世界各地で開催されるウイスキーフェスティバルが、さまざまな進化を遂げている。最新のトレンドを3回シリーズでご紹介。

文:ミリー・ミリケン
写真:リンゼイ・ロバートソン

 

スピリット・オブ・スペイサイド・フェスティバルの5日間を終え、私はクライゲラヒホテルの玄関先で空港へ向かう車を待っている。ベスト・ニュー・イベントの審査員として取材に臨み、スコッチ業界でも特に重要なウイスキーイベントを存分に楽しんだ。

スピリット・オブ・スペイサイド・フェスティバルは、スコッチウイスキーの本場で開催される5日間のイベント。世界中の関係者とファンが集う恒例の祝祭だ。©︎Lindsay Robertson

イベント期間中は忙しい。注目の生産拠点であるグレンリベット、トーモア、ダンファイルの各蒸溜所を見学し、目隠しをしてウイスキーを味わうダンカンテイラーの企画「ドラムズ・イン・ザ・ダーク」に参加した。スペイバーン蒸溜所の敷地内では、ブリトニー・スピアーズの「ベイビー・ワン・モア・タイム」のアコースティックバージョンに合わせて踊る一幕もあった。

フェスティバルらしく、ウイスキーへの愛を分かちあえる新しい友人たちもできた。メールやメッセージがInstagramやWhatsAppにたくさん届いている。調子に乗って、ハイランド牛に全粒粉ビスケットを1箱全部食べさせてしまったエピソードには大笑いした。

今年で25年目を迎えたこのイベントで、スペイサイドのウイスキー業界はその実力を世界中の来場者に示してくれた。このスコットランドの片田舎が、ウイスキーファンにとっていかに特別な場所であるかをあらためて証明したのだ。

この1週間でフェスティバルに関連する約700件の小イベントが開催され、7,500枚以上のチケットが売れた。噂によると、今年のフェスティバルだけで425,000ポンド(約8700万円)以上という記録的な売り上げを達成しているようだ。
 

フェスティバル訪問はファンの年中行事

 
ウイスキー愛好家のサークルでは「フェスに行くの?」という質問が挨拶がわりに交わされている。もちろん5月はアイラフェスティバル(通称フェイス)だ。私の仲間内でも「今年はフェイスに行くのか」という質問が飛び交う。

このようなウイスキーフェスティバルは、ウイスキー好きの人なら誰でも楽しめるビッグイベントとしてカレンダーに刻まれるようになっている。

スピリット・オブ・スペイサイド・フェスティバルは、テイスティング以外のお楽しみもたくさんある。ファン同士の新しい繋がりが、ウイスキーの世界を広げていく。©︎Lindsay Robertson

ノルウェーのトロムソで開催されるアークティック・ウイスキーフェスティバル。米国ではニューオーリンズ・バーボン・フェスティバル。ドイツではウイスキーフェスト・ニュルンベルク。南半球ならメルボルンで開催されるオーストラリアン・ウイスキーショーや、モザンビーク・ワイン&ウイスキーフェスティバルなどもある。ウイスキーの世界にどっぷり浸かる機会は、もう数えきれないほどたくさんあるのだ。

既存のフェスティバルが入場者記録を更新する一方で、新しいフェスティバルもこぞって台頭してきている。

ベトナムでは2022年8月に国内初となるウイスキーフェスティバルが開催。ケンタッキー州では今年の10月に「バーボン・アンド・ビロンギング」が初開催となる。そしてウェールズ初のウイスキーフェスティバルが、今年11月にランディドノで開催される。

カナディアンウイスキーの専門家として数々の著作がある作家のダヴァン・ドケルゴモーは、カナダにおける新しいフェスティバルの隆盛について次のように説明している。

「コロナ禍の試練が、フェスティバルのプロモーターに新しい流れをもたらしました。オンラインイベントをZoomで開催してフォロワーを増やした主催者たちが、スケールアップした商業的なフェスティバルを立ち上げています」

ウイスキークラブや小売業者にも、似たような動きが広がっているとドケルゴモーは言う。

「このようなショー同士が、人気を競い合うような状況になってフェスティバルが定着しつつあります」
(つづく)