あのウイスキー再び

October 31, 2012

オールドメルドラムの蒸溜所から失われていたものをデイヴ・ブルームが発見する。


アバディーンから1時間足らずで、周囲の様子は一変する。昔ながらの農業地帯そのままだ。オールドメルドラムの蒸溜所には、着くというよりもいきなり出くわした。私の目的地は一体どこにあるのだろうと思いながら進んでいると、目の前にスティルハウスが立ち現れ、直角に曲がるとそこはもう厚い壁に囲まれたモルトハウスの脇だった。その最初の驚くべき瞬間から、グレンギリーがこう言っているようだ、「何を手間取っていた? 私を見てごらん」

いつだって手に入るシングルモルトなのに、実際に目の当たりにするとやはり何がしかの驚きは禁じ得なかった。とにかくここは、1798年からウイスキーをつくっているところであり、それよりも古い、おそらくはスコットランドで最も古いとまで一部では信じられている蒸溜所なのだ。この場所は元革なめし工場で、後に醸造所になり、213年前にウイスキーづくりのために改造されたと言われている。

ほとんどの古い蒸溜所と同様、その歴史はブレンド、特にVat 69と密接に結びついている。Vat 69を創り出したウィリアム・サンダーソンは1886年にパートナーになり、1904年に単独のオーナーになった。その後サンダーソンの会社は(ジンで有名な)Booth’sと組み、1943年にはディスティラーズ・カンパニー社(DCL)に吸収された。

その最初の驚くべき瞬間から、グレンギリーがこう言っているようだ、
「何を手間取っていた? 私を見てごらん」

グレンギリーはそれからも、ビーフィでスモーキーな原酒として黙々と多くのブレンドを支えてきたが、スモーキーウイスキーの生産増加を目指したDCLが、ブローラ蒸溜所と比較してグレンギリー蒸溜所には十分な水がないと見なしために1968年に閉鎖された。

2年後、ここをDCLから買い上げたスタンリー・P・モリソン(現モリソン・ボウモア、MBD)は、水脈占い師を使って新たな水源を探った。その結果、水が流れ出し、ウイスキーづくりも甦った。

1995年にまた閉鎖されたのだが、驚くべきことに1997年に再オープンした。しかし今回は、マネージャーのケニー・グラントが見せてくれたようにモルトハウスはほぼ完全な状態を維持しているにもかかわらず、フロアモルティングを行わないことになった。ニュー・ピッツリゴからのピートの蒸気が村に漂っていた日々は過ぎ去った。再オープン以降、グレンギリーはアンピーテッドだ。

内部はほとんど何も変わっていないようだ。マッシュタンはローターシステム付きではあるものの、他には古い制御パネルと、ここにしかなさそうな鋳鉄製の螺旋階段があるだけでいっぱいの小さな部屋に鎮座し、隣の部屋にはステンレス製ウォッシュバック8基が詰め込まれている。道路側の端に温室式の窓があるスティルハウスだけは、呼吸できるだけの空間があり、ウォッシュスティルのラインアームがシェル&チューブ式コンデンサーまで実に長く延びている。

古い蒸溜所の例にもれず、ここは身を屈め、頭をぶつけないように気をつけて、身体を折り曲げ、かろうじてドアを通り抜けるような場所、秘密が隠された場所だ。この曲がりくねった性質はスピリッツに反映され、ニューメイクはパン生地、シリアル、牛脂、ワクシーさが混じり合った特性を持つ。樽の中で、もっとかぐわしくフルーティな蜂蜜様の香りが現れる。

グレンギリーは決して予想通りにはならない。最も軽い場合は、野性的で、ハチミツの香り漂う、ハーブ様の領域に入り込むが、重いままで獣脂のような芳香に移行することもある。どちらも同じくらい興味をそそる。しかし個人的には、ピートが懐かしい。結局はブレンダーが要求したから使われていただけで、もうブレンド用モルトではない以上、不要なことは分かっているが、グレンギリーを普通のものと画する上で役立っていた。

いずれにせよ、将来はこのモルトを目にする機会が増えるだろう。グレンギリーは小規模で、確かな品質を持ち、ストックがある。何十年も前にさかのぼる並外れたストック。MBDのマスターブレンダー、レイチェル・バリー(近くのインバルーリー出身)にとっては、すでにその時が来ている。

「この蒸溜所が再オープンしてほぼ15年になりますから、『ハウススタイル』がしっかり確立されています。この20年間にMBDは最高品質のオーク樽に相当な投資をして、それが今できているウイスキーの品質に結実しています」

で、あのピートは?

「再オープニング以降、何度もピーテッドモルトで蒸溜してきたんですよ、だからこのスペースを見てください!」

ここに至るまでに少し時間がかかったかもしれないが、やっと欠けていたものが分かった。

データ

モルト:シンプソンズから調達
ウイスキータイプ:アンピーテッド
マッシング:ロータータンでマッシュ4.5トン。
8時間周期で「クラウディな麦汁の兆候」が現れる。
発酵:それぞれ22,000リットル入りのステンレス製ウォッシュバック8基。
アンカー社のドライイースト、ウォッシュバック1基当たり2袋。48時間発酵。週末はやや長時間。
蒸溜:スティル3基だが、使用は2基のみ。ウォッシュスティルは20,000リットル入り。スピリットスティル:14,000リットル。
プレーンな形状で、ウォッシュスティルには非常に長いラインアームがある。
カット:アルコール度75%~69%。
現在の詰め:100カスク/週。
住所:Distillery Road, Oldmeldrum, AB51 0ES
電話:+44 (0)1651 873450
ビジターセンター:あり。
ツアー:11:00、13:00、15:00、月~金
ウェブサイト:www.glengarioch.com

テイスティングノート

ファウンダーズ・リザーブ NAS 48%
香り:フラグラント、ビャクダン、そして軽いハーブ、ヒース。少し蜂蜜のようでクリーミーになり、ほのかな柑橘系の香りをともなう。オレンジクリームブリュレとパインサップ。
味:最初はドライでぱりっとしている。硬質なスピリットが心地よい。水を加えるとバタービスケット。
フィニッシュ:長いが強くはない。

12年 43%
香り:こんがり焼けたシリアル。ドラフのような甘さがここまで続く。ふくよかで、かすかなナツメグとあのヒースの香りが漂う。
味:ブラジルナッツ、コショウが少し。中盤ではしっかりとフルーティで豊かな味わい。水を加えると軽いミツロウの香り、その後ハーブが戻って来る。
フィニッシュ:長く、軽くナッティ。

1995 55.3%
リリース予定のスモールバッチの先行テイスティング。
香り:パン、イースト、ワイン。油紙、燃えるローズマリー、タラゴン、タイム。肉厚で柔らかいフルーツ。複雑。
味:初めにオイリー、ホワイトプディングを思わせる。時間とともに軽くなる。ドライフラワー、コケ、かすかな風船ガムの味さえする。
フィニッシュ:長く、かつフル。見事。

 

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