超個性派アイリッシュシングルモルトが日本初上陸
文:WMJ
暗い室内に揺れるロウソクの光と影。黒装束に身を包んだ男女が、宴の準備をしている。古いテーブルの上にはしゃれこうべ。隣には秘密めいた六角形のボトルが置かれている。ラベルに描かれているのは、シルクハットをかぶったガイコツの墓守りだ。
日本初登場となる「ザ・セクストン シングルモルト」の発売記念パーティーは、ミステリアスな世界観で来客たちを驚かせた。ブランド名の「セクストン」とは、墓守りのこと。アイルランドでカトリック教会の墓地を管理し、葬儀などの祭事を厳かに執り行う存在だ。ウイスキーボトルは重厚だが、そこにはどこか楽しげな雰囲気も漂っている。
米国で販売されているアイリッシュシングルモルトでは、古参のライバルたちを押しのけて売上総数ナンバーワンの銘柄だという。シングルモルトを謳っているので、単一の蒸溜所で生産されたモルト100%のウイスキーだ。その蒸溜所とは、世界屈指の歴史を誇るブッシュミルズ。北アイルランド最大の生産力を誇り、自然環境にやさしいサステナブルな取り組みにも定評がある。
ブッシュミルズ蒸溜所でマスターブレンダーを務めるアレックス・トーマス氏は、2021年の就任以来さまざまなアプローチでアイリッシュウイスキーの伝統を更新してきた。この「ザ・セクストン シングルモルト」はアイルランド産の大麦モルト100%を3回蒸溜し、オロロソシェリー樽のみで4年間熟成したもの。グラスに注がれた液体は、明るい琥珀色に輝いている。
香りはナッツやドライフルーツに加え、ほのかなスパイスも感じられる。明らかにオロロソシェリー樽熟成の贅沢な影響だ。口に含むと、ハチミツのように甘いモルト風味が舌を包み込む。滑らかな口当たりは、やはりアイリッシュ伝統の3回蒸溜ならではである。ウッディな甘い余韻に、思わずおかわりしたくなる飲みやすさだ。
ミステリアスな魅力がカクテルで映える
口当たりのいい「ザ・セクストン シングルモルト」は、ストレート、ロック、ハイボールと万能なアレンジに対応する。だがバーテンダーやミクソロジストたちが注目するのは、他のウイスキーにはない独特な個性。熟成期間が4年以上と短めながら、オロロソシェリー樽の熟成にこだわることでユニークな境地を切り拓いているからだ。
早速、洗練されたハイボールにアレンジしてくれたのは、BAR Adenium(埼玉県大宮市)の峰岸翔弥氏。ラズベリーの自家製コーディアルやほうじ茶などを加え、ウイスキーのフルーティーな味わいやダークチョコレートのようなコクを引き出した。
またBar RENRi(東京都人形町)の宮之上哲太氏は、クラシックなオールドファッションドにひねりを加えた。ペドロヒメネスシェリー、アールグレイティー、オレンジピールの特製ビターズ、八角などを組み合わせることでワンランク上の香味を昇華させている。
それにしても、何と斬新でスタイリッシュなボトルデザインだろう。ニューヨークのストレンジャー&ストレンジャーは、あっと驚くようなパッケージで世界的に知られているデザイン事務所だ。バーカウンターや自宅のテーブルに置くだけで、圧倒的な存在感を放つことは間違いない。
カトリックの伝統が根強いアイルランドでは、故人へのリスペクトを込めて葬儀を盛大に祝う。かけがえのない人の思い出や宝物をいつまでも守ってくれるのが、誇り高き墓守りたちだ。アイリッシュウイスキーの長い伝統も、このザ・セクストンによってさらに未来へと継承されてゆく。
「ザ・セクストン シングルモルト」は、11月12日から日本国内で発売中。近寄りがたいほどの存在感とは裏腹に、どこまでもスムースで飲みやすい上質なアイリッシュシングルモルトウイスキーだ。そのユニークな世界観に浸りながら、イマジネーションの世界を広げてみたい。
ユニークな香味が魅力の「ザ・セクストン シングルモルト」をはじめ、日本と世界の銘酒が勢ぞろい。アサヒビールが取り扱うウイスキーとブランデーの商品情報はこちらから。