2013年より南アフリカのディステルが運営するアイラ島のブナハーブン蒸溜所。大掛かりな設備投資により、ウイスキーの生産力とビジター体験を強化している。

文:ガヴィン・スミス

 

昨年初頭、ディステルはアイラ島にあるブナハーブン蒸溜所の設備を1,050万英ポンドで増強すると発表した。ディステルでモルトウイスキーのブランドディレクターを務めるデレク・スコットは、以前よりブナハーブンへの投資がこれまで少なすぎるという発言をしていたので、満を持しての本格的な改修である。

生産設備のオートメーション化が進んでいる。伝統的な容量12.5トンのステンレス製マッシュタン(天蓋は銅製)で、12時間をかけた糖化がおこなわれる。

蒸溜所長のアンドリュー・ブラウンは、次のように説明している。

「蒸溜所はほとんど140歳を迎えるので、設備の完全なアップデートと現代化を進めることに決めました。2017年に蒸溜所のお色直しを発表したとき、貯蔵庫の屋根は修理が必要で、基本的なインフラに投資が必要な状態でした。でも昨年から始まっている設備の刷新は、ビジターセンターを改修して全体的なビジター体験を向上させるためのものです。毎年、何千人というウイスキーファンの皆さんがお越しになりますから」

今回の設備投資は、取りも直さず蒸溜所の操業に関する設備を将来に向けて長期的に改善するのが狙いなのだとアンドリュー・ブラウン蒸溜所長は続ける。

「ビジターの皆さんにとって、以前よりも見学しやすい蒸溜所にすることが一貫した目的でした。これを成し遂げるには、蒸溜所内の導線を整理してスタッフもゲストもリラックスしながら、ブナハーブンらしいライフスタイルを楽しめるようにする必要がありました」

 

21世紀のウイスキーメーカーとして着実に進化

 

蒸溜所の改修が始まって1年が経つ。アンドリュー・ブラウンはその進捗状況についても教えてくれた。

ウォッシュスチルの高さはアイラ島随一。ウォッシュスチルとスピリッツスチルが2基ずつあり、年間生産量は純アルコール換算で250万Lだ。

「海岸沿いにあった何軒かの貯蔵庫が移動によりなくなりました。その場所に蒸溜所の新しいビジターセンターを建設中です。このスペースにはカフェやショッピングエリアも併設され、入り江とアイラ海峡の素晴らしい眺めが堪能できますよ」

昨年始まったリノベーション計画には、蒸溜所の近所にある6軒のコテージを再活性化するアイデアも含まれているとアンドリュー・ブラウンは明かす。

「このコテージはビジター用施設の延長として、休暇の宿泊先に使っていただく計画です。新規に建設された施設のすべてが完成した訳ではありませんが、それでも今シーズンはビジターの皆さんに素晴らしい経験をしていただく準備ができています。このリノベーションによる生産プロセスや蒸溜所ツアーへの影響は、ごく最小限に抑えられていますので」

またブランドディレクターのデレク・スコットは次のように語っている。

「ブナハーブンでは、ウイスキーづくりが環境に与える悪影響を本気で減らそうと取り組んでいます。ウイスキー業界は以前より環境への配慮が進んでおり、99%以上の素材をリサイクルするという目標を達成してきました。努力を少しずつ積み上げることで、大きな結果を導き出せるという証拠ですね」
(つづく)