カナディアンの至宝と呼ばれたライウイスキー【前半/全2回】
ロッキー山麓の台地で育まれ、最高のカナディアンと評されたウイスキーが日本にやってきた。香ばしいアルバータのライ麦からつくられた2つの銘酒を手に、カナディアンウイスキーの歴史をマスターアンバサダーが語り出す。
文:WMJ
写真提供:カナダ・アルバータ州政府
「世界5大ウイスキー(スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズ)の中でも、カナディアンは比較的歴史の新しいウイスキー。でもカナダ建国前の18世紀半ばから、スコットランド、アイルランド、ドイツなどからの移民がそれぞれの知識を駆使してからウイスキーをつくり始めていました」
カナディアンウイスキーの歴史を紐解くダン・トゥリオ氏は、カナディアンウイスキー界のゴッドファザーと呼ばれる人物である。35年間にわたって母国のウイスキーづくりに従事してきた彼が、東京の在日カナダ大使館で特別なセミナーを開催するために来日している。
「日本でもお馴染みのカナディアンクラブは、1856年にハイラム・ウォーカーがオンタリオ州ウォーカーヴィルで創業しました。1920~1933年のアメリカ禁酒法時代には、アメリカの友人たちの渇きを大いに癒やしたものです。つまりあのアル・カポネも、カナディアンウイスキーの成長に貢献した重要人物のひとりでした」
トゥリオ氏いわく、カナディアンウイスキーの大半はブレンデッドウイスキーである。コーン、ライ麦、大麦、ライ麦麦芽、大麦麦芽、小麦などの穀類を使用し、カナダで蒸留し、小さな樽で、最低3年間貯蔵しなければならない。
そしてカナディアンウイスキーは、その多くが「フレーバリングウイスキー」と「ベースウイスキー」をブレンドしてつくるのが大きな特徴なのだという。これはスコッチでモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドする手法にあてはめると理解しやすい。
グレーンウイスキーに相当するベースウイスキーの原料は、安価でアルコール収率が高いコーンが主力。アルコール度数約13%のマッシュを連続式のコラムスチルで2回蒸溜し、約94%のピュアなスピリッツを生み出す。
一方のフレーバリングウイスキーには、主にライ麦、ライ麦麦芽、大麦麦芽などが使用されている。こちらはフレーバーを逃さないよう単式のポットスチルで蒸溜し、取り出した度数64%のニューメイクをオーク樽で熟成することになる。
ロッキー山麓のライ麦から生まれるアルバータの銘酒
「カナディアンクラブがつくられるカナダ東部のオンタリオ州は、夏が長く、日照時間も降雨量も十分で、コーン栽培にぴったりの土地です。でも私が今日紹介したいのは、カナディアンウイスキーが誇るもうひとつの重要な生産拠点。カナダ西部にあるアルバータ蒸溜所のウイスキーです」
1946年に創設されたアルバータ蒸溜所は北米最大規模のライウイスキー蒸溜所として知られ、ここで生産されるライウイスキーは北米の他の蒸溜所で生産されるライウイスキーの総量よりも多い。自社製品はもちろん、高品質なライウイスキーのサプライヤーとして、70年にわたって北米のウイスキーづくりを支えている。
アルバータ蒸溜所は、世界的なマウンテンリゾートとして知られるアルバータ州カルガリーの近郊にある。カナディアンロッキー東麓に広がる標高1,048mの台地で、氷河を水源とする清冽なグレイシャルウォーターに恵まれた土地だ。
アルバータ州の面積は約6万平方キロで、日本の2倍近くもある。245の川と600以上の湖が潤す広大な大地では高品質な農作物が育ち、主要作物のひとつがライ麦だ。プロジェクターに映し出されたアルバータの風景を眺めながらトゥリオ氏は語る。
「まさに絵に描いたような自然の美しさ。でも決して過剰な演出ではありません。アルバータの男たちは、今でも本当にカウボーイハットをかぶっているんですよ」
アルバータ州のライ麦は、日本のパン職人たちにも重用されている。生育期間が短く、乾燥していて、昼夜や季節間の気温差が大きいため、濃縮された豊かな風味が宿るのだ。この特別なライ麦が、カナディアンの至宝と呼ばれるウイスキーをつくる。
「さあ、何はともあれ、私たちのライウイスキーを味わっていただきましょう」
(つづく)
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※価格は販売店様の自主的な価格設定を拘束するものではありません。 アルバータ蒸溜所のユニークなウイスキーや、その楽しみ方を紹介した公式サイトはこちらから。 |
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