アイコンズ・オブ・ウイスキー 2020【第1回/全3回】
今年で第18回目を迎えた「アイコンズ・オブ・ウイスキー(以下IOW)」は、ウイスキーマガジンの発行元でもある英国パラグラフ・パブリッシング社主催の世界的なコンテスト。「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」が製品としてのウイスキーを対象とするのに対し、IOWは世界のウイスキー業界に著しい貢献を果たした企業、蒸溜所、人物、小売店、バーなどを表彰する。2020年の受賞者を3回に分けてご紹介。
ディスティラー・オブ・ザ・イヤー
アイリッシュ・ディスティラーズ(アイルランド)
経営陣から現場まで、アイリッシュ・ディスティラーズはウイスキーを愛する人々によって支えられている。200年以上にわたってアイリッシュウイスキーの火を灯し続け、妥協のない品質を守り抜いてきたのは情熱の賜物だ。つべこべ言わずに、みずからが信じる道を進む。従業員と顧客を大切にして、原材料にこだわった世界最高のアイリッシュウイスキーをつくる。そんな確固たる信念が伝統を積み上げてきた。現在では毎年40万人以上のビジターが訪れる大人気蒸溜所として知られている。アイリッシュ・ディスティラーズは近年さまざまな改革を断行して、アイリッシュウイスキーの世界的なルネッサンスを最前線で主導してきた。会社の規模が大きいからといって、胡座をかいている訳ではない。アイルランドで新しい世代の才能を育てるプログラムに参加し、ウイスキー業界内で協調の精神を実践していることも評価に値するだろう。
入賞
マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー
ビリー・ウォーカー/グレンアラヒー蒸溜所(スコットランド)
スコッチウイスキー業界でも指折りの著名人で、誰からも称賛を集めるマスターブレンダー。40年にわたってウイスキーづくりの世界で成功を収めてきたビリー・ウォーカーだが、まだまだ引退するつもりはない。2016年に自身が保有していたウイスキーメーカーを売却し、スペイサイドのグレンアラヒー蒸溜所でまったく新しい挑戦を開始。新たにリリースされたグレンアラヒーの商品はすこぶる評判がいい。知名度が比較的低い蒸溜所を手に入れ、名高いグローバルにブランドに育てる才で定評のあるビリー・ウォーカー。またしても同様の条件で魔法のような手腕を発揮し、世界中の弟子たちにも影響を与えている。
入賞
ディスティラリーマネージャー・オブ・ザ・イヤー
スコット・セル/ウエストランド蒸溜所(アメリカ)
オレゴン州立大学で環境科学の学位を修めたスコット・セル。ウエストランド蒸溜所のスチルマンとして働き始めたのは、2012年のことだった。それ以来、ウエストランドは生産規模を拡大して世界的な注目の的に。蒸溜所が成長する過程において、スコット・セルは重要な役割を果たしてきた。2012年よりディスティラリーマネージャー(蒸溜所長)を務め、現在はオペレーション統括ディクレターも兼任。今やウエストランドは、スコットランド以外でもっとも注目を集めるシングルモルトウイスキーの新進メーカーに。人気のウイスキーの生産工程全体を、スコット・セルはしっかりと管轄している。
入賞
クラフトプロデューサー・オブ・ザ・イヤー
ダッズハット
少量しか生産できない「ペンシルベニアライウイスキー」で、ダッズハットが名誉あるアワードを獲得するのは初めてのことではない。注目を集めるのには理由がある。良質なウイスキーをつくるために日夜努力を続けているのはもちろんのこと、地元のライ麦農家と関係を強化することでサステナブルなウイスキーづくりを常に優先しているのだ。ライ麦もその他の原料も、供給者が間違いなくフェアな価格で取引できるように経済的な配慮も徹底しているのがダッズハットのこだわりだ。
入賞
サステナブル・ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー
ジェームズ・セジウィック蒸溜所(南アフリカ)
風光明媚なベインスクルーフ峠の麓にあるジェームズ・セジウィック蒸溜所は、南アフリカで唯一の大規模なウイスキー蒸溜所だ。サステナブルな生産体制を維持し、環境への影響を最小限に留めることは、蒸溜所および親会社のディステルにとって重要な優先事項である。畑から消費者に至るすべての工程で、長期的に健全な環境が保たれてこそ持続可能なウイスキーづくりができる。土、気候、水質、エネルギーなどのあらゆる環境要件が、商品の基礎をなすことを蒸溜所は理解している。ジェームズ・セジウィック蒸溜所のポリシーは、生産工程におけるエネルギー効率を常に向上させていくこと。可能な限り化石燃料に頼らず、再生エネルギーで代用するように努めているのもそのためだ。
入賞
ビジターアトラクション・オブ・ザ・イヤー
バッファロートレース蒸溜所(アメリカ)
ケンタッキー州フランクフォートにある世界的に有名なウイスキー蒸溜所。バッファロートレース蒸溜所では、長い伝統を持つ生粋のアメリカンウイスキーが生産されている。そして何より、記憶に残る素晴らしいビジター向けのアトラクションでも他の追随を許さない。蒸溜所自体も生産拡大に向けて常に成長しているバッファロートレースだが、その全貌が見学できるビジター用施設も同時に進化を遂げている最中だ。年間20万人以上のビジターを迎え入れるバッファロートレース蒸溜所は、年令や性別に関わらず、どんな訪問者でも楽しめるツアーとビジター体験を用意。さまざまな世代にまたがった家族連れの訪問も歓迎している。
入賞
ビジターアトラクションマネージャー・オブ・ザ・イヤー
リサ・ジェムソン/ティーリング蒸溜所(アイルランド)
ダブリンの中心地にあるティーリング蒸溜所は、ダブリン市内で125年以上ぶりにオープンしたウイスキー蒸溜所。リサ・ジェムソンは、ここで人気のビジター体験を管轄している。この蒸溜所がダブリンを訪ねるウイスキーファンにとって外すことのできない目的地となり、ダブリンとアイリッシュウイスキーの関係に興味を抱くすべての人を惹きつけているのはリサの功績だ。各種ツアーはもとより、リサのチームはこの首都を行き交う人々のハブとなるようなアトラクションを創り上げた。ダブリンの街を眺めながら、手作りのカクテルを楽しんでもいい。フェニックス・カフェでしばしくつろいで、地元産の素晴らしい食材から作られた料理やドリンクを楽しんでもいいだろう。
入賞
アメリカンウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
タリータ・アルベス/ブラウン・フォーマン(オーストラリア)
今年は、ブラウン・フォーマンが創設150年を迎えるアニバーサリーイヤー。傘下にあるウイスキーブランドは、どれも世界中で引き続き大きな成功を収めている。ホスピタリティー業界でウェイトレスとしてキャリアを始めたタリータ・アルベスは、パブやカクテルバーで働くうちに自分の適性をはっきりと理解するようになり、やがてウイスキーへの特別な愛着も感じるようになった。オーストラリアにおけるブラウン・フォーマンのブランドアンバサダー。そんな天職を得たタリータ・アルベスは、ウイスキー業界で充実した活躍を見せている。
入賞
アイリッシュウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
アブリル・ホーガン/ディングル蒸溜所(アイルランド)
アイルランド南西部にあるディングルの町。そのまた外れにあるミルタウンで、製材所を改装して2015年に創設されたのがディングル蒸溜所だ。職人技に頼った手づくりが注目を浴び、成功を収めてきたディングルだが、その過程で欠かせない役割を担ってきたのがアブリル・ホーガンだ。独立系の小規模蒸溜所ながら、そのウイスキーへ愛情は本物。競争の激しい市場で、並み居る強豪たちと渡り合っている。2017年には、独立系の蒸溜所として数十年ぶりにシングルポットスチルウイスキーを発売。増大する需要に応えるべく生産拡大中の蒸溜所で、アブリル・ホーガンは顧客へのアピールにいっそう力を入れている。
入賞
ワールドウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
アンディー・ワッツ/ディステル(南アフリカ)
アンディー・ワッツは、30年以上にわたってウイスキーづくりに関わってきた。第二の故郷となった南アフリカへの愛と、そこでつくるウイスキーの魅力を伝えるためにずっと世界を飛び回っている。アンディー・ワッツは、ディステルのウイスキー部門を率いるリーダーだ。ジェームズ・セジウィック蒸溜所でつくる「スリーシップス・ウイスキー」と「ベインズ・ケープマウンテン・ウイスキー」の戦略的な方針を決定している。チームとともに、気候変動への革新的な対応をするべく力を入れているアンディー。地元産の原料を使用しながら、特別な品質のウイスキーをつくる努力を続けている。
入賞
スコッチウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
ジョージー・ベル/バカルディ(グローバル)
ジョージー・ベルは、すでに人も羨むような名声をウイスキー業界で手に入れている。エディンバラ大学で学びながら、カクテルを得意とするバーテンダーとしてキャリアをスタート。バーシーンにすっかり魅了されると、とりわけウイスキーへの関心が高まるようになった。2012年、ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティのソサエティマネージャーとブランドマネージャーに就任。2014年からはディアジオで高級モルトウイスキーのアンバサダーを務めた。2016にはバカルディでグローバルモルトウイスキーアンバサダーに就任し、それ以来クライゲラキ、アバフェルディ、オルトモア、ロイヤルブラックラなどの幅広いシングルモルトウイスキーを世界の市場に紹介している。
入賞
地区別の候補者も含めたアイコンズ・オブ・ウイスキーの全容はこちらから。