「サウザ」のプレミアムテキーラを味わう
爽やかな香りと芳醇な甘みがあり、さまざまなスタイルで楽しめるテキーラ。名門ブランド「サウザ」でマスターディスティラーを務めるフェルナンド・アヴィラ氏と共に、多彩な銘柄のテイスティングからテキーラの幅広い魅力を紐解く。
文:WMJ
「テキーラはショットで飲むだけのお酒だと思っていませんか? 今日はぜひそんな誤解を解いて、高品質なスピリッツとしてのテキーラを体験してください」
そう語るのは、ビームサントリーメキシコでマスターディスティラーを務めるフェルナンド・アヴィラ氏だ。2015年よりマスターディスティラー、シニアテイスター、製造開発マネージャーとして「サウザ」の全ラインナップを管轄するエキスパートである。アヴィラ氏の指導のもと、ビームサントリーはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2015で「テキーラ プロデューサー オブ ザイヤー」に輝いている。
サウザの創業は1873年に遡る。創業者のドン・セノビオ・サウザは、歴史上初めてラベルに「テキーラ」の名を記載し、米国に輸出を開始した先駆者。そして息子のドン・エラディオ・サウザが、樽売りから瓶詰め販売に転換してテキーラをメキシコの国民的なドリンクにした。さらに3代目のドン・フランチェスコ・ハビエル・サウザは、メキシコ政府に働きかけて1974年に原産地呼称を導入。サウザ家は、近代のテキーラ史を先導してきた一族なのである。
希少な原料から複雑な工程で生産
テキーラの製造法をおさらいしてみよう。原料はアガベ・アスール・テキラーナという竜舌蘭の一種で、英語名は「ブルーアガベ」。海抜600~1,800mの高地で、年間250日以上の晴天があり、年間平均気温が20度以上という栽培条件を必要とする植物だ。収穫まで約7年の歳月がかかることを考えても、極めて希少な原料であることが想像できるだろう。ブルーアガベが栽培される竜舌蘭の景観と古代テキーラ産業施設群は、2006年にユネスコ世界遺産に登録されている。
葉を切り取られたブルーアガベの株は「ピニャ」と呼ばれ、フルーツのような甘味がある。しかし糖分の組成が複雑なため、アルコール発酵の前に加熱が必要だ。一般的なテキーラ蒸溜所ではピニャをそのまま加熱するが、サウザは加熱前にまずピニャを切り刻んでピニャジュースを抽出する。この工程が、サウザならではのフレッシュでスムースな味わいを生み出すのだとアヴィラ氏は説明する。サトウキビなど他の糖分を加えたベーシックな製品はミクストテキーラとも呼ばれ、ボトルには単にテキーラと表示される。しかしこれが100%アガベテキーラになると、メキシコ国内での瓶詰めが義務付けられるなど、品質保持のための規制が厳しくなる。
樽熟成によっても種別が異なってくる。熟成しないクリアなタイプは「シルバー(ブランコ)」。これが2カ月の樽熟成を経て「レポサド」となる。「ゴールド」はブランコにレポサドをブレンドするか、カラメルで着色したもの。1年熟成すると「アネホ」と呼ばれ、3年以上の熟成で「エクストラアネホ」になる。
4銘柄のテイスティングで多彩な魅力を体験
テーブルの上には、アヴィラ氏が用意してくれた4種類のテキーラがある。まずはミクストテキーラである定番品「テキーラ サウザ シルバー」から味わってみよう。テイスティンググラスを持ち上げると、草花のように爽やかな香りが漂ってくる。
「最初に感じるのがアガベの香りです。まずは唇と舌先だけ濡らしてみてください。アルコールの熱を感じずに、フルーティな風味が味わえるはずです。2口目は、舌全体でテキーラを味わってみましょう。軽い甘みと白コショウのような感触がありますね」
キリリとした余韻には、軽やかな温かみがある。この爽快感がテキーラの魅力だ。
次のグラスは、ブルーアガベを100%使用した「テキーラ サウザ ブルー」。並べて比較すると、「テキーラ サウザ シルバー」との香りの違いは明らかだ。
「シルバーよりも、ハーブや花のような香りが強まっていますね。これが100%アガベの特徴です。風味はやわらかですが、柑橘っぽい感触が明瞭なので、柑橘果汁との相性は抜群。ライムジュースのマルガリータでも、グレープフルーツのパロマでも、オレンジジュースのテキーラサンライズでも、より風味豊かに作れるのが100%ブルーアガベの魅力なのです」
3つめのグラスは「サウザ スリージェネレーション プラタ」。名門サウザ家が誇るプレミアムテキーラだ。100%オーガニックアガベを使用し、米国の厳しい品質基準(USDA)をクリアしている。樽熟成はおこなっていないが、風味を磨き上げたような洗練を感じる味わいだ。
「3回蒸溜で冴えが加わった超プレミアムなテキーラです。香りは複雑で、しっかりとしたボディと風味があります。何も混ぜずにじっくり楽しみたいテキーラですね」
そして最後に味わうのは、サウザで最多の受賞歴を誇る「サウザ オルトーニス ブラックバレル」(数量限定発売)だ。1年間樽熟成させたアネホ原酒を、強めのチャーで焦がしたアメリカンオークの新樽で熟成。その後さらにトーストした新樽や古樽に移し替えて追加熟成し、ウイスキーにも似た複雑な風味が備わるのだという。「非常にウッディで、バニラやチョコレートのような甘い香りが漂っています。口に含むと、まさにウイスキーのような深み。このクリーミーさは、樽に施したトーストの効果なのです」
芳醇な樽香に包まれながら、紛うことなきアガベ100%の爽やかなフルーツ風味がしみじみと広がる。飲み終えた後、いつまでも続く余韻が圧巻だ。ウイスキーファンなら、一度は試していただきたい傑作である。
「ストレートでも、カクテルでも、さまざまな楽しみ方ができるのがテキーラの魅力。お気に入りの1本を見つけて、心ゆくまで楽しんでください」
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