モルトウイスキーのビッグイベントが連日の盛況
暑かった夏もようやく終わり、実りの秋へと向かうこの季節。モルトウイスキーの魅力を伝える国内有数のビッグイベントが、東京で次々と開催されて大勢の来客を集めた。
文:WMJ
街を吹き抜ける風にも涼しさが戻り、お酒も一段と美味しく感じられる9月初旬。秋の到来を待っていたかのように、東京都内でウイスキー業界を代表するイベントが開催された。
9月7〜8日の夜に恵比寿アクトスクエアで開催されたのは、MHD モエ ヘネシー ディアジオが主催する「グランドモルトテイスティング2017」。2011年からスタートした同イベントは、「秋の夜長とシングルモルト」をテーマに、多彩なシングルモルトを豊かなライフスタイルとともに提案している。同社が取り扱うシングルモルトウイスキー全12ブランドを自由にテイスティングできる隔年のイベントとあって、ウイスキーファンには見逃せない隔年イベントだ。2年ぶりの開催とあって、会場にはオープンと同時に大勢のゲストがやってきた。今回のイベントが提案するライフスタイルは「グランピング」。広い会場は大自然を模した心地よい空間に演出され、DJで作家のロバート・ハリスさんが写真家の猪俣慎吾さんらを迎えて楽しい旅談義。さらにCaravanのライブなども加わり、自由なムードで大人のウイスキーナイトを彩った。
またスコットランドからは天才ブレンダーとして名高いビル・ラムズデン氏が来日し、アードベッグの新商品「アン・オー」を発売に先駆けてお披露目。試飲カウンターでは人々がウイスキーの感想を述べあいながら思い思いの時を過ごしていた。
グランドモルトテイスティングの来訪者層は、前回よりもさらに多様化が進んでいる。シングルモルトウイスキーをカジュアルに楽しむ女性はますます増加し、20代の若者にも着実に浸透しているようだ。ビギナーであっても、お気に入りのブランドを挙げながらウイスキー談義ができる人も多い。伝統や品質を大切にしながら、新しいフレーバーを開拓していくブランドへの共感も伝わってくる。
プロ向けイベントにも日英のブランドが集結
また9月8日には、恒例の「モダンモルトウイスキーマーケット2017」がアキバスクエアで開催された。こちらは三陽物産が2006年からお酒のプロ向けに開催しているウイスキーイベントである。今年も出展13社が各社ブースで取り扱い品の試飲を提供し、限定品の販売や魅力的なステージプログラムを企画した。飲食店の経営者にとっては、コアな知識や最新のフレーバーに触れられる絶好のチャンスである。開催に先立ち、三陽物産代表取締役社長の岡田浩幸氏が語った。
「モルトウイスキーの魅力を多面的に伝えるため、2006年にスタートしたこのイベントも12回めを迎えました。当初は浸透に苦戦しましたが、近年のウイスキーブームによってシングルモルト市場は大きく成長しています。ハイボールを入り口に広がってきたウイスキーの本来の価値を伝え、ウイスキー市場に寄与するのがこのイベントの目的です」
岡田氏いわく、現在のウイスキー市場は2006年比で156%と大きく成長している。20代の飲用経験が焼酎を抜くなど、若い世代に広く浸透しているのも注目すべき傾向だ。会場はオープンと同時にウイスキーの香りで満たされ、各社カウンターは試飲をしながら情報を収集するゲストで賑わった。
注目のステージプログラムでは、サントリースピリッツの宮本博義氏が海のシングルモルト「ボウモア」の魅力を解説。さらに昨年操業を開始した厚岸蒸溜所からは立崎勝幸所長が来京して、現在の生産状況に関する詳細なプレゼンテーションをおこなった。モルトウイスキーの本場であるスコットランドからも、このイベントにあわせて多くの関係者が来日した。インバーハウスディスティラーズのアンディー・ハナー氏は、ビジターセンターさながらに「オールド・プルトニー」のウイスキーづくりを紹介。アラン蒸溜所のリージョナルセールスマネージャーを務めるアンディ・ベル氏、スプリングバンク蒸溜所のリージョナルセールスマネージャーを務めるデービッド・アレン氏、モリソン&マッカイの創業者、ケニー・マッカイ氏らも各社の最新リリース品をテイスティング付きで解説した。
そして恒例となっている限定品の抽選も大盛況。1本300万円の値がついた「ボウモア50年」の購入権が抽選で決まると、会場には歓声とどよめきが上がった。
世界的なウイスキー人気の拡大による原酒不足が懸念されるなか、新しいメーカーの登場や革新的な商品がウイスキーの魅力を広げている。「グランドモルトテイスティング」も「モダンモルトウイスキーマーケット」も、次回の開催が今から楽しみである。