ハイランドパークを味わう【前半/全2回】
北の巨人と称えられるハイランドパークは、ヴァイキングの魂を体現したシングルモルトウイスキー。オークニー諸島の風土に育まれた現行商品を味わう2回シリーズ。
文:WMJ
スコットランド本土から、フェリーに乗ってさらに北へ。北緯59度付近に点在するオークニー諸島は、もうロンドンよりもスカンジナビアに近い。そもそもオークニーという名も「アザラシの島」を意味する古代ノルウェー語だ。住民もみずからをオーカディアンと呼び、スコットランド本土とは異なるアイデンティティを誇っている。
ノルウェーの伯爵がオークニー諸島を支配したのは874~1468年。クリスチャン1世が領土を放棄してスコットランド領となるまで、500年以上にわたって培ったヴァイキングの気風は消え去ることなく現代に受け継がれている。
こんな最果ての地に、スコッチモルトウイスキーを代表するハイランドパーク蒸溜所がある。カークウォールの市街地よりも高所にあるため、「ハイパーク」 という地名が転じて蒸溜所名となった。
1798年にこの蒸溜所を設立したマグナス・ユンソンは、肉屋と聖職者を兼業しながら、政府に隠れてスピリッツを密造するという特異な人物だった。勇敢で、勤勉で、独立心が旺盛なオークニー人を象徴する存在でもある。
ヴァイキング的な独立独歩の精神は、ウイスキーづくりにも色濃く現れている。ハイランドパークのウイスキーは、個性的でありながらとことんバランスを追求している。ユニークな特徴を支えるのは5つの要因だ。1つめはヒースが堆積したオークニー諸島特有のピート。2つめは伝統的なフロアモルティング。3つめはフルタイムのシェリー樽熟成。4つめは長期間のマリイング。5つめは、オークニーの特殊な風土だ。
伝統のこだわりが生み出す究極のバランス
ハイランドパーク蒸溜所で使用される大麦モルトの20%は、自前のフロアモルティングによるものだ。残りはイングランド北部のシンプソンズ社から取り寄せている。マッシングの前に、自前のピーテッドモルトとシンプソンズ社のノンピーテッドモルトが混合される。
オークニーのピートは年代によって3層に分かれており、8千年~2万年前の泥炭をスタッフ4人で採掘する。現地産の大麦をこのピートの煙で燻し、伝統の技法で製麦することで、壮大な時間の魔法をまとったハイランドパーク特有の香りが得られるのだ。
熟成は大半がシェリー樽である。バーボン樽よりも10倍ほど高価だが、ハイランドパークの風味には欠かせない要素だ。この方針を可能にしているのは、スペインにボデガを保有する親会社エドリントンの調達力である。シェリー樽の木材はスパニッシュオークが中心だが、アメリカンオークも使用されている。製材までの乾燥期間(4年間)や、オロロソシェリーでのシーズニング(2年間)を経た最高品質の樽材が豊かな香りを授ける。
蒸溜所内には、23軒の貯蔵庫がある。ダンネージ式とラック式の併用で、現在のストックは約43,000本。通常はニューメイクを加水せずに樽詰めする。天使の分け前は1~2%(一般的なスコッチウイスキーは3~4%)で、熟成がゆっくり進むのもオークニー特有の現象だ。
スコッチを代表するシングルモルト「ハイランドパーク」は、2017年に大胆なイメージチェンジを敢行した。ヴァイキングをテーマとした新しいパッケージは、ユニークなウイスキーの本質を魅力たっぷりに伝えている。
(つづく)
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