リフィルの喜び
樽を繰り返し使うリフィルについて、ガヴィン・D・スミスがレポート。
ファーストフィルのシェリー樽とバーボン樽がスコッチウイスキー界のスターだとすれば、リフィル樽はTVドラマで目にして何となく知っているが名前までは覚えていない俳優に相当する。しかし役者の世界と同様に、注目を集めてレッドカーペットを歩く「セレブ」すべての陰では多くの堅実なプロフェッショナルたちが黙々とそれぞれの仕事に励み、その業界になくてはならない貢献をしている。ではまず、そもそも「リフィル」樽とは何か?
スコッチウイスキーの世界では、シェリーやバーボンなど法に適った何かのフィルに使用した後に、すでに1回スコッチウイスキーのフィルを済ませた樽のことだ。従って、少々紛らわしいが、セカンドフィル樽は実際には3回のフィルを経ていて、スコッチウイスキーのフィルが2回目ということだ。
シーバスでバランタインのマスターブレンダーを努めるサンディ・ヒスロップによると、「決してリフィル樽を軽んじてはいけません。ブレンダーにとっては不可欠なツールなのです。当社にとってリフィル樽は、特にブレンディングにおいては非常に、非常に重要です。特別な複雑さをもたらしてくれるもので、オークの影響を和らげるためにも使えますし、昔からのブレンドの維持にも役立ちます」
「ファーストフィル樽の多いブレンドであれば、強い風味になります。ブレンデッドとシングルモルトのスコッチウイスキーの話ですよ、本当に。例えばザ・グレンリベット12年の場合、樽の影響が蒸溜所の特徴を圧倒してしまわないように、レシピには一定の割合でセカンドフィル樽、サードフィル樽までも含めます。ザ・グレンリベット12年のレシピはブレンドとほぼ同じくらい複雑なのです!」
すべての樽には寿命があるが、その寿命を決定する要素のひとつがフィルの回数と長さだ。例えば、シングルモルトウイスキーを25年間熟成したセカンドフィル樽は、8年モノのウイスキーを3回熟成させて同じ年月を経た樽よりも、理論的には影響力が強く残っていることになる。樽の以前の中身が正確にどのような性質であったかも非常に重要で、クセの強いアイラモルトを入れていた樽は、何か特別な効果を出すためでもない限り、その後で繊細なものの熟成に使うことはできない。
シェリー樽でもバーボン樽でも、リフィル樽の作用は同じだと思うかもしれないが、ヒスロップによると決してそうではない。「シェリー樽では、バーボン樽の場合よりファーストフィルとセカンドフィルで影響の出方が大きく異なります」と彼は断言する。「1回目にはシェリーの風味がはるかに多く出るので、アベラワー10年などは非常に慎重にシェリー樽の在庫を管理する必要があります」
「セカンドフィルのシェリー樽でさえ、求めているあの豊かな『クリスマスケーキ』のような特徴が完全には出せないことがあります。セカンドフィルかサードフィルのバーボン樽であれば、何が得られるか常に確信していられます。以前にバーボンが入っていた樽は、その後のフィルすべてを通してソフトなバニラ風味が若干消失するだけですから」。ヒスロップによると、「シーバスの場合、グレーンスピリッツを熟成する樽も必要なので、一般原則としてサードフィルをグレーンスピリッツにあてます。その後、樽は庭の花台やオークチップになります」