アベラワーが4アイテムで日本再登場

October 24, 2016

絶妙なバランスと複雑さで世界のウイスキーファンを魅了するスペイサイドの人気ブランドが、日本市場に公式な再登場を果たした。シングルモルトウイスキー「アベラワー」の4アイテムを、シーバスブラザーズのインターナショナルブランドアンバサダー、ダレン・ホージー氏と共に味わう。

文:WMJ

 

スペイサイドの心臓部にあるアベラワー蒸溜所。創業者のジェームズ・フレミングが身上とした「包み隠さないフレーバー」の伝統を今も守っている。

スコットランドの蒸溜所の約半数を擁するスペイサイド地方は、豊富な天然水や大麦などの原料素材にも恵まれたモルトウイスキーの王国である。その中心部で1879年よりモルトウイスキーをつくり続けているアベラワー蒸溜所の魅力は、卓越したバランスと複雑さにある。イギリス本国とヨーロッパで高い人気を誇るシングルモルトが、8年半ぶりに日本市場で再登場するのはウイスキーファンにとって朗報だ。公式ボトルは4アイテム。贅沢なバランスを生み出す「ダブル・カスク マチュアード」の12年、16年、18年、それにファーストフィルのオロロソシェリーカスクだけで熟成した濃厚な「アブーナ」という顔ぶれである。

シーバスブラザーズのインターナショナルブランドアンバサダーを務めるダレン・ホージー氏は、このアベラワーの魅力を誰よりも知る人物。グラスゴーで生まれ、スペイサイドで育った生粋のスコットランド人だ。2003年よりたびたび来日し、日本のウイスキーファンの経験値に敬意を抱いている。

スペイサイドの中心地でつくられるアベラワーが、華やかな甘味やフローラルなスペイサイドらしい酒質をしっかりと備えているのは言うまでもない。特徴は蒸溜所の細部に現れる。ポットスチルは玉ねぎ型で、ネックの長さは「中くらい」だ。ザ・グレンリベットほど長くないが、ストラスアイラほど短くもない。この中庸な設計が、後の熟成において極めて重要なポイントになるのだとホージー氏は語る。

「アベラワーのスピリッツは、軽快でパイナップルのようなフルーツ香があるザ・グレンリベットと、力強く重みがあるストラスアイラのちょうど中間に位置付けられます。しっかりとしたボディに、軽やかでくっきりとしたバランスを兼ね添えているので、シェリーカスクとバーボンカスクの両方で理想的な熟成ができるのです」

酒質が軽いと、シェリーカスクのパワーに負けてしまうリスクをホージー氏は指摘する。シェリーカスクとバーボンカスクで別途に熟成した原酒をマリッジさせ、絶妙な複雑さを構築するのがアベラワーの「ダブル・カスク マチュアード」だ。2種類のカスクの恩恵を最大限に引き出して、贅沢に同居させられるのがアベラワーのアドバンテージなのである。

 

熟成年ごとの見事な完成度

 

玉ねぎ型のポットスチルで、ネックの長さはミディアム。この設計が熟成後の極めて複雑なフレーバー構成にも寄与する。

ホージー氏の手引で、楽しいテイスティングが始まる。飾り気のない透明なボトルは、どれもヨーロピアンオーク由来の美しい琥珀色を映している。アベラワー蒸溜所が創業した19世紀はまだボトリングをおこなっておらず、アベラワー村の人々がウイスキーを薬瓶に詰めて持ち帰ったものだという。ちょっと風変わりなボトルの形状は、そんな当時の古い薬瓶を再現しているのだとホージー氏が教えてくれた。

「この開封の瞬間がいつもたまらない」と、コルク栓のキャップを外すホージー氏。まずは「アベラワー12年 ダブル・カスク マチュアード」がグラスに注がれる。ストレートでしばらく香りと味を確かめ、少しだけ水を入れる。隠れていたアロマが引き出されてきた。

すぐに感じるのは、赤いベリーやリンゴのようなシェリーカスク由来のフルーツ香だ。そしてバーボンカスク由来のクリーミーな甘さも突き抜けてくる。水を入れたときからシナモンやジンジャーなどのスパイスが花開き、口に含むとダークチョコレートの感触やバニラのような甘味に包まれる。シェリーカスクとバーボンカスクの特長が、まさに抜群のバランスで同居している。

次のボトルは「アベラワー16年 ダブル・カスク マチュアード」。香りはいっそうクリーミーな印象が強く、口に含むと12年よりも少しだけ甘味が増し、レーズン、チョコレートケーキ、フルーツケーキなどを思わせるリッチなアロマがある。シルクのような舌触りが印象的で、スパイスの感触も濃厚だ。シェリーカスクの印象がほんの少し増している。

「熟成年数が多くなるに従って、フレーバーが強まっていくと想像される方がいらっしゃるかもしえれません。でも実際には、何かの要素が強まるというより、複雑さが増して口当たりがスムーズになるのです」

3本目の「アベラワー18年 ダブル・カスク マチュアード」もグラスに入った。うっとりするほど穏やかな香り。ゆっくりと口に含んでもシャープな風味は皆無だ。3つのボトルでいちばんまろやかだが、風味は非常に複雑だ。スペイン産オレンジのような、ほんのかすかな苦味の存在をホージー氏は指摘する。これこそがクラシックなシェリーのアロマなのだ。

しばらく空気に触れさせていると、どのグラスも香りや風味に変化が現れる。18年のグラスは、洋ナシやアンズの風味が強まったようだ。口に含むと、ハチミツのような優しい甘味がそっと舌を包み込む。

「熟成年が長いほどフレーバーは複雑になります。そんなウイスキーほど、細部が花開くのを待ってあげましょう。香りもどんどん強まっています。本当にメローで素晴らしいウイスキーですね」

 

パワフルかつデリケートなシェリーカスクの深み

 

アジア市場の動向に詳しいダレン・ホージー氏。アベラワーの魅力は「比類のないバランス」と語った。

残るボトルはひとつ、「アベラワー アブーナ」だ。他のボトルと並べても、深くダークな琥珀色が際立っている。バーボンカスクは使わず、シェリーカスクもファーストフィルのみを使用した特別なウイスキーだ。カスクストレングスなのでバッチごとに度数は異なるが、このボトルは61.2%である。

グラスからは、甘くてドライなオロロソシェリー樽の香りが力強く迫ってくる。クラシックなシェリーカスクに特有なレーズンのアロマ。口に含むと、アルコール度数を感じさせないやわらかさに驚く。甘く、ドライで、ダークチョコレートを思わせるリッチなテクスチャー。口のなかでずっと風味が留まり、その風味をいつまでも噛み締めていたい気分になる。

「驚くべきウイスキーです。ほんの少し加水すると、素晴らしいアロマが解放されて、力強さのなかにいっそう複雑さが表現されてくるのがわかるでしょう。口当たりがよいので、正体を知らなければカスクストレングスだと気づかれないほどです」

アブーナとは、ゲール語で「オリジナル」の意味。このボトルは、1879年にアベラワー蒸溜所を創業したジェームズ・フレミングへのオマージュなのだとホージー氏は語る。樽出しのカスクストレングスで、チルフィルターもおこなわない。グラスをかざすと、ほんの少しだけ霞んだように見えるのはそのためだ。クラシックなカスクの熟成から、何も引かない完全にナチュラルなウイスキーである。

「ジェームズ・フレミングは、フレーバーを包み隠さずに表現することを身上にしていました。簡素なボトルを見てもおわかりいただけるように、派手なデザインやマーケティングをしないのも創業当時からの伝統です。なぜなら、ひとたびグラスでアベラワーを飲んだ人は、必ずまたこのウイスキーを求めることになるから。経験豊かな日本のウイスキーファンの皆さんも、アベラワーを愛してくださるものと確信しています」

スペイサイドの底力が実感できる4つのボトルを、秋の夜長にじっくりと楽しんでみたい。
 

アベラワー12年
ダブル・カスク マチュアード

希望小売価格 5,500円(税別)

容量 700ml

度数 40度

 

アベラワー16年
ダブル・カスク マチュアード

希望小売価格 8,250円(税別)

容量 700ml

度数 40度

 

アベラワー18年
ダブル・カスク マチュアード

希望小売価格 12,200円(税別)

容量 700ml

度数 43度

 

アベラワー アブーナ

希望小売価格 10,000円(税別)

容量 700ml

度数 約60度

※カスクストレングスにつき、バッチナンバー毎に度数が異なります。

 

 

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