復活 グレングラッサ
グレングラッサ蒸溜所がその歴史全体を通して過去3年間に最も名を馳せたことは確実だ。それもそのはず、死からよみがえった上に所有者が予想した半分の期間で利益を上げるという離れ業は、すべての蒸溜所にできるものではない。シングルモルトのスコッチウイスキーが最近流行っていることも一因かもしれないが、最大の要因は蒸溜所チームの熱心な努力と一連の興味深いリリースだ。
ウイスキーにとって幸運期になりそうな現在の状況は、グレングラッサ蒸溜所も微力ながらその役割を果たして形成されたことを忘れないようにしよう。そこで、話は2008年12月4日木曜日、私にはこの先ずっと忘れられない日に遡る。その日付はグレングラッサ蒸溜所の記憶にも長く生き続けるだろう。およそ1億円の投資をした後、初めてのニューメイクスピリッツが新しいスティルから流れ落ちた瞬間だからだ。そのスティルが「息(スピリット)を吹き返した」とき、私はそこに居合わせ、非常に緊張しながらも何気なさを装うスチュアート・ニッカソン(マネージング・ディレクター)とグレアム・ユソン(当時のマネージャー)を見守っていた。
ふたりの心配は無用だった。ニューメイクスピリッツはクリーンな香りで、草を思わせる快い特性を持ち、しかるべく熟成すれば洗練された繊細なシングルモルトになることが約束されていた。
当時私はグレングラッサ蒸溜所で、最近まで続いたコンサルタントとしての仕事をしていた(正確を期して付け加えるが、現在イアンは同蒸溜所と何ら継続的な関係を持ってはいない。編集者注)。蒸溜所が生き返ったからこそ私の仕事は終わりを迎えたので、それは感動的な瞬間だった。
あれから3年以上も経った今、グレングラッサ蒸溜所は「グレングラッサ・リバイバル」を発表した。ぴったりの適切な名前であり、私が特別な関心を持ってこの製品に接する理由もお分かりいただけるだろう。先ず印象的な点は、特に若いウイスキーとしては驚くほど暖かみのある色合いだ。今もこの蒸溜所を運営しているスチュアート・ニッカソンは言う。「新樽と、赤ワイン樽を含むリフィルカスクを使って熟成しました。その後、ファーストフィルのオロロソシェリーカスクで6ヵ月間後熟させています」
このような若いウイスキーは気持ちよく若くて生気があり、向こう数年間は確実に向上するため、難問を呈する。今飲むか、あるいは待つべきか? グレングラッサ蒸溜所の可能性を知るには、一連のリリースが続く今年末までたっぷり余裕がある。次の予定は、リバイバル・スモールバッチ。「これはテネシーウイスキー(ディッケル)の樽で熟成しました」とニッカソンは言う。「目下、カスクストレングスのままボトリングするか、46度に加水してボトリングするか話し合っています」
続いて、蒸溜所スタッフが選んだチョーズン・フュー(Chosen Few)シリーズから対照的な2製品がリリースされる。生産マネージャーのマイリ・マクドナルドは 1978年蒸溜のバーボンカスク熟成モノを選び、カスクストレングスでおよそ200本になる見込だ。価格はおよそ300ポンドになるだろう。
しかし同蒸溜所のロニー・ローレンスは、2009年蒸溜のファーストフィルシェリー樽を選択。これは40ポンド以下で手に入るはずだ。この2製品を飲み比べてみれば、34年モノの深みと豊かさが生気あふれる後者の将来の可能性を示して、さぞ魅力的なことだろう。
昨年、売上が60%以上も急増したこともあり、同蒸溜所のカスク購入計画は順調だ。「昨年度の数字が出たときは本当に驚きました」とスチュアートは言う。「うまくいくだろうと思ってはいましたが、収益はまだ数年先の見込みでしたから。でも、もちろん誰にも文句などありませんよ、チームにはこれで来年がもっと大変になったぞと言っていますけどね!」
「うまくいくだろうと思ってはいましたが、収益はまだ数年先の見込みでした」
そのチームは、ウィームス・ヴィンテージモルトにいたスーザン・コルヴィルが欧州担当ブランド開発マネージャーに着任して成長を続けている上、分別があって忍耐強いオーナーらも、利益の一部を投じて旧蒸溜所オフィスの中に小規模なビジターセンターが設けられつつあることに満足しているそうで、頼もしいことだ。
同蒸溜所は現在、ビジターが敷地内でウイスキーを楽しむためのライセンスを待っている。今のところビジターの息抜きは紅茶とコーヒーに限られているが、9月中旬までにはもう少し強いものが出せるのではないかと期待されている。
この小さな蒸溜所が再び活動している様子を目にして、誠に喜ばしい限りだ。グラスを空けながら、私は何となく自分の仕事が今やっと完了したような思いでいる。しかしスチュアートにとっては、ある意味、始まったばかり。この復活(リバイバル)は実に本物だという気がする。
テイスティングノート:グレングラッサ リバイバル
色:ゴールド
香り:バニラ、トフィー、ナッツ、フルーツ、そこに柑橘系の香りが漂う。
草を思わせる最初の特徴がいくぶんか消えずに残る。
味わい:柑橘系の香りがオレンジ優勢になり、シェリーフィニッシュの影響で重量感が加味され、
レッドフルーツとハチミツの香りも伴う。
アルコール度:46%
ノンチルフィルター、無着色