「ザ・スコッチ」と呼ばれたウイスキー【前半／全2回】
バランタインの5代目マスターブレンダー、サンディー・ヒスロップ氏が来日した。その手に握られているのは、日本限定で発売されたばかりの特別なボトルだ。スコッチを象徴する卓越したブレンディングの内幕が、テイスティングを通して明らかになる。
文：WMJ
驚くほど構造化された、偉大なるスコッチの象徴。ウイスキー評論家のジム・マレー氏が、2011年版『ワールド・ウイスキー・バイブル』でバランタインを評した言葉である。
ジョージ・バランタインによって1827年に設立され、1895年にはヴィクトリア女王から英国王室御用達に指定されたバランタイン。スコッチの王道と呼ばれる風格は、190年にわたって受け継がれてきたブレンド技術から編み出される。スコットランドの4地域でつくられた数十種類の原酒が絶妙なハーモニーを織りなし、ブレンドに複雑さと深みを与えるのである。
バランタインの現マスターブレンダーは、5代目のサンディー・ヒスロップ氏。2016年のインターナショナルスピリッツチャレンジで、マスターブレンダーオブザイヤーに輝いた名匠だ。3代目のジャック・ガウディ氏、4代目のロバート・ヒックス氏の両名から薫陶を受け、創業以来190年でわずか5人というマスターブレンダーの重責を受け継いでいる。
ヒスロップ氏は毎週のように蒸溜所から届くニューメイクをすべてノージングし、熟成に使用される樽の選定と買い付けをおこなっている。ヨーロピアンオーク樽の調達時には、その樽で貯蔵されていたシェリーの酒質まで細かくチェックする。厳重に管理された原酒は365箇所の貯蔵庫に振り分けられ、毎年11月には全商品のレシピを見直して伝統の風味を守る。
そんな多忙な毎日を送っているヒスロップ氏から、直々にブレンディングの秘密を聞ける機会はめったにない。5度目の来日にあわせて開催されたテイスティングセミナーでは、バランタインのマスターブレンダーに求められるさまざまな役割についても教えてくれた。
「私の仕事の80％は、受け継がれてきたフレーバーを均質に管理すること。ひとつの原酒の個性を際立て過ぎることなく調和させ、華やかな香りとまろやかな味わいを実現するのがバランタインの伝統です」
バランタインのDNAを解き明かすテイスティング
目の前には、6つのウイスキーグラスが並んでいる。それぞれの琥珀色の液体は、まだ正体が明かされていない。ヒスロップ氏が1つめのグラスに手を伸ばす。
「テイスティングでは、ウイスキーに少しだけ水を加えるようにしてください。水がすべてのニュアンスを引き出して、複雑なアロマの構造が明らかになります」
わずかに加水してグラスを揺らすと、クリーミーなバニラや赤リンゴを思わせるフルーツ香が立ち上がった。飲み口はスムーズで、ハチミツやバニラの複雑な余韻がある。
「これが、ブランドのベストセラーでもあるバランタイン ファイネストです。ファイネストから30年まで、贅沢な甘味と長い余韻がバランタイン商品すべてに共通する特徴なのです」
2つめのグラスは「バランタイン17年」だ。昨年のセミナーでも、ヒスロップ氏はこの17年こそがバランタインの象徴であると発言している。17年熟成のウイスキーの先駆けとして1937年に誕生し、現存する17年もののウイスキーとしては世界最長の歴史を誇る逸品である。
グラスから、洋ナシやトフィーのような甘い香りが溢れ出る。口に含むと、クリーミーでハチミツのような甘さ。そしていつしかどこまでも長い余韻に包まれている。まさに「ザ・スコッチ」と呼ぶに相応しいバランスと高級感だ。
「マスターブレンダーとして、バランタイン17年のブレンドには特に重大な責任を感じています。新発売の特別ボトルを味わう前に、今日はバランタイン17年に使用されているキーモルトもご用意しました。今から順にテイスティングしてみましょう」
（つづく）
バランタイン17年 トリビュートリリース容量：700ml
※価格は販売店の自主的な価格設定を拘束するものではありません。 |
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