2021年から始まった「NIKKA DISCOVERYシリーズ」がついに完結。第3弾は、日本各地で製造した7種類ものグレーンウイスキーをブレンドした特別なウイスキーだ。主席ブレンダーと一緒に味わってみよう。

文:WMJ

 

2024年に創業90周年を迎えるニッカウヰスキーが、そのカウントダウンに向けて発売してきた「NIKKA DISCOVERYシリーズ」。これまでもモルト原料や醗酵工程の違いに注目し、ニッカが保有する多様な原酒やつくり分けの奥深さに焦点を当ててきた。

そしてシリーズの最後を飾る第3弾は、意外なことにグレーンウイスキーだ。しかも個性的なグレーン原酒が7種類も使用されているという。

シリーズを通してユニークなウイスキーの提案に関わった綿貫政志氏(主席ブレンダー)。焼酎の製造拠点でグレーンウイスキーの原酒をつくる試みは、5年前から密かに続けていた。

ニッカのグレーンウイスキーといえば、「カフェグレーン」や「カフェモルト」を連想する人も多いだろう。ニッカがカフェ式連続式蒸溜機を西宮工場に導入した1963年から、今年でちょうど60周年になる。1999年には宮城峡蒸溜所へ移設され、香味豊かなグレーンウイスキーでニッカブランドを支えてきた。

今回の限定商品に使用された7種類のグレーン原酒のうち、カフェ式連続式蒸溜機でつくられたのは4種類(西宮カフェモルト、西宮カフェグレーン、宮城峡カフェモルト、宮城峡カフェグレーン)だという。西宮の原酒は、いずれも酒齢30年以上。1988年に蒸溜された希少な長期熟成原酒である。

ところが残る3種類は、まったく知られていないグレーン原酒だ。蒸溜された場所は、主に本格焼酎を製造しているニッカウヰスキー門司工場とニッカウヰスキーさつま司蒸溜蔵だという。原酒づくりから商品開発までを担当した綿貫政志氏(主席ブレンダー)が経緯を語る。

「カフェ式蒸溜機の導入から60周年ということで、グレーンウイスキーをテーマにしようというアイデアはありました。ちょうど将来の原酒確保に向けて実験中のグレーンウイスキーがあったので、その仕上がりを確認して今回のような形になりました。原酒の幅を広げることで、お客様への新しい価値提供をするのが目的です」
 

ニッカが密かに育てたグレーン原酒を個別にテイスティング

 
綿貫ブレンダーと一緒に、原酒構成をテイスティングで分解してみる。まずはカフェ式連続式蒸溜機でつくられた4原酒の参考となる現行商品の「カフェグレーン」と「カフェモルト」の風味をチェック。「カフェグレーン」の原料はコーンが中心で、「カフェモルト」は大麦モルトだ(連続式蒸溜機で蒸溜されたモルト原料のスピリッツはグレーンウイスキーに分類される)。どちらも滑らかな酒質のなかに、上品な穀物の風味をたたえている。

パッケージは「カフェグレーン」や「カフェモルト」の流れを汲んだモダンなデザイン。ラベルの市松模様は4箇所の生産拠点を象徴する4色に彩られ、多様な原酒がブレンドされていることを彩り豊かなグラデーションで表現している。

ここから登場する原酒は、いずれもニッカウヰスキーの商品に初めて使用されるニューフェイスだ。まず「門司大麦グレーン原酒」は、ニッカウヰスキー門司工場で大麦(未発芽)からつくられた原酒。門司工場は1914年設立の鈴木商店大里酒精製造所を前身とし、現在はアサヒグループで乙類焼酎生産の主力を担っている。

このグレーン原酒は2017年に蒸溜されたもので、アメリカンオークのリチャー樽で約5年間熟成されている。ステンレス製の単式蒸溜器で2回蒸溜(蒸気による間接加熱)しており、発芽大麦を原料とするカフェモルトよりも麦畑のような穀物風味が豊かだ。蒸気による間接加熱の方式を採り、初溜が減圧蒸溜で再溜が常圧蒸溜だ。洗練された味わいで、豊かな大麦の香りと爽やかなキレに驚く。

次の「さつま司大麦グレーン原酒」がつくられたのは、桜島を望む鹿児島県姶良市のさつま司蒸溜蔵。前身の姶伊酒造時代から約90年の歴史があり、黄金千貫を原料にした本格芋焼酎に定評がある。蒸溜器が門司よりも小型であること、また初溜も再溜も常圧蒸溜であることから、同じ原料でも風味がさらに濃厚な仕上がりだ。こちらはもろみに直接水蒸気を吹き込む方法で2018年に蒸溜され、アメリカンオークのリチャー樽で熟成されている。

そして同じさつま司蒸溜蔵の「さつま司コーン・ライ麦原酒」は、コーンとライ麦由来の甘さと爽やかさが特徴。アメリカンオークの新樽で熟成され、バーボンのように爽やかな甘味とコクを備えている。今回の原酒のなかでも、特に際立った個性を発揮する存在なのだと綿貫ブレンダーは語る。

「ブレンダーにとっても、焼酎づくりを専門とする現場の職人さんにとっても、あらゆる意味で初めての試みでした。想像以上の出来栄えに満足しています」
 

多彩な原酒が折り重なるグレーンウイスキーの新境地

 
いよいよ限定商品「ニッカ ザ・グレーン」の味わいを体験してみよう。

香りには爽やかな甘さがあり、マーマレードや清涼飲料水のサイダーを思わせる。ウッディーな樽香に柔らかなバニラ香が溶け合い、甘く香ばしい穀物の印象が複雑に折り重なっている。

焼酎製造で知られているニッカの蒸溜所が、ウイスキーの原酒をつくるのは初めての試みだった。それぞれの原酒は完成度が高く、単式蒸溜らしい個性も際立っている。グレーンウイスキーのイメージが一新される限定商品だ。

口に含むと、シナモンを思わせる穏やかなスパイスとコーン由来の甘味が強い。爽やかでふくらみのあるコクは、おそらくライ麦原酒が由来だろう。ほのかにビタースイートで、後味はすっきりとしている。

度数は48%で、ノンチルフィルター。着色料も使用していないが、新樽の影響から明るい琥珀色に輝いている。地域、原料、蒸溜方式ともに多様なグレーン原酒が、ブレンディングの妙技でひとつになった。出自も香味もすべてが個性的であり、世界でも類を見ないグレーンウイスキーに仕上がっている。

「それぞれのグレーンはシンプルな味わいでも、ブレンドによって複雑さが生まれます。あくまでバランスを重視しながら、なめらかな飲み心地を追求しました。次々に主張する香りや味わいが、どの原酒由来なのか想像しながらグラスを傾けてみてください」

綿貫ブレンダーは、これまでもシングルモルトやブレンデッドを含む多様なウイスキーの原酒構成を処方してきた。その結果、グレーンウイスキーにモルトウイスキーと異なった魅力を見出しているのだという。

「モルトウイスキーは華やかな香りが魅力ですが、グレーンウイスキーにも個性的な甘味と滑らかさがあります。様々な原料由来の香味を得られるのも魅力ですね」

ニッカのモルトウイスキーが北国の余市と宮城峡でつくられているのに対し、新しいグレーンウイスキーの一部は温暖な南国がふるさとだ。この限定ボトルの風味には、日本の風土の多様性を内包したジャパニーズウイスキーの新境地が感じられる。

「まだ出来上がったばかりの原酒は、ブレンダーはもとより、新しいチャレンジを始めた生産現場の人たちにとっても宝物のような存在です。これからもウイスキーの世界観を広げるため、さまざまな原酒を育てていきたいと思っています」

 

ニッカ ザ・グレーン

アルコール分:48%

容量:瓶700ml

発売日:2023年3月28日(火)

価格:12,000円(税別)、13,200円(税込)

 

 

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