フォアローゼズ蒸溜所マスターディスティラー ジム・ラトリッジ氏インタビュー 【後半/全2回】
フォアローゼズ蒸溜所の哲学―シンプルでありながら、一切の妥協を許さず最高品質を追い求める。マスターディスティラー ジム・ラトリッジ氏が語るつくりのこだわり、インタビュー後半をお届けする。
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――なるほど、樽の環境を一定にすることで品質を保つだけでなく効率も良いというのは、何万という樽の管理をする上で大変重要になってくると思います。
ちょうど今も仰いましたが、セミナーでも印象的だったのがとくに「均一」という言葉を繰り返された点です。均一にすることを重要視されていると思いますが、そのために10種類の原酒をつくり分けるというのが興味深いです。単に均一を求めるのであれば、ひたすら同じものをつくり続けるほうが良いと思いましたが、あえて原酒をつくり分けるのですね。
ジム氏 10種類の原酒をつくる一番の目的はイエローラベルの品質を常に安定することでした。原酒を組み合わせることでそれぞれの原酒の特徴をうまく調整して、同じ品質のものをつくっているのです。また一方で、現在プレミアムバーボンが増えていますが、シングルバレルバーボンやリミテッドエディションの商品開発において、他社では単一の原酒から樽の違いや熟成年数の違いで表現するところを、フォアローゼズの場合はタイプの異なる原酒の中から選び出すことができ、よりお客様に香味特徴の違うものをお楽しみいただけます。酵母や仕込みの段階から香味特徴の多様性を出せるというのが我々の強みだと思っています。
――だからこそフォアローゼズのシングルバレルは個性的、ということですね。
個人的な感想になりますが、本日セミナーで提供された5種類のテイスティングサンプルの中では、OESQ(コーンの比率が多いマッシュビルにフローラルな酵母を使用したもの)が一番好きでした。というのも、バラのような香りがして、華やかさと同時に繊細さと柔らかさがあり、これぞ花の名前を冠したウイスキー「フォアローゼズ」!という印象を受けたのです。
ジム氏 あのサンプルは7年熟成のもので、今日お出ししたサンプルの中には一番長くて13年熟成のものもあったのですが、熟成のピークが原酒タイプによって異なり、熟成のピークを過ぎると、そういった特徴的な香りが失われてしまうこともあるのです。大切なのは熟成年数ではなく、熟成のピークを見極めることという好例ですね。まさにQタイプの酵母はバラの赤い花びらを想わせるような香りをつくり出すフローラルタイプで、そういう印象を持っていただけたことは嬉しいです。
――セミナーに参加した方は様々な感想を持たれたと思います。「私のテイスティングコメントが正しいのではなく、皆さんが感じたそれぞれの印象が大切なのです」と仰っていましたが、その通りだと思いました。
では、最後に日本のウイスキーファンにメッセージをお願いします。
ジム氏 これまで何度も来日していますが、日本の皆様のバーボンに対する知識や関心の高さにはいつも驚かされ、とても嬉しく思っています。
フォアローゼズを多くの人に飲んでいただき、その美味しさに触れてほしいという想いがあります。もっと我々の商品に触れていただき、様々な味わいを愉しんでいただければといつも願っています。もちろん飲み過ぎには注意していただかないといけませんが(笑)。
――ありがとうございました。
幸いなことに、通訳と説明を兼ねてキリンビール株式会社チーフブレンダーの田中 城太氏にご同席いただくことができた。ジム氏の言葉に加えて、田中氏がフォアローゼズに勤務されていた経験からも補足していただいたことでより詳細に、そしてジム氏の人柄も伝わる興味深いインタビューとなった。いつか田中氏にもじっくりと、富士御殿場蒸溜所の魅力をお伺いしたい。
世界中、どこのバーにもあるフォアローゼズ。広く愛されるにはまず常に品質、味が一定のものを供給することが大切だが、最高品質のものを均一につくり続けるのは簡単なことではない。そのうえでユニークなシングルバレルで懐の深さを見せるのだから、一流とはこういうものかと感銘を受ける。ジム氏の情熱の真っ赤な薔薇は、世界中に咲き続けていくだろう。
「フォアローゼズ シングルバレル リミテッドエディション 2013」
ジム・ラトリッジ氏が2013年の特別限定品として、バーボンとしては貴重な長期熟成原酒の中から13年熟成の原酒樽を厳選。
アルコール度数が60%のボトルと58%のボトルを、あわせて170本の数量限定で発売する。
販売方法はバーボンフェスティバルでの先行販売(終了)、ブランドサイトからの申し込みによる抽選当選者への販売。
申し込み期間は8月31日まで、通信販売当選者確定は9月11日(水)ごろの予定 (商品発送は9月中旬)。
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