ニッカがシングルモルトの限定品を新発売
ニッカウヰスキーを象徴する2つの蒸溜所から、日本市場と欧州・米国市場に向けてシングルモルトウイスキーの限定商品が発売される。新しい風味の鍵を握るのは、個性的な樽によるフィニッシュの妙だ。
文:WMJ
幅広い世代で、モルトウイスキーへの関心が高まっている。特に蒸溜所ごとの個性を楽しめるシングルモルトウイスキーの人気は留まるところを知らない。ニッカなら、力強く重厚な「シングルモルト余市」と、華やかでおだやかな「シングルモルト宮城峡」。日本を代表する2つのシングルモルトウイスキーに、このたびユニークな個性を加えた限定品が登場する。
ニッカウヰスキーが9月26日から発売するウイスキーは、通常の「余市」や「宮城峡」に特別な樽でフィニッシュ(後熟)を施したもの。少量生産のため、数量限定(各3,500本)での提供となる。フィニッシュに使用しているのは「モスカテル樽」。ポルトガル南部のセトゥーバル地区で栽培された「モスカテル・デ・セトゥーバル種」(英語ではマスカット・オブ・アレキサンドリア種)のぶどうを原料とする酒精強化ワインの樽である。
酒精強化ワインとは、醸造過程でアルコールを添加することによってアルコール度数を高めたワインの総称。代表的なものにはスペインのシェリー、ポルトガルのポートやマデイラ、イタリアのマルサラなどがある。酒精強化ワインの貯蔵を終えた樽でウイスキーを熟成すると、独特のフルーティな甘味を含むさまざまな効果が得られることが知られている。ニッカウヰスキーの佐久間正チーフブレンダーが今回の製法について解説する。
「このたびの新商品は、熟成した原酒を加水せずに大樽でヴァッティングした後、モスカテル樽に移して約1年熟成させています。このフィニッシュによって、両蒸溜所の個性を一層際立たせながらも独特のハーモニーを加えた商品になりました。豊かで複雑な味わいをそのまま楽しんでいただくため、冷却ろ過はおこなっていません」
複雑に変化した風味をテイスティングで体験
フィニッシュ用の樽として、特にモスカテル種の酒精強化ワインを選んだ理由はあるのだろうか。佐久間氏が答える。
「ニッカウヰスキーでは、さまざまな蒸溜酒や酒精強化ワインの樽で原酒を貯蔵して様子を見ています。今回はそのなかでも特に面白いと感じたモスカテルをリリースすることにしました」
佐久間氏の手引で、この特別な新商品のテイスティングが始まる。比較材料として定番品の「シングルモルト余市」と「シングルモルト宮城峡」の他、モスカテルのグラスも用意してくれた。
まずは「シングルモルト宮城峡モスカテルウッドフィニッシュ」を味わってみる。グラスに鼻を入れると、マスカットを思わせるフレッシュな香りとモルトの香ばしさが感じられる。口に含むと「シングルモルト宮城峡」らしい爽やかな甘味に樽香が調和した味わい。ビターな樽の感触とドライフルーツを思わせる余韻が続く。
「通常の宮城峡よりも樽香やオレンジのような香りが強いのが特徴です。モスカテルと飲み比べると、同じマスカットのような香りと甘味が感じられるはず。本来すっきりとした宮城峡に、樽由来の飲みごたえが加わっていますね」
今度はもうひとつの「シングルモルト余市モスカテルウッドフィニッシュ」の番だ。まず感じるのは、モスカテルの影響であるレーズンのような甘い香り。モルトの香ばしさの他に、ピートの煙とウッディな香りもある。口に含むと力強く分厚い「シングルモルト余市」の風味に、蜂蜜を思わせる甘いコクとトロピカルフルーツの果実味が加わっている。ここでもビターな樽の感触は強く、ピートの余韻がいつまでも続く。単なる足し算ではない、複雑に響き合うフレーバーの調和が見事だ。
「同じタイプの樽でフィニッシュしたものですが、宮城峡と余市でそれぞれに異なったハーモニーが生まれているのが面白いところ。これがフィニッシュの醍醐味ですね」
このユニークな限定商品の他に、ニッカウヰスキーは欧州・米国市場に向けて「シングルモルト余市・シングルモルト宮城峡 ラムウッドフィニッシュ」を11月以降に発売する。こちらは厳選したラム樽で約1年間のフィニッシュを施した商品で、ラムフィニッシュならではの完熟フルーツを思わせる甘味が魅力だ。予定数量は、欧州と米国を合わせて各3,500本である。
特別な樽によるフィニッシュで、さらにポテンシャルが引き出されたシングルモルトの「余市」と「宮城峡」。ニッカウヰスキーは、今後もこのような限定商品のリリースに意欲的である。まずは今回の限定品で、ウイスキーのさらに奥深い魅力を体験してみたい。
シングルモルト余市
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シングルモルト宮城峡
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アルコール分:46%
容量:瓶700ml
発売日:2017年9月26日(火)
価格:オープン価格(参考小売価格:税別15,000円)
販売数量:各3,500本
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