開催直前のケンタッキー・バーボン・フェスティバルについて、ランディ・プラッシー会長にインタビュー。世界的なバーボン人気は、留まるところを知らない。

文:マギー・キンバール

 

ケンタッキー・バーボン・フェスティバルは、数年前に大規模な方針変更を決行して新境地を切り開いた。バーボンのお祭りでありながら、このフェスティバルでは何十年にもわたってバーボンを味わうことができなかった。公共空間での飲酒に厳しい法律があり、子供を含む地元の市民たちに開かれたイベントでもあったからだ。

それでも数年前に新しい経営陣がイベントを引き継いで、バーボン愛好家にフォーカスしたフェスティバルに変貌した。地元の人たちが気軽に参加できなくなったことを惜しむ声もある。だがウイスキーファンにとって、魅力のあるイベントになったのは間違いない。

地元民対象だった過去のスタイルを改め、バーボンファンのニーズを重視する開催形態になったケンタッキー・バーボン・フェスティバル(メイン写真も)。開催される9月は、ウイスキー観光のハイシーズンになる。

ケンタッキー・バーボン・フェスティバルのランディ・プラッシー会長は、これからもイベントの規模を拡大していくと明言している。今年のフェスティバルでも、いくつかの会場を再編成する予定だ。

まずフェスティバル会場に隣接する5番街は閉鎖され、フェスティバル出店者のフードトラックの拠点となる。また2023年にフードトラックが出店していたセントジョセフ教会の駐車場は、蒸溜所とは直接関係のないスタンドやアクティビティの出店場所となる。

プラッシー会長によると、今年からチケット保持者は会場に何度でも無制限に入場できるのだといと。

「午後からイベントに出かける人で、蒸溜所ツアーに行く前に何か食べたい人もいるでしょう。そんな場合でも、会場で食事が簡単にできるから便利ですよ」

イベント全体のスペースが広くなったことで、出店者は駐車場エリアに移動する。大型テントでは終日プログラムが開催される予定だ。今年は新たに高架式のシガーラウンジも設置され、ダブルデッキ構造の最上階がラウンジになる。プラッシー会長によると、ラウンジには3m四方に区切られた6人収容のセミプライベートルームが設けられるという。

「シガーラウンジは、いつかちゃんとしたものを用意したいと考えてきました。バーボンと葉巻は、明らかに親和性の高いカルチャーですから。素敵な革張りの椅子に座って、じっくり1時間くらい葉巻を楽しむのもいいでしょう」
 

観客のニーズと蒸溜所の工夫で有機的に進化

 
フェスティバルが歩道を埋め尽くした後は、各蒸溜所が夕方から多くのイベントを提供する。このようなイベントの流れは、まだ始まったばかりだ。

さらに今年は、酒販店のエバーグリーンリカーズと新たに提携することになった。ケンタッキー・バーボン・フェスティバルの規則と州の酒造免許制度によって、会場でボトルを販売できない銘柄もある。これは新しいイベントの特徴のひとつだ。ブースでボトルを直接販売できない銘柄は、エバーグリーンリカーズと提携し、別の場所に出店されるボトルショップを通じて会場販売ができるようになった。

さまざまな趣向を凝らして来客にブランドを印象付けるバーボンの生産者たち。ケンタッキー・バーボン・フェスティバルはニーズの高まりに合わせて出店者ごとの洗練度も増している。

プラッシー会長によれば、ジムビームやヘブンヒルなどの主要な蒸溜所は、昨年のフェスティバルで記録的な量のボトルを売り上げたという。イベントの記念ボトルに対する需要は衰える気配がなく、2024年以降もフェスティバルで限定ボトルを販売するメーカーはますます増えていくことだろう。

今年のフェスティバルでは、蒸溜所以外の事業者も50店以上が出店し、仮設トイレの設置数も増える予定だ。フードトラックのエリアには、イベントのチケットを持たない一般客も入場できる。主催者としての工夫について、プラッシー会長は説明する。

「レイアウト、人の導線、テナント、参加者など、すべてのクオリティが年を追うごとに良くなっていると感じています。オフシーズンの間に、各蒸溜所とはさまざまなチャレンジを検討してきました。観客が人気ブースを選ぶ『ピープルズ・チョイス・アワード』などのお楽しみも新たに設けました」

普段は小売店で繰り広げられる蒸溜所同士の切磋琢磨が、この会場でも見られるのもフェスティバルらしい楽しさだ。このようなムードが、フェスティバルの魅力をどんどん高めているのだとプラッシー会長は言う。

「今年の会場で売上が好調な蒸溜所があれば、来年は他の蒸溜所が負けじと知恵を絞ってきます。ボトルをたくさん買ってもらうにはどうしたらいいか、フェスティバルの機会にもっと消費者を惹きつける方法はないのか、各社が競い合うことで進化しています」

このように健全な競争心がイベントを盛り上げてくれる状況は、まさにプラッシー会長が思い描いていた理想の形であるともいえる。

「ようやく4年がかりで理想のイベントが出来上がってきました。あとは出店者と観客が、有機的にイベントを育てていってくれることでしょう。私たちはテントと会場を提供するので、メーカーにはブランドを代表して消費者にアピールする最善の方法を考えてほしいと思っています。ユニークなアイデアが訪れた人たちを楽しませるほど、再訪を誓う人も増えるはずですから」