Whisky Live Taipei パネラーインタビュー その1
先日開催された『Whisky Live Taipei』にスタッフを派遣したウイスキーマガジン・ジャパンは、ウイスキーライヴの様子を取材する一方で当日台湾に来ていた蒸溜所関係者にインタビューを敢行した。
台湾、そしてアジア市場は彼らの目にどのように映ったのか?日本市場との違いは?忙しい合間を縫ってもらいライヴ会場で彼らが感じた本音に迫った。ウイスキーマガジン・ジャパン読者へのメッセージも見逃せない。
ユアン ミッチェル Euan Mitchel (アイル・オブ・アラン蒸溜所)
ウイスキーマガジン・ジャパン(以下WMJ): 5月のTOKYO BAR SHOWぶりですね。
Euan: 日本では素晴らしい時間を過ごしたよ。アジアに来るのは好きなんだ。アジアの人たちはウイスキーにすごい情熱があって自分にとってリフレッシュになるんだ。ヨーロッパはちょっと退屈だね。ここの人たちは情熱にあふれていて、マーケットのポテンシャルにアランの名を刻むのがやっとだよ。
WMJ: 台湾のウイスキーマーケットの違いは何ですか?
Euan: 台湾ではモルトとブレンデッドウイスキーの消費量が50:50なんだよ。すごいことだろう? 信じられないよ。世界では80~90%がブレンデッドなのにね。どうしてだかは分からないんだけど、すごくモルトのことを知っている人が多い。レベルの高い市場だね。 僕らの言っていることも分かるし、感じ取ってもらえる。14,000人の来場者の内、40%が女性っていうのも驚きだね。若い人から年配の人までいろんな人が来ている。ウイスキーが売れるわけだね。
WMJ: 台湾での発見はなんでしょう?
Euan: 台湾と中国は断然シェリーシングルカスクが好まれているね。何でも売ってはいるけど、シリアルナンバーが入ったボトルやシングルカスクボトリングが特に人気が高いようだね。甘くリッチな口当たりのシェリー樽熟成は特に。アランではバーボンカスクもたくさん売れているけど、だいたいはシェリーシングルカスクのオーダーが多いかな。こういうところは他のマーケットとは違うところだね。繰り返しになるけど、すごい情熱を持った人々で、その樽がどのように熟成しボトリングされ運ばれてくるかを本当に知りたがっているんだ。そのあたりが他の国と違うところかな。
ダグラス クック Douglas Cook (グレンドロナック蒸溜所)
WMJ: ウイスキーライヴTaipeiは楽しまれていますか?
Douglas: 僕は今回初めてウイスキーライヴTaipeiに来たんだけど、すごいですね。ウイスキーのプレゼンテーションが素晴らしく、レベルの高さを感じているよ。すごいウイスキーがブースに並んでいるから、僕にとってもいろいろなウイスキーを試すいい機会だよ。
WMJ: 台湾のウイスキーマーケットをどのように感じていますか?
Douglas: 実際、台湾のウイスキーマーケットは世界で最も大きいマーケットのひとつですね。台湾の消費者は自分の好きな味わいを探していてシングルカスクボトリングやグレンドロナックの中核商品の12年、15年、18年、21年、31年の需要が高まっています。趣向もどんどん洗練されてきていて、我々にとって最も重要なマーケットです。我々のブランドが成長しているのを実感していますから台湾マーケットで仕事ができることは非常にハッピーです。
WMJ: 台湾と日本の市場に対する戦略をお聞かせください。
Douglas: 日本と台湾ではウイスキーの消費傾向が違うと思います。私の経験からすると日本の消費者はウイスキーをBARで楽しむ習慣があると思いますが、ここ台湾ではもう少しエンターテイメント性だったり家で食事とともに楽しんだりするようです。我が社の製品に関して言えばマーケットを区別することは考えていません。我々の製品はマスマーケティングのブランドではなく、ラグジュアリーで買えるところが限られた製品と位置づけていますので、台湾に対しても日本と同じ戦略を持って望むつもりです。違いと言えば消費者がどのようにウイスキーを楽しむかというところくらいですね。
WMJ: 台湾の人たちが好む味わいについてはどうでしょう?
Douglas: 味わいの好みの違いはあまり感じません。敢えて言うとすれば、若いウイスキーですかね。日本からも10年物くらいの若いウイスキーの問い合わせが最近増えていますが、たとえば中国と台湾を歴史的に比較してみると中国の人は古いスタイルの物を好む傾向があります。しかし台湾の人たちはあらゆる味わいを楽しむようです。
WMJ: ありがとうございます。それでは、WMJの読者にメッセージをお願いします。
Douglas: グレンドロナックとベンリアックは今では非常に少ない独立した蒸溜所です。我々はマスマーケットブランドではありません。我々はクオリティに重きを置いています。 量は求めていません。ウイスキーはできるまでに何年もの長い時間がかかりますが、それをリリースし楽しんでもらうことが我々の喜びです。皆様には我々のウイスキーを楽しんでいただき、ウイスキーに込められたハンドクラフトマンシップ(手づくりの精神)を感じてもらいたく思います。
ラナルド ワトソン Ranald Watson (スプリングバンク蒸溜所)
WMJ: 早速ですが台北と台湾の人たちについてどのような印象をお持ちですか?
Ranald: 台湾の人たちはとてもフレンドリーだね。素晴らしいよ。街は…、僕みたいにキャンベルタウンのような小さい町から来た人からすると一言「ワォ!」、凄いね! ウイスキーファンはとてもウイスキーに熱狂的で知識も豊富。まだ台湾に来てから40時間くらいしか経ってないけど、彼らは本当にウイスキーが好きだと言うことが分かるよ。ウイスキーをただの飲み物としてだけでなく、ウイスキーにまつわるストーリーや歴史、背景にも興味を持っているね。
WMJ: 台湾の人と交流する機会があったのですか?
Ranald: ええ、昨日台湾の人たちと一緒にテイスティングをしてたくさん話したよ。
WMJ: どんな質問をされましたか?
Ranald: そうだね、「スプリングバンク蒸溜所はスプリングバンクとロングロウとヘーゼルバーンの3種類をつくっていますが、それらの大きな違いは何ですか?」という質問をされたね。「違ったタイプのウイスキーをつくるのはチャレンジなんだ」と答えたけど、みんなが一番興味を持っていたのはその点だったね。ふつう、一つの蒸溜所は一つのウイスキーしか作らないよね? だから一つの蒸溜所を三つあるものだと思っていたみたいでね。「何で?」って。ウチは普通じゃない蒸溜所だから(笑)
WMJ: とても独特で、それぞれの銘柄で個性が異なりますよね。
Ranald: その通り。全く違うね。
WMJ: 台湾マーケットは今後どのようになると思いますか?
Ranald: 台湾マーケットはスプリングバンクにとってとても大切なマーケットですね。カスクストレングスが好まれるのも特徴で、12年カスクが驚くほど人気があるんだ。ウチは世界中に12年カスクを出しているけど、台湾の人々が望むなら全部を台湾に送ってあげてもいいくらいだね。もちろんここの人たちはカスクストレングスと46%の違いも理解して楽しんでいる。最初に言ったように台湾の人々はウイスキーについてよく知っているし、よく飲むし、いつも何か新しい物を探している。台湾はすでに大きいマーケットだけど、まだまだ成長し続けているね。彼らのそんなチャレンジ精神がこの国に常に新しいものをもたらしていると思う。
WMJ: スプリングバンク、ロングロウ、ヘーゼルバーンの3ブランドの内、台湾で一番人気があるのはどれだと思いますか?
Ranald: スプリングバンクだね。ロングロウとヘーゼルバーンは全体の10%しか生産量がないから、あまりプロモーションをしていないということもあると思うけど。スプリングバンクの方が比較的市場に合わせた商品ということだね。それでも多くはないけど。
WMJ: そんななか今日はヘーゼルバーンに人気が集まっているようですけど?
Ranald: 今日はそうだね。昨日のテイスティングではスプリングバンクの15年が一番人気だったよ。でも今日ブースに来る人たちはヘーゼルバーンが好みみたいだね。ヘーゼルバーンはフルーティでリッチだけどそんなにパワフルではなくスモーキーさは全くない。たくさんの味わいが詰まった純粋なウイスキーの味わいだからね。
WMJ: マイルドでジェントル、スイートな味わいがブースに来る人に人気があったようです。それでは、販売戦略についてですが、台湾と日本で戦略を分けるようなことは?
Ranald: それはないよ。ウチは世界中どの国の人にも等しくスプリングバンクを楽しんでほしいと思っている会社だからね。僕たちは同じ製品をすべてのファンに届けるよ。小さな会社だからUKに売るのも台湾に売るのも日本に売るのも同じ。「Same range and every market」だね。
WMJ: ありがとうございます。それでは、最後にWMJ読者にメッセージを。
Ranald: まずは感謝したい。日本は常にクオリティの高い市場を保っているし、知識とウイスキーに対する情熱は「素晴らしい」の一言。家族経営の小さな会社だけど、当社のウイスキーを楽しんでくれる人に本当に感謝しています。ウイスキーが好きな人は私たちにとってただの消費者ではありません。スプリングバンクを飲んで、楽しんでくれている皆さんは正真正銘のスプリングバンクファンです。日本の皆さんはきっと他の国のどの人よりもずっとスプリングバンクを楽しんでくれていると思っています。だから僕は日本のスプリングバンクファンに「Thank you」と言いたいですね。
共通して言えることは、台湾マーケット、そしてアジアンマーケットが蒸溜所の人たちにとっても重要なマーケットに違いないということだ。 彼らのこのような思いによってアジアにいながらにして様々な素晴らしいウイスキーを楽しめるようになったと言っても過言ではないだろう。世界を飛び回るアンバサダーとつくり手に感謝するとともに、彼らの思いが詰まったウイスキーを大切に楽しみたい。
次回は「ハイランドパーク」のジェリー氏、「グレンファークラス」のロバート氏、スウェーデンウイスキー「マクミラ」のアンジェラ女史のインタビューを掲載します。ご期待ください。