつ『ゴードン&マクファイル社』が所有するスペイサイド最小の蒸溜所のモルト。そしてオーガニックという肩書きは、秋山さんによると英国土壌協会による厳しい規定をクリアしたものにのみ与えられるもので、ウイスキーでは大変珍しいものだという。

果たしてその味わいにオーガニックを感じることができるかどうかは飲み手の心の込め方ひとつだと思うが、少しフェノールを感じる香り、独特なフルーティさは熟成年数以上にまとまっており、非常に美味。リーズナブルの値段の割には驚くべき完成度だ。読者の皆さんも見つけた際にはぜひ一度飲んでみていただきたい。

秋山さん「ウイスキーの導入部としてウチのお店が役立てばいいと思います。ウイスキーを飲むことをもっと習慣に、デイリーにできることにしたいですね。そのため、もちろんハーフショットもお出ししています。一方で自分もよく他所のお店に行って、いろいろなウイスキーを実際飲むことによって見識を深め、お客様にしっかりお伝えできるよう努めています。」

g-blessは可能な限りでおつまみなども提供してくれるが、このちょうど良いこじんまりとした空間ではやはりじっくり『飲み』そして『語らい』たい。外で軽く食事を済ませたあとに、ゆっくり話がしたいときに訪れるのが良いだろう。もし自分が次にこの店に来るときのことをイメージしてみると、『仕事のパートナーと日頃の労をねぎらいたいとき』か『マスターと美味い酒について話したいとき』、または『恋人とゆっくり話したいとき』のいずれかの姿を思い描いた。いずれにしても人と語らいたい時には、この大人の社交場のことを思い出してみて欲しい。

秋山さん「狭いですけど、男性と女性のバーテンダーがいるので、女性一人でもどうぞためらわずお越しください。小窓から中の様子を伺えますしね。」

このBARへの入り口は、扉というよりも小窓といったほうが良いかもしれない。入るのに少し勇気がいる隠れ家BARだが中を覗けばおのずと扉に手がかかるだろう。ぜひ小窓の向こうに広がる大人な空間をちょっと覗いてみてもらいたい。

Shot Bar g-bless (ジーブレス)

大阪府大阪市堂山町8-18 霧島レジャービル1F

TEL:06-6312-7177

営業時間:19:00~4:00

定休日:不定休

【MAP】

過去のWMJ的酒場放浪記はコチラ
WMJ的酒場放浪記・1 【中野坂上編】
WMJ的酒場放浪記・2 【浅草編】
WMJ的酒場放浪記・3 【大阪東通り編その1】

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