ザ・グレンリベット 日本向けシングルカスク発売
ペルノ・リカール・ジャパンは、日本のザ・グレンリベット愛飲家に向けて『ザ・グレンリベット シングルカスク ネビー16年』を販売した。オフィシャルボトルのシングルカスクで日本限定品という、ザ・グレンリベットでは極めて珍しい限定商品だ。同商品の発売を記念して、まさに発売日の2月4日、リーガロイヤルホテル東京で発売記念パーティが開催された。
世の中に限定商品と名の付く製品は多く存在しているが、ウイスキーに関してある商品が『限定』という名を冠するとき、それは本当の意味で限られたものである。特に『シングルカスク』ともなれば尚更だ。なぜならシングルカスクとは文字通り『単一の樽』から製品化されるウイスキーのことだからである。
一般的にウイスキーは、蒸溜後様々なタイプの樽に詰められ熟成したものを掛け合わせることで製品化される。これは品質のばらつきを無くし、かつ安定的に商品を供給するためでもあるが、たとえ同じ年に蒸溜したものでも熟成の過程で大きく異なった個性を得てしまうことは何ら珍しいことではない。
樽のタイプがそのウイスキーのキャラクターを決定づける最も大きな要素だが、何度使われた樽かということや、熟成中の気候や環境、ウェアハウスの天井に近い上の方で熟成したのか地面に近い下の方で熟成したのかにもよって、出来上がるウイスキーは全く違った個性を得る。思ったように素晴らしいウイスキーに育つものもあれば、樽から原酒が漏れてしまったり、アルコールが飛びすぎてしまったもの、樽の影響を受けすぎてエグみが出てしまったものなど、人間の個性のように千差万別だ。従ってそれらをまとめ上げてひとつのブランドにすることは生半可なことではない。飲み慣れている定番商品もその誕生までには多くの苦労と努力が注ぎ込まれているのである。
しかし一方で、出来上がったあるひとつの樽のウイスキーが想像以上に素晴らしい出来映えになることが稀にある。そのような原酒も本来であれば定番商品をつくるためのヴァッティング(混ぜ合わせる)するのだが、ヴァッティングせずとも抜群の仕上がり故に他の樽の原酒と混ぜることなく世に出されるのが『シングルカスクウイスキー』だ。当然その樽のみをボトリングするので、必然的に数は限られる。熟成年数にも依るが、樽のタイプによって多いものでも600本程度、少ないものでは数十本と、世界のウイスキー愛飲家の需要を満たすには到底及ばない本数だ。
樽のタイプ別ボトリング本数推定量
樽のタイプ | バレル | ホグスヘッド | バット | パンチョン |
ボトリング数(700ml) | 約200本 | 約250本 | 約600本 | 約600本 |
※上記数値はあくまで目安です。
このように本数という観点からもその価値が非常に高いシングルカスクだが、やはり注目したいのはリリースするに至ったその味わいだろう。今回リリースされた『ザ・グレンリベット シングルカスク ネビー16年』は果たしてどのような仕上がりか? 発売記念パーティのため来日しているブランドアンバサダーのイアン・ローガン氏のコメントを借りながら解説しよう。
ザ・グレンリベット シングルカスク ネビー16年
蒸溜年:1996
ボトリング年:2012年9月14日
カスクナンバー:130986
カスクタイプ:ホグスヘッド
総ボトリング数:210本(日本限定販売)
アルコール度数:56.3%(カスクストレングス)
容量:700ml
参考小売価格:36,750円(税込)
【ネビーという名の由来】
ネビー(Nevie)という名は、現在のザ・グレンリベット蒸溜所にほど近い丘陵地にあった牧場の名前に由来します。この牧場は、1839年にザ・グレンリベットの創業者ジョージ・スミスと長男のウィリアムが借地権を共同で取得し、牧場の周辺はリベット谷の中でもキリスト教布教以前の居住民にとって聖なる場所として聖なる場所と考えられていました。現在でも羊の牧草地として170年以上前の佇まいを今に残しています。
ローガン氏
「まず香りを嗅ぐと、それがすぐにザ・グレンリベットだと分かります。
熟したリンゴとトフィー。そのような熟成の過程から来る香りにアメリカンホグスヘッドから来るカラメルの香ばしさがバランスをとっています。
味わいはジェントルな舌触り、そしてスパイシーさとクリーミーさ。そのあとにトロピカルフルーツの味わいが無限大に広がります。
ハンドクラフトの精神を感じる味わいで、皆さんに美味しいと思ってもらえれば幸せです。」
確かに香りはピーチやバニラクリームの香りを感じる。バーボン樽の特徴がよく出ている。ローガン氏のようにこれがすぐにザ・グレンリベットだとは分からなくても、良質なスペイサイドウイスキーということは容易に想像することができる。フローラルさと若干のグラッシー(草)っぽさ、ハーブ感を掴めればザ・グレンリベットという答えに辿りつくことができる。
舌触りは粘性がありしつこくない程度に舌に絡みつく。白桃のバニラアイスがけのような瑞々しいフルーツ感と樽由来のバニラ感。酸はかすかに感じるが全体的に甘く、スフレやフルーツタルトを思わせる香ばしさもある。
定番商品と比べると12年やナデューラ系の味わいで、シェリー樽熟成原酒が使われている15年、18年、21年、25年とは一線を画している。飲み手の好みによるが、熟成感よりもフルーティさが好みであれば間違いなく口に合うことだろう。
10本と本数は限られているが、一部はまだ酒販店やバーなどで展開中とのことなので、この希少なウイスキーを味わいたい方はお近くのお店を探してはいかがだろう。
なお、今回のパーティはザ・グレンリベット ガーディアンクラブという会員制組織のメンバーから抽選で選ばれた幸運な100名が招待された。同クラブは入会費・年会費は無料で今回のような限定ボトルも優先案内が受けられるとのこと。会場では女性の姿も多く見られ、マニアックなサークルと言うよりは開かれた愛好会といった印象だ。今回の他にもイベントが随時開催されているようなので、興味のある方はhttp://www.theglenlivet.jpをご覧いただけばと思う。