生まれ変わるベンリアック・ファミリー【第1回/全3回】
スコットランドの魅力を体現する個性的なシングルモルトウイスキーを、アサヒビールが6月19日から国内で新発売する。合計8アイテムを擁する3つのブランドから、まずはシェリー熟成のエキスパートとして名高いグレンドロナックをご紹介。
文:WMJ
ブラウン・フォーマン社が製造するスコッチシングルモルトウイスキー「グレンドロナック」「ベンリアック」「グレングラッサ」(計8アイテム)を、アサヒビールが2018年6月19日から全国で新発売する。個性的な3軒の蒸溜所は2016年4月よりブラウン・フォーマン社の傘下に入っており、2017年3月からは著名ブレンダーのレイチェル・バリー氏が腕を振るうことで新しい時代に足を踏み出したばかりだ。
どれをとっても、物語性たっぷりのウイスキーである。グレンドロナックは、シェリー樽熟成のエキスパート。ベンリアックは、スペイサイド屈指のイノベーター。グレングラッサは、海の香りが漂うユニークな味わいが魅力だ。
バラエティ豊かなウイスキーを紹介してくれるのは、ブラウン・フォーマンでブランドアンバサダーを務めるクレイグ・ジョンストン氏。まずは3種類あるグレンドロナックのボトルをテーブルに並べた。
「グレンドロナックは、スコットランド屈指の歴史を誇る蒸溜所。1826年に設立され、築200年近いオリジナルの建物も残っています。そして何より、ハイランドウイスキーの伝統に忠実なウイスキーづくりで知られています」
グレンドロナック蒸溜所は東ハイランドのフォーグの渓谷にあり、年間の平均気温はスペイサイドのベンリアックより6〜7℃低い。創業当時からヨーロピアンオークのシェリー樽で熟成をおこない、辛口のオロロソと甘口のペドロヒメネスを組み合わせたバランスを追求し続けている。
「グレンドロナックのスピリッツはヘビータイプで力強く、シェリー樽で長期熟成しても樽の香味に負けません。甘く果実味のある風味と、ドライでナッツのような香りの芳醇なフレーバーは創業以来のスタイルです」
シェリー樽熟成の圧倒的な完成度
実際に伝統のフレーバーを味わってみよう。ジョンストン氏は、まず「グレンドロナック12年」のグラスを手に取った。色はシェリー樽熟成らしく、赤みがかった深いゴールドだ。
「オリジナルのグレンドロナックを継承する、フラッグシップにしてエントリー向けのボトルが12年です。オロロソとペドロヒメネスのシェリー樽を組み合わせ、甘口と辛口の絶妙なバランスをマスターブレンダーのレイチェル・バリーが改めて模索しました。まろやかにして複雑。ハチミツやミルクチョコレートの風味が、いつも同じバランスで感じられるようにコントロールされています」
バニラのようなフルーティさに、ビターチョコレートのようなコクと苦み。フルボディでバランスに優れ、ハイランドモルトの入門にぴったりという説明にも頷ける。
次にジョンストン氏は、真ん中の「グレンドロナック18年」を飛ばして「グレンドロナック21年」の説明を始めた。
「21年は、12年と同様にオロロソとペドロヒメネスの組み合わせです。比べてみると、フレーバーの複雑さも増して、ミルクチョコレートの他にタバコのような感触もあります。ナツメグやシナモンなど、キッチンを思わせるような香りが旺盛です。基本的なフレーバー構成は12年に似ていますが、フィニッシュの長さは圧倒的。オークのスパイスも増していますね」
まさに完璧なハーモニー。それぞれの風味が主張しながら溶け合い、深く長い余韻に満たされる。ハイランドウイスキーの歴史を体現した圧倒的な複雑さである。
そしてジョンストン氏が最後に取り上げたのは、ブルーラベルの「グレンドロナック18年」だ。
「先に紹介した2つのウイスキーとは異なり、18年は100%オロロソシェリー樽熟成。辛口のシェリーを熟成させたヨーロピアンオークの樽だけを使用しているため、かなりダークでドライな樽香が感じられます。ダークチョコレート風味も、カカオの含有量を増したような印象ですね。このドライな感触を、スモーキーと表現する人もいるほどです」
長い余韻のなかに、オレンジピールやマーマレードのような苦味と甘味が調和している。この「グレンドロナック18年」こそ、ウイスキー業界で「究極のシェリー爆弾」と呼ばれるウイスキーなのだとジョンストン氏は教えてくれた。
「3つのウイスキーは、すべてノンチルフィルタードです。年数が増すにつれて度数を高くしているのは、繊細な香りを強調できるようにするため。軽やかな風味の一部はアルコールと一体化しているので、長期熟成でも生き生きとした表現を保つために度数を上げているのです」
グレンドロナックは、スコッチを代表するシェリー樽熟成のエキスパートだ。ピーテッドモルトや変則的なフィニッシュも採用することはあるが、古き良きハイランドの伝統をもっとも忠実に継承しているブランドのひとつであることに変わりはない。
その伝統のレシピに、わずかな変更を加えたのは新しいマスターブレンダーのレイチェル・バリー氏だ。就任後初めて手がけた「グレンドロナック21年」と「グレンドロナック18年」で、すぐさまワールド・ウイスキー・アワードの「ベスト・ハイランド・シングルモルトウイスキー」などの権威あるアワードに輝いて実力をいかんなく発揮している。
「世界のウイスキーファンは、ここ2年でグレンドロナックの複雑さがさらに増したことに気づいています。おそらくレイチェル・バリーの才能の賜物ですね」
ジョンストン氏は、最後にとっておきの秘密も教えてくれた。
「グレンドロナック蒸溜所は、1996年から2002年の間に生産を停止していました。今は2018年なので、18年前も21年前もグレンドロナックの休止期間にあたります。つまり今年発売されるグレンドロナック18年もグレンドロナック21年も、実際には少なくとも23年以上前に蒸溜された長期熟成原酒だけを使用していることになるんです。ちょっとお得な感じですよね」
(つづく)
グレンドロナック、ベンリアック、グレングラッサなど、世界的なプレミアムスピリッツの商品情報を網羅したアサヒビールの公式ウェブサイトはこちらから。
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