アイコンズ・オブ・ウイスキー 2021【第1回/全3回】
今年で第19回目を迎えた「アイコンズ・オブ・ウイスキー(以下IOW)」は、ウイスキーマガジンの発行元でもある英国パラグラフ・パブリッシング社主催の世界的なコンテスト。「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」が製品としてのウイスキーを対象とするのに対し、IOWは世界のウイスキー業界に著しい貢献を果たした企業、蒸溜所、人物、小売店、バーなどを表彰する。2021年の受賞者を3回に分けてご紹介。
ディスティラー・オブ・ザ・イヤー
ブラウン・フォーマン(アメリカ)
米国ケンタッキー州に本拠地を置くブラウン・フォーマンは、世界170カ国以上で所有ブランドを販売している。アメリカ資本のスピリッツおよびワイン生産者としては、世界最大の企業である。ジョージ・ガーヴィン・ブラウンが1870年に創設し、オリジナルブランドの「オールドフォレスター・ケンタッキーストレートバーボンウイスキー」はアメリカで初めてボトリングされたバーボンとして知られている。現在のブラウン・フォーマンは創業家であるブラウン一族の5代目にあたり、世界中で4,700人以上の写真を雇用。保有するワインとスピリッツのブランド数は25以上にのぼっている。
入賞
マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー
ボブ・ダルガーノ/グレンタレット蒸溜所(スコットランド)
ボブ・ダルガーノは、真にウイスキー業界と一体の人生を送ってきた。グレンアラヒー蒸溜所で働いていた父を追うように、ボブは1984年にマッカランで貯蔵庫の管理担当者としてキャリアをスタート。ウイスキーづくりのプロセスを全方位から学んでスキルを身につけ、その後30年間にわたってスペイサイドのマッカラン蒸溜所で働いた。マッカランでウイスキーメーカーの重責を担った後は、グレンタレットのマスターブレンダーとして新たな一歩を踏み出している。
入賞
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ディスティラリーマネージャー・オブ・ザ・イヤー
ニコール・オースティン/ジョージディッケル(アメリカ)
ニコール・オースティンは、2006年にマンハッタン大学を卒業して化学工学の学位を取得。その後は紆余曲折を経て、2010年にキングスカウンティ蒸溜所でマスターブレンダーの職を得た。これがウイスキー業界における最初の役割となった。キングスカウンティで数々の成功を収め、2018年にはテネシーウイスキー「ジョージディッケル」の本拠地であるカスケードホロー・ディスティリングでジェネラルマネージャーとディスティラーに任命される。多彩な経歴を持つ個人の意欲と決断が、ウイスキー業界で成功をもたらすことがある。過去10年以上にわたるニコールの活躍は、そんな事実を証明してくれた。
入賞
クラフトプロデューサー・オブ・ザ・イヤー
アイアンルート・リパブリック・ディスティリング(アメリカ)
ロバート・リカリッシュとジョナサン・リカリッシュの兄弟が、大胆な決断を実行に移したのは2011年のこと。ロバートは大学で法学を学び終えた頃で、ジョナサンはすでに生物医学エンジニアとして働いていた。そんな2人が、夢だったウイスキーづくりの道を歩み出したのだ。業界内で数年間のインターンを経験した後、兄弟はテキサス州デニソンを蒸溜所の建設地に決定。蒸溜所は2014年から操業を開始し、母のマルシアが経営を担当することになった。糖化、発酵、蒸溜、バレルでの熟成、工場内でのボトリングを自社内のチームでおこなっている。スピリッツの原料は、地元農家に代々伝わる非遺伝子組換えのコーン。そこにはテキサス州北部に特有のフレーバーが宿っている。
入賞
サステナブル・ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー
ナクニーン蒸溜所(スコットランド)
ハイランドのドリミンにあるナクニーン蒸溜所は、史上初めての100%オーガニックでサステナブルなウイスキー蒸溜所を謳っている。創設したのは、アナベル・トーマス。地球環境と調和しながら共存できるウイスキーをつくるのが蒸溜所の使命だ。ナクニーン蒸溜所は再生可能エネルギーを使用し、余剰分の穀物をリサイクルして現地の放牧牛の餌にしている。蒸溜所が発売した最初のウイスキーは、わずか36時間で売り切れた。またオークションも賑わし、新しい蒸溜所の最初のボトルとしては史上最高額となる41,004英ポンド(約600万円)の高値を付けている。
入賞
ビジターアトラクション・オブ・ザ・イヤー
カバラン蒸溜所(台湾)
台湾の宜蘭県にあるカバラン蒸溜所は、2005年の創業以来、台湾産シングルモルトウイスキーの先駆者として注目を集めてきた。ウイスキーの仕込みや冷却に使用されるのは、雪山山脈からの清冽な雪解け水。南国特有の高温多湿な環境でダイナミックに貯蔵され、海と山から吹き抜ける風も熟成を助ける。台湾で最初の蒸溜所は、世界的に見てもユニークな条件に恵まれている。ウイスキーファンなら、ぜひ訪ねてみたい目的地だ。
入賞
ビジターアトラクションマネージャー・オブ・ザ・イヤー
スチュアート・ヘンドリー/グレンゴイン蒸溜所(スコットランド)
スチュアート・ヘンドリーは、長年にわたってウイスキーを題材にしたコミュニケーションのスキルを磨き、卓越したレベルにまで洗練させてきた。大勢のビジターを収容する場所で、スピリッツの数々を説明する腕前も見事である。グレンゴイン蒸溜所におけるスチュアートの仕事は、単にウイスキーを解説するレベルに留まらない。はるか以前から家族でグレンゴインのウイスキーを楽しんできたスチュアートは、ビジターを楽しませるすべての行動にブランドへの情熱をもれなく注ぎ込んでいるのだ。
入賞
アメリカンウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
マイケル・カウマン/ハイスピリッツ/バッファロートレース(アイルランド)
酒類業界では珍しく、アイルランド海軍士官としてキャリアをスタートさせたマイケル・カウマン。だがその数年後に退官してスピリッツの営業マンとして働き始めると、その才能を一気に開花させることになった。ウイスキー業界でのキャリアは、南アフリカとアイルランドにおけるアイリッシュ・ディスティラーズの販売でスタート。同社のラグジュアリーなポートフォリオを専門に活躍することができた。その後はハイスピリッツ・アイルランドに移籍し、サゼラックの商品群をグローバルに展開するチームの一員となっている。
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アイリッシュウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
サビーン・シーハン/ランベイ・アイリッシュウイスキー・カンパニー(アイルランド)
ランベイ・アイリッシュウイスキー・カンパニーにおけるサビーン・シーハンの役職は、シニアブランドマネージャー兼グローバルブランドアンバサダー。この複雑な重責は、昨年からの世界状況やウイスキー市場への影響によってさらに困難を強いられる部分もあった。ジェムソンで9年間働いた後、2018年に新設されたランベイブランドへと移籍。ウイスキーの物語を大勢の消費者に広め、ブランドが誇るユニークなブレンディング技術や蒸溜に関する広範な知識を伝えるために努力を続けている。
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ワールドウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
蔡欣嬑/カバラン蒸溜所(台湾)
台湾の宜蘭県にあるカバラン蒸溜所で、ブランドアンバサダーとグローバルPRオフィサーを兼任する蔡欣嬑。蒸溜所での役割は多岐にわたるため、セールスチームと行動を共にする日もあれば、ブレンディングチームと議論を重ねる日もある。そうかと思えば、世界各地でカバランの素晴らしいウイスキーをピーアールし、ブランドストーリーを伝えるために旅をする。対面式のテイスティングセッションから、オンライン式のテイスティングへとスムーズに移行できたのも蔡欣嬑のおかげだった。どのような状況でも世界中でカバランのウイスキーを紹介し、テイスティングと議論の場を広げているのだ。
入賞
スコッチウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー
ニコラ・リスク/マッカラン(フランス)
マッカランのリージョナルブランドアンバサダーとブランドエデュケーションマネージャーを務めるニコラ・リスク。在任中には、目まぐるしく変わるウイスキー市場に素早く適応する術を学んできた。仕事で何よりも大事にしているのは、消費者の心をつかみながら、熟練の技術を駆使したマッカランのウイスキーについて知ってもらうこと。新型コロナウイルスの感染拡大によって、ニコラが旅に費やす時間もほとんどゼロにまで減ってしまった。だがこの変化をチャンスと捉え、新しい方法で消費者に知識を届け、ウイスキー市場との関係を引き続き強化できたのもニコラの功績だ。ウイスキーの魅力を伝えるため、今日もニコラはみずからのスキルを駆使してさまざまな知恵を絞っている。
入賞
地区別の候補者も含めたアイコンズ・オブ・ウイスキーの全容はこちらから。