ブラックニッカ60周年【前半/全2回】

October 10, 2016

本年ブラックニッカは発売60周年を迎えた。キャンペーンと特別ボトルでアニバーサリーを祝うため、ニッカウヰスキー本社に歴代ブレンダーたちが勢揃いした。ブラックニッカブランドの変遷から、ニッカのウイスキーづくりを振り返る。


文:WMJ

 

ニッカウヰスキーの初代マスターブレンダー、竹鶴政孝がブラックニッカを発売して今年でちょうど60年になる。ニッカは10月中旬から順次、既存のブラックニッカブランドの700mlボトルを「60周年記念ラベル」に切り替えて順次発売し、大々的な消費者キャンペーンも実施する予定だ。そして11月1日からは、数量限定で60周年記念の数量限定商品「ブラックニッカ ブレンダーズスピリット」を発売する。

この特別ボトルのテイスティングを兼ねて、歴代マスターブレンダーの佐藤茂生氏(第3代)、山下弘氏(第4代)、それに歴代チーフブレンダーの杉本淳一氏、久光哲司氏、佐久間正氏の5名がニッカウヰスキー本社に集った。ニッカのウイスキーづくりを支えてきた新旧ブレンダーが、このように一堂に会する機会は極めて珍しい。

1969年に入社した第3代マスターブレンダーの佐藤茂生氏は、ブラックニッカの主要銘柄「ブラックニッカ クリア」の生みの親ともいうべきブレンダー。在任中にはウイスキーの暗黒時代も体験している。1985年からチーフブレンダーを務めるものの、1989年からの大幅な増税でウイスキーの家庭用市場が壊滅状態に。当時の主力ブランドのハイニッカも950円から1,450円に値上がりし、旧来の顧客がすっかり離れてしまったのだ。

「1本1,000円以下のボトルを提供できないと、やはり家庭用市場には再参入できない。悩んでいたところに、1997年からの減税が決まり、ようやく1,000円以下で発売できる見通しが立ちました。このチャンスを活かして家庭用市場を復活させるのが、私のブレンダーとしての使命になったのです」

当時のニッカでは、新しい素材として採用したノンピート麦芽の原酒の一部が適度な熟成期を迎えていた。この原酒の魅力を引き出し、日常的に気軽に楽しめるクセのないウイスキーをブラックニッカブランドで打ち出そうとしたのが佐藤氏率いる当時のブレンダーチームだったのである。佐藤氏が当時を振り返る。

「1980年代後半からスコットランドでは、すでにノンピート麦芽が流通し始めていました。これまでニッカにはノンピートを使ってみようという発想はなく、うまくいくかはわからなかったのですが、やってみなければわからない。新しいチャレンジのノンピート麦芽に対するニッカの解答が『ブラックニッカ クリアブレンド』でした」

そして佐藤茂生氏の後を継いだ第4代マスターブレンダーの山下弘氏は、竹鶴政孝の薫陶を直々に受けた数少ないブレンダーのひとりだ。

「次世代を担う社員に本当に美味しいウイスキーを体験させ、竹鶴政孝に学んだ品質、具体的には酵母や樽のノウハウなどを伝えるのが経営者やマスターブレンダーの仕事。大切なのは、本物の味を知るることでした。物事の本質は、自分でつかみとるしかありません。そんなひとつひとつの積み重ねが、現在のニッカをつくってきました。竹鶴政孝は滅多に笑顔を見せない人でしたが、今頃は笑顔で私たちの努力を認めてくれているだろうと思います」

 

時代に合わせて変化したブラックニッカ

 

ニッカの歴代ブレンダーが集結するのは社内でも異例のこと。岸本健利社長(左)もブラックニッカ60週年の重みをかみしめた。

そして1997年にチーフブレンダーとなった杉本淳一氏は、佐藤茂生氏の代から温めてきた「ブラックニッカ クリアブレンド」(2011年に「ブラックニッカ クリア」に改称)を世に送り出す。

「佐藤が残したレシピは、変えるところのない完璧なブレンドでした。しかし発売前に社内で試飲会をしたところ、飲みやすい味わいに批判の声も上がりました。従来のニッカのスモーキーな味わいに慣れている人は『ウイスキーを飲んだ気がしない』『物足りない』と感じてしまったのです」

しかし消費者の嗜好の変化を信じる杉本氏に迷いはなかった。発売直後より、クリアな味わいのブラックニッカは好調に売り上げを伸ばしてゆく。

「お客様の反応はよかった。社内で反対していた人たちも、やがて『スイスイ飲めていいね』『アルコール度数37%だからついつい飲み過ぎちゃう』などと徐々に評価を改めてくれました。クリアブレンドは、革新を実現して成長するニッカの新しいシンボルでした。販売が伸びるなかで原酒のやりくりに苦労しましたが、リーズナブルな価格でさまざまなタイプのブラックニッカが並ぶ現在の状況を竹鶴政孝も喜んでくれると思っています」

杉本氏に代わって2006年にチーフブレンダーとなった久光哲司氏には、新しい課題があった。2003年頃から、それまで順調に上昇してきた「ブラックニッカ クリアブレンド」の売り上げが伸び悩んでいた。課題は中味の訴求ポイントである「飲みやすさ」と、重そう・キツそうと感じられるように瓶のイメージが乖離していたことと結論づけ、デザインを改めたところ2007年から再成長を始めた。

そしてさらにはスッキリした「クリア」とは異なる「コク」というキーワードが浮上したのもこの久光チーフブレンダーの時代だった。

「市場が濃厚さを求める時代になり、ブラックニッカという安心ブランドの中で次の商品を作ろうと試行錯誤を始めました。シェリー樽熟成のモルト原酒をキーモルトにして、グレーンウイスキーも十分に熟成させたものを使用することで、新しいブラックニッカの味わいを提案できると考えたのです」

久光氏のチームが組み上げたブレンドは、2012年よりチーフブレンダーを務める現職の佐久間正氏に引き継がれる。2013年に発売された「ブラックニッカ リッチブレンド」は芳醇さと豊かなコクで好評を博すことに。さらに創業80周年に合わせた新商品の開発に取り組んでいたとき、図らずもNHK連続テレビ小説『マッサン』の追い風が吹いた。ブラックニッカもまた、新しいチャレンジを企てる。

「すっきりと飲みやすい『クリア』と、芳醇でコクのある『リッチ』でも、まだ取り切れていない顧客層がある。仮説ながら、そのキーワードは『濃厚さ』だと考えました。新樽とヘビーピートの原酒を中心にした新商品の開発が始まりました」

そして2015年に、ブラックニッカ史上最も濃厚な味わいを実現した「ブラックニッカ ディープブレンド」を発売。定番のブランドが、さらにウイスキーユーザーの裾野を広げることに成功したのである。

(つづく)

 

ブラックニッカ ブレンダーズスピリット

アルコール分 43%  

容量     瓶700ml

発売日    2016年11月1日(火)

価格     オープン価格 
       *参考小売価格:2,500円(消費税別)

限定数量   12,000箱(*1箱=700ml×12本)

 

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(2016年10月17日午前10:00開設予定)

 
ブラックニッカ60年の歴史、商品、キャンペーンなどの詳細がわかるオフィシャルサイトはこちらから。
 

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