ウイスキービジネスを始めるための「To Do List」

September 12, 2012

蒸溜所を開くには厳密に何が必要なのか、イアン・ウィスニゥスキがレポートする。

モルトウイスキーをめぐる状況はすっかり変わり始めている。ディアジオは新たな蒸溜所を建設中であり、キングスバーンズとアナンデールを含め他にもいくつか計画がある。さらに、シーバスは2013年4月にグレンキース蒸溜所を再オープンする。私たちにとってこのような見通しは楽しみなことだが、蒸溜所を開く人々が直面するのは、「しなければならない事」の長いリストだ。

まず、資金の確保とビジネス計画の作成が必須条件だ。資金がなくても、必要な細部を備えた詳しいビジネス計画があれば、投資を募ることができる。不可欠な詳細としては全体的なコンセプト、生産能力、スタッフ数、ビジターセンター、操業経費、向こう10～15年間の利益込み予想売上高が含まれる。

2005年に生産を開始したキルホーマン蒸溜所の創業者、アントニー・ウィルズは言う。「私たちのような小規模蒸溜所は長い間建設されていなかったので、見本もなしに正確な数字を出すことが難しく、ビジネス計画の作成は容易ではありませんでした。大抵の投資家は3～5年以内の収益を期待しますが、モルトウイスキーでは10～15年かかりますから、スコッチウイスキーのビジネスを理解している人を相手にしないと、ビジネス計画に基づいて投資を募るのも大変です。計画を進められるほどの金額が集まるまでに4年かかりましたが、蒸溜所の建設後は、操業を目の当たりにできることで追加投資が得やすくなりました」

蒸溜所の候補地はトラック輸送に適切な道路アクセス、さらに決定的には一定した給水があるかどうかに基づいて評価する。水を引いて処理するにはSEPA（スコットランド環境保護庁）の認可が要る上、SEPAは廃水の処理に関しても厳格な規則を設けている。

「7ヵ所の異なる候補地を調べましたが、泉と川から一定して十分な水が入手できるところは1ヵ所だけでした。この川からは水力発電事業による電気も利用でき、半島のかなりの部分がすでに給電されています」とスコットランド西部のアードナマーカン半島に用地を持つアデルフィ・ディスティラリー社のセールス／マーケティング・ディレクター、アレックス・ブルースは語る。アードゥナマーカン蒸溜所という名称で2013年10月までに操業開始する予定のこの施設は、間もなく建設が始まるはずだ。

「2010年の1月は地元当局に計画認可を申請する仕事に追われ、2011年2月に認可が下りました。大規模な開発としては相当に速い方です。何を請求すればよいか、計画認可当局とどのように話せばよいかを知っている有益な人たちに参画してもらう必要があります」と数年以内に操業可能になるキングスバーンズ蒸溜所の設立ディレクター、ダグ・クレメントは言う。

ダフトミル蒸溜所では、グレードの歴史的建造物2つを蒸溜所として再開発するために、文化財保護団体ヒストリック・スコットランドからも計画の同意を得る必要があった。

「このふたつの建物はもともと水力製粉所で、それぞれ1806年、1699年と刻まれた石がありました。使われていない上に傷んでいたため、ヒストリック・スコットランドの同意は比較的容易に得られましたし、地元行政当局からの計画認可と同時進行しました」と2005年12月に操業開始したダフトミル蒸溜所の所有者／蒸溜業者フランシス・カスバートは言う。

生産機材の注文と設置については、一貫したサービスを提供するフォーサイス社のような会社に頼むのもひとつの選択肢だ。

「まず伺うのは、目標とする年間生産量です。それで多くの事が決まり、先行き生産能力を拡大できるようにするかどうかも加味されます。すべての機材を設計、製造、設置するまでに、蒸溜所の規模次第でおよそ12～18ヵ月かかります」とフォーサイスのリチャード・フォーサイス社長は言う。

必要な諸認可を申請するには、計画段階でHM Revenue & Customs（HMRC：英国歳入税関庁）との話し合いを始めなければならない。蒸溜認可に加えて、公認の貯蔵庫経営者として熟成貯蔵庫を運営するために必要な認可もHMRCが発行する。樽供給業者および麦芽製造業者（モルトスター）との契約も、操業開始までの最終段階で重要な要素だ。