Jim Beam meets 山崎 【前半/全2回】

February 18, 2013

 

ジムビーム、ブッカーズ、メーカーズ・マークなど多数のバーボンブランドを擁するビーム社がサントリー酒類株式会社と提携し、日本のバーボン市場に激変が起こったのは1月4日(公式発表は昨年9月)。そのビーム社のマスターディスティラーであるフレッド・ノウ氏が、2月4日、日本で初めて本格ウイスキーづくりをはじめた山崎蒸溜所に足を踏み入れた。フレッド氏の目に映ったジャパニーズウイスキーは一体どのようなものだったのだろうか?

まず、フレッド氏の経歴について、ご自身の言葉を借りてご紹介しよう。
フレッド・ノウ、正式にはフレデリック・ブッカー・ノウ3世創業家の7代目に当たる。今回は4年ぶりの来日。久しぶりの日本の印象を訪ねると「変わっていないね。皆フレンドリーだ」と笑う。
姓が代わっているのは5代目T・ジェレマイア・ビーム氏が子どもを授からず、姉の子を養子に迎えたため、6代目からノウ姓に代わった。
このような純然たる家族経営ではあるが、事業の後継は強制ではなかったそうだ。幼い頃からバーボンの香りを嗅ぎ分けるような英才教育を受けてはいたが、大学では全く違うことを学び、すこしウイスキーから距離を置くことでより蒸溜への興味を深めたという。
フレッド氏の息子は取材日の3週間前から蒸溜所の仕事を始めたばかりだそうだが、やはり最終的に自分の意思でウイスキーづくりの道を選び、今はまず原料の穀物をトラックから降ろすことから始めている。

この日は山崎蒸溜所内の見学の後、フレッド氏と山崎蒸溜所チーフブレンダー・輿水精一氏による相互のウイスキーテイスティングと対談が予定されていた。まず先にビーム社ブランドの主力商品をテイスティング。ジムビームジムビームブラックラベルブッカーズの3種類だ。

最初はホワイトラベルのジムビーム。バーボンは2年以上の熟成期間で「ストレートバーボン」と名乗れるが、こちらは最低4年以上の原酒を使用。皆さんも一度は飲んだことがあるだろう。おそらくその飲み方は、ストレートよりもコーラ割りやハイボールだったのではないだろうか?
フレッド氏も「これはミキサビリティに富むウイスキー。バーボンと言えばショットグラスをクイッとあおる西部劇のイメージがあるが、ジムビームは好きなように割って楽しんでほしい」と言う。しかしもちろん、ストレートでもバニラ香ののった滑らかな舌触りを楽しむことができる。
ブラックラベルはさらに熟成期間の長い6年以上の原酒で構成されている。ボディの厚みが増し、甘さが丸みを帯びてくる。

そしてフレッド氏の父 ブッカー・ノウ氏がつくり出したスモールバッチバーボン、ブッカーズ。7年11ヶ月以上熟成させた原酒から成る。興味深いのは樽を熟成させる位置まで決まっているということだ。ビーム社の貯蔵庫では9段のラックがあり、ブッカーズにはその中の5段目と6段目で熟成させたものを使う。最上段は乾燥しているので水分の蒸発が早く、アルコール度数が上がりやすい。アタックも強くなるという。逆に下段では湿度が高いためソフトなウイスキーに仕上がる。先代は5・6段目のものを好んだので、今でもこの位置の樽を選ぶのだそうだ。
ブッカーズはカスクストレングス、63.6%でボトリングしている。「なぜなら」とフレッド氏は続けた。「お客様が好きな度数で楽しめるバーボンをつくりたかった」――言うなればスモールバッチはウイスキーの中では、つくり手のこだわりの塊のようなものだろう。しかし、ブッカーズにおいては「飲み手の自由」もその核に据えている。これこそが、「決して特定の飲み方にこだわらない。バーボンは自由なスタイルで楽しむ酒」というビーム家の信念であり、世界No.1バーボンとしてその名を轟かせている所以だろう。

輿水氏はこの3種をテイスティングして、感嘆したように頷いた。「原料の旨みがとてもうまく活かされていますね。チャーした新樽由来のバニラ香も豊かで、味わい・香りともにバランスがすばらしいと思います」 隣でフレッド氏は「ありがとう」と嬉しそうに答えた。

論語に「朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや」という有名な一節がある。「遠方から友が来て、同じ道について語り合うのは楽しいものだ」という意味だ。まさにこのひと時は、場所もつくり方も違えど、ウイスキーづくりに心血を注ぐ2人の邂逅の時間であった。
(後半に続く)

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