バーショーでつながる世界の洋酒文化
第5回を迎えた「東京 インターナショナル バーショー」が、今年も盛況のうちに閉幕した。近年は出展者数も来場者数も増加し、酒類業界の多様化が実感できるダイナミックな現場となっている。来日した海外常連組の出展者に、日本市場の印象を訊ねた。
文:WMJ
カクテル文化振興会が主催する第5回「東京 インターナショナル バーショー」が、2016年5月14日と15日の2日間にわたって東京ドームシティ・プリズムホールで開催された。今年も「ウイスキーエキスポジャパン2016」との共催という形態で、イベント全体のコンセプトは「バーアカデミー」。出展企業は昨年の32社から45社に増加し、来場者の楽しみも多様化の一途をたどっている。
このバーショー(BarShow)は、世界各国で開催されているビッグイベントの日本版である。2012年にアジア初のバーショーとして「東京 インターナショナル バーショー」が開催され、世界的イベント「ウイスキーライヴ」との共催も話題になった。業界関係者や消費者にとっては、世界的に著名なバーテンダーのデモンストレーションや、国内外の貴重なお酒をテイスティングできるまたとないチャンスである。会場を歩けばさまざまな外国語が聞こえてくるのも近年の傾向だ。出展者はもちろん、来客にも外国人客が増えていることを実感できる。
主催者によると、今回の入場者数は2日間で延べ約1万人。昨年の9,100人を上回る過去最高を記録している。世界屈指のバーテンダーやミクソロジストが来日し、ウイスキー業界からも「レディ・オブ・アイラ」の異名を持つクリスティーヌ・ローガン氏を招聘。マスタークラスはすぐに完売となり、320人の参加者がトップクラスの技と知識に触れた。また特設ステージ上では、カクテルのデモンストレーションやウイスキーに関するトークが観客を楽しませた。
ウイスキーファンの注目を集めた催しのひとつが、チャリティーオークションである。出展者が提供するユニークなボトルへの関心は年々高くなり、競り合うファンの商品知識も増えている。結果発表のステージでは、本坊酒造のボトルを外国人のファンが落札して歓喜するなど、アジアのウイスキー市場の活況を象徴するようなシーンもあった。オークションの売上は、熊本地震および東日本大震災の被災者に寄付されることになる。
英国からの常連出展者に訊く
海外のメーカーやブランドにとっても、日本は極めて重要なマーケットである。特に近年、日本でも注目されている分野が「クラフト」だ。クラフトビールも、クラフトウイスキーも、高い品質と革新性を持った小規模メーカーが次々に誕生している。日本のクラフトメーカーは、海外の成功事例から刺激を受けて多くを学んでいることが多い。ここ10年ほどはそんな小規模蒸溜所のお手本的な存在であったキルホーマンのピーター・ウィルズ氏(セールス&マーケティングマネージャー)が、みずから体験しているクラフトムーブメントについて語ってくれた。
「世界中から新興のウイスキーメーカーがキルホーマンを訪ねてきて、1週間以上もウイスキーづくりを見学していきます。最近は同型のスチルを導入したスウェーデンのメーカーもいました。注目され、真似される立場にあることを私たちは誇りに思っています。クラフトディスティラーには革新性も求められるので、ポートやマデイラのカスクでフル熟成する試みも続けています。このバーショーは4回めですが、日本のウイスキー市場は活況なのでまた近秋にも帰ってきます」
同じくスコットランドからやってきたベンリアックのブランドアンバサダー、スチュワート・ブキャナン氏は2年ぶりの来日となった。
「日本のバーショーは、私のスケジュールのなかでも極めて重要なイベント。新しい商品を試飲し、バーテンダーの話も聞いて、消費者の最新の動向が追える貴重な機会になります。以前より日本のクラフトウイスキーにも注目しており、2年前は秩父蒸溜所を訪ねて刺激を受けました。同地で感じたウイスキーづくりへの情熱こそが、良いウイスキーをつくる原動力だと思っています」
また今年のバーショーでは、ボタニカルなフレーバーにも焦点が当てられた。イングランドで独自のスピリッツを生産するチェイスの輸出セールスディレクター、サイモン・デービズ氏が日本市場の変化を指摘した。
「今回で4回めの参加ですが、自前の農場でジャガイモやリンゴを栽培している私たちのジンやウォッカに興味を示す人が増えてきたことを実感しています。消費者の知識も豊かになり、とりわけフレーバー全般への関心が高まっている印象がありますね」
日本の酒類業界の元気は、東京 インターナショナル バーショーの現場を見ればよくわかる。新しいプレイヤーが増えてますます多様化する洋酒の楽しみを、来年もまたこの会場で実感したい。