Whisky Live Taipei パネラーインタビュー その2

October 14, 2012

盛り上がる台湾市場に潜入!ウイスキーライヴTaipeiに出席したパネラー陣への突撃取材第2弾。
前回に引き続きライヴで忙しい最中、特別に時間を割いていただき、彼らから見たウイスキー、マーケット、台湾、そして日本について話を伺った。

ジェリー・トッシュ Gerry Tosh (ハイランドパーク蒸溜所)

ハイランドパーク蒸溜所のGerry氏には先日、東京で行われた「THOR」の発表会にてお会いしたばかりだったが、内容の濃い発表会の場では時間が足りず、訊く事の出来なかった質問をぶつけてみた。

WMJ: 先日は東京でのハイランドパークの発表会でお会いしましたね。そのときインタビューできませんでしたので、場所を改めてここ台湾でお伺いしたいと思います。
まず、この度日本への供給がアサヒビールからレミーコアントローへ変わり、新しいスタートを切ったわけですが、日本に対して新しい戦略などお考えですか?

Gerry: 僕にとって日本というのは『普通じゃない』マーケットですね。まずウイスキーに対する知識が本当に本当に高い。世界でもそのような国はいくつかありますが、日本は平均的な消費者が持つ知識のレベルが高い。興味や知識の持ち方はスウェーデンに近いかな。もう、質問の内容がね、他とは全く違うんだ。スコットランドの人の質問でさえ答えるのが比較的簡単なのに、日本のファンは凄くテクニカルなことまで聞いてくるからね。結局いつも宿題を持ち帰ることになってしまうんだ。でも、やっぱり日本に行くのはいつも楽しみだね。その宿題をこなすことが戦略かな?(笑)

WMJ:供給会社が変わることで何か変わることはありますか?

Gerry: 僕にとってはどんな会社とパートナーを組んでも同じことで何も変わらないかな。だけどレミーのような会社と一緒に仕事ができるのはうれしいですね。彼らのもつ巨大なマーケットにパイプができるわけだし、将来が楽しみだね。

WMJ: それでは少し話題を変えて。日本ではどのように過ごされましたか?BARなどには行かれましたか?

Gerry: 日本では東京と大阪に行っていろいろなスタイルのBARやホテルを見て回ったよ。どこにでもハイランドパークが置いてあったからとてもうれしかったね。そのときにハイランドパークの新しい限定品『THOR』についても話したけど、THORもたくさんのお店に入れてもらっていてからハッピーだったよ。

WMJ: 来日は何度目ですか?

Gerry: 日本へはもう数え切れないくらい来ているよ。いつもファンの多さに驚かされるし、地球の裏側のウイスキーが普通に家で飲まれていると思うと本当にうれしいよね。

WMJ: そうですね、ハイランドパークはもはや日本でもっとも有名な銘柄の一つですからね。それではウイスキー全体に関して、日本のマーケットはGerryさんにどのように映りましたか?

Gerry: 日本はファンが熱狂的で、ウイスキーカクテルなどを創りだしたり、やっぱり『普通じゃない』よね。ウイスキーっていうのはここ2~300年の間は『ただ楽しむだけ』だったんだ。伝統的な飲み方と言えば水も氷も入れずにただウイスキーをグラスに注ぐだけ。ところが日本のバーテンダーが作り出す環境は、ウイスキーの味わいの違いを説明したりウイスキーを使って素晴らしいカクテルを生み出したりしている。これは素晴らしいことだよね。もっとも、ウイスキー自体を楽しむファン層をとってみても日本はとても重要なマーケットだし、もっともっと良くなって続くと思っているよ。

WMJ: それでは、ハイランドパークの個性やスタイルに関してGerryさんの見解を聞かせてください。

Gerry: ハイランドパーク・・・というかウイスキーそれ自体のつくり方は何百年も変わってなく、まず僕たちはその伝統をできる限り継続していきたいと思っている。そしてハイランドパークに関しては、僕たちは長い時間をかけてつくり方や飲み方などを広めてきたし、味わいが複雑なものであってもシンプルなものであってもハイランドパークはウイスキーを勉強し始めるのにぴったりなんじゃないかな。ブランドに関して言うと、僕らは味わいにだけ重きを置いているのでスコットランドの人たちも飲み続けてくれているんだ。日本のウイスキーファンもぜひハイランドパークを試してほしいね。そして自分の舌で判断してもらいたいです。

WMJ:それでは、最後に。台湾と日本のマーケットを比べてどのように感じますか?

Gerry: うーん。台湾と日本はアジアで最も大きく、重要なマーケットに違いありません。ただ文化的には違っていて日本は本当にテクニカル。つくりについて細かいところまで興味を持っている。一方台湾の人はもっとシンプルに楽しむスタイルかな。見て分かるように。

WMJ: 製品面で違いを持たせることは?

Gerry: それはないですね。12年と18年がメインです。ただ、これまで台湾は甘い味わいが一般的だったけど、徐々にスモーキーなブランドなどが目立つようになって来ているね。マーケットがとても洗練されつつある。これからがとても楽しみだね。

WMJ: 日本だけでなく台湾でもお忙しいところお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

ロバート・ランサム Robert Ransom (グレンファークラス蒸溜所)

グレンファークラスのブースに伺ったところ、Robert氏から特別にグレンファークラス105プルーフの20年モノを手渡された。この日のために数本のみ持ち込まれた特別なウイスキーを飲みながらRobert氏にインタビュー。

WMJ: お忙しいところありがとうございます。早速ですが、台湾のウイスキーマーケットをどのように感じますか?

Robert: グレンファークラスにとっては非常によいマーケットです。消費者はまさにグレンファークラスのようなシェリースタイルのウイスキーを期待していますし、たくさんの若い人がウイスキーを飲んでいますから活気ある市場ですね。今や日本を抜いてアジアで最大のマーケットに成長しました。

WMJ: ロバートさんは日本も担当してらっしゃいますが、日本と台湾を比べてなにか違いのようなものはありますか?

Robert: 比較するとすれば、日本は80年もウイスキーをつくっているわけですから、市場の愛飲家も断然知識があり成熟しています。5月に大阪、京都、神戸に行ってテイスティングなどを行いましたが、ウイスキーマガジンさんは取材に来てくれませんでしたね。(笑)
ただ、この雰囲気を見て分かるとおり、台湾のウイスキーライヴもとても磨かれてきているようですね。

WMJ: ちょうどBarShowが開催されていたもので、取材に伺えず失礼しました(笑)そうですね、台湾の人たちはウイスキーのディテールやスペックについて真面目な顔をして話すのではなくて、単純にウイスキーを楽しんでいるように見えます。
味わいについてはどうでしょう?やはり先ほどおっしゃったとおり甘い味わいのものが好まれますか?

Robert: その通りです。シェリーカスクスタイルです。

WMJ: 他のマーケットとの違いは感じられましたか?

Robert: そんなに大きな違いはないと思いますが・・・。日本の方がバーテンダーなどのプロ向け市場が長い時間をかけて築き上げらたように感じます。そしてそれはここ台湾のマーケットに大きな影響を与えているようです。昨日はノックスというBARに行ったのですが、私の印象だと日本のBARのようでした。台湾のウイスキーBARは日本のBARを参考にするといった動きがあるようですから、いずれ台湾マーケットも日本のようになるかもしれません。

 

WMJ: それでは、最後にWMJ読者にメッセージをお願いします。

Robert: スランジ・ヴァー!シンプルにこれですね。(笑)ドーモ、アリガトウ!

 

 

スコッチウイスキーのみならずニューワールドウイスキーにも目が離せない。
この日、ご当地のカバランウイスキーは出展していないようだったが、スウェーデンウイスキーのマクミラが遠路はるばる出展していた。今回取材を申し込んだアンバサダーの中で唯一の女性の目には、この台湾の熱気はどのように映ったのか?また、自身のウイスキーのアジア展開に手がかりを得たのか?

アンジェラ・ドラージオ Angela D’Orazio (スウェーデン マクミラ蒸溜所)

WMJ: こんにちは。よろしくお願いします。半日経ちましたが、台湾と台湾の人たちについてどのような印象をお持ちですか?

Angela: 街も人も大好きよ。

WMJ: 台湾は何度目ですか?

Angela: 2度目です。

WMJ: 今回はウイスキーファンとどんな話をしましたか?

Angela: そうですね、木曜日に台湾のウイスキーマスターのスティーブンとイベントをしてそのときにたくさんのウイスキーファンと話せたわ。その他の場所でも。もちろん今日もね。

WMJ: どのような質問をされましたか?

Angela: そうね、彼らはウイスキーにすごく熱心で、ウイスキーにまつわるあらゆる話やつくり手の考えにも興味を持って訊いてくるし、新しいシングルモルトが台湾に来ることに沸き立っているようでしたね。

WMJ: 台湾にマクミラの供給は?

Angela: まだなのよ。はやくそうなるといいのだけれど。

WMJ: そうですか。何か具体的に動き出していることは?

Angela: 数社お話はさせてもらっていますが、まだ決まってないの。だからこうして上海からもチームを呼んで新しい窓口を探しているのよ。

WMJ: それでは、中国本土にはすでに供給しているのですか?

Angela: 本土もまだね。台湾と同じ課題ね。去年初めて来たばかりで、まだ始まったばかりですから。できれば今年はどこか一社、将来的にお話しできる会社を見つけたいですね。

WMJ: 日本に関してはどうでしょう?マクミラ供給に向けての戦略は?

Angela: 個人的には日本は面白いマーケットだと思っています。知識レベルが高いしウイスキーづくりの歴史もある。いままでは日本からのアプローチがなかったからあまり考えていなかったけど、今こうして初めて日本のウイスキー関係者とお話しすることができて日本の人にもマクミラを楽しんで欲しくなったわ。真剣に考えないといけないわね。

WMJ: 次回はぜひ日本のウイスキーライヴでもお会いしたいですね。

Angela: そうね。日本でもマクミラはまだまだ知名度がないからイベントに参加してたくさん宣伝しないといけないと思っているわ。

WMJ: いまからブースを予約しておきましょうか?

Angela: お願いするわ。(笑)

WMJ: 最後にWMJ読者にメッセージをお願いします。

Angela: 来年は日本にマクミラを持って行けるようがんばるから、そのときはぜひブースに来てくださいね。ニューワールドウイスキーの可能性をぜひ日本の人にも知って欲しいと思っています。

WMJ: お忙しいところありがとうございました。

 

 

インタビュー第2部では、台湾の人たちのウイスキーの楽しみ方が日本のそれと若干異なるという話を聞くことができた。確かにライヴ全体の作り込みや出展者、参加者などを見れば、日本ほど専門性はないもののイベントとしての間口の広さが垣間見える。もちろん日本もそのように専門性を高めながら今の水準があるわけで一概には言えないが、ウイスキーとそれにまつわる他のお酒文化を高めるためには、このような台湾スタイルも時には必要な要素ではないだろうか。隣国同士、アジアのウイスキー業界の発展のため、今後ますます情報交換を欠かすことはできない。

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