水を守るウイスキーづくり【後半/全2回】

January 31, 2016

ウイスキーの材料として水や加熱用の水よりも、はるかに大量の水がコンデンサーの冷却に使用される。温まった水を環境へ還すために、どのような配慮が必要なのか。スコッチ業界の取り組みとルールをご紹介。

【←前半】

文:イアン・ウィズニウスキ

コンデンサーの冷却で温まった大量の水を、どれくらいの温度で、どのような流動率で水源に還せるのか。結論からいうと、それは各蒸溜所の水源に応じて求められ、SEPAが認可するライセンスの中で規定される。

そして必要ならば、水源に戻す前に蒸溜所で水温を下げる方法もある。 シーバスブラザーズで環境サスティナビリティ担当マネージャーを務めるロナルド・ダールマン氏が解説してくれた。

「たくさんの蒸溜所には冷却塔があります。コンデンサーからこの冷却塔の最上部に温水が送り込まれ、水温を下げるために空気が吹きつけられます。この絶え間ない冷却プロセスは迅速におこなわれるため、水が冷却塔を通過するのに1分もかかりません。他には貯水池やタンクに温水を溜め、時間をかけて温度を下げる方法もあります。各蒸溜所は採取した水の全量を記録しつつ、水源に戻す水の温度と流動率をモニタリングします。これらの統計はSEPAへの年次報告書に明記されることになっています」

マッシングに使用する仕込み水。ニューメイクスピリッツや貯蔵後のモルトウイスキーのアルコール度数調整を目的とした加水。スチルを加熱するための水。これらの原料水はすべて恒常的に効率よく水源から採取されているが、使用される全体の水量からみるとほんの一部に過ぎない。一方、コンデンサーを冷却するために採取される水は、最終的にすべて水源に還されるものの、ウイスキーづくり全体で使用する水の90%程度を占める。

 

官民共同でおこなう環境保全の取り組み

SEPAで北部地域の運用部長を務めるアンディー・ロージー氏が、採水許可の申請に関するアドバイスを教えてくれた。

「申し込みから4ヶ月以内にライセンスを発行できるように務めていますが、新規に蒸溜所を設立する事業者はなるべく早めにご相談いただけるよう勧告しています。私たちは正当な理由がある場合に許可を取り消すこともできますが、一度発効したライセンスに失効期限はありません。生産量を増大させるために今までよりも多くの水を使用したいと計画している蒸溜所は、既存のライセンスから適切なものを選んで申請する必要があります。追加の採水量が、現在の取水経路でカバーできるのならば問題ありませんが、そうでない場合は、追加のタンクや貯水池を増設して温水の保存可能量をさらに確保したりすることで、水量の増加分に対応する必要が生じます。環境保護の模範となる高い目標を独自に掲げているウイスキー業界と、私たちSEPAは綿密に連絡を取り合っています。この目標は『スコッチウイスキー協会環境戦略』で詳細に表明されており、業界全体で取り組む環境管理の好例としてSEPAも全力で実現を支援しています」

美味しいウイスキーは、水の恵みによってつくられる。その水や周辺の自然環境を守ることも、ウイスキーメーカーの大切な責務であることは言うまでもない。

 

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