アイコンズ・オブ・ウイスキー 2022【第2回/全3回】
「アイコンズ・オブ・ウイスキー(以下IOW)」は、ウイスキー業界に貢献してきた人々への祝福。ノミネートから地域ごとの最高賞を選び、最終的な投票で今年の世界一を決める。第2回は、バーとコミュニケーションの分野でウイスキー業を躍進させたアイコンたちをご紹介。
ウイスキーバー・オブ・ザイヤー(複数店舗)
グッドナイト・グループ(アメリカ)
ニューヨークで2012年に「フラットアイアン・ルーム」を創設し、大きな成功を収めたグッドナイトグループ。2017年には「ファイン&レア」をオープンし、一流の料理、素晴らしいスピリッツ、ワールドクラスのウイスキーが一堂に会する場所として注目を集めてきた。「フラットアイアン・ルーム」と「ファイン&レア」のフロアスタッフおよびバー運営陣は、配属前に包括的なウイスキー関連のトレーニングプログラムを受講する。グループのオーナーであるトミー・ターディーは、イスラエルで食糧救済活動をおこなうレケット財団のために、ロンドンとイスラエルでウイスキーのテイスティングを開催した。
入賞
ウイスキーバー・オブ・ザイヤー(ホテル)
ザ・スピリット・セーフ/ザ・ステーション・ホテル・ロセス(スコットランド)
ロセスのザ・ステーション・ホテルは、大規模な改装を経て2016年に再オープン。当初から、高い評価を獲得している。この再開発とともに誕生したのが、ホテルバーのザ・スピリット・セーフだ。バー全体にあしらわれた装飾的なインテリアデザインは、ホテルのオーナーであるフォーサイス社(世界的な銅製蒸溜設備メーカー)が主導したもの。例えばカウンターバーの手前には、ここから半径80km以内にある60軒のウイスキー蒸溜所で見られるさまざまな形状の蒸溜器を原寸大のプレートで表現している。ザ・スピリット・セーフは、定期的に地元スペイサイドの蒸溜所を訪め、知識を深める努力を怠らない。継続的なトレーニングや能力開発の一環として、博識なゲストたちからウイスキーについて学べる機会も誇りに感じている。
入賞
ウイスキーバー・オブ・ザイヤー(単一店舗)
カレイドスコープ/ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ・エディンバラ(スコットランド)
1983年に設立されたザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティは、伝統だけにとらわれない型破りな存在であることを常に自負している。直営店のバー「カレイドスコープ」は、2000年代前半にエジンバラのクイーン・ストリートで一般客に向けてオープンした。ここでは400種類以上のウイスキー銘柄のほか、地元の食材を使った料理、豊富なカクテル(最近は樽熟成カクテル各種も提供中)、ウイスキー以外のスピリッツも豊富に取り揃えている。カレイドスコープのバーテンダーは、ウィスキーを敬遠する人でもお気に入りの一杯を見つけられるように喜んでお手伝いしてくれる。その類まれな情熱は、このバーに対する一般客のレビューでも常に紹介されるほどだ。
入賞
バー・マネージャー・オブ・ザ・イヤー
パードリック・ラフター/パリス・テキサス・バー&レストラン(アイルランド)
パードリック・ラフターは、キルケニーにあるパリス・テキサス・バー&レストランの経営に2003年から携わっている。この年月の間に、パードリックはアイルランドでも屈指の見事なウイスキーコレクションを築き上げてきた。この1年はコロナ禍でバーにとっては厳しい状況が続いていたが、パードリックは選りすぐりの高級ウイスキーをテイスティングする数々のイベントを主催し、国内有数のエキスパートたちがこぞって参加した。本物のウイスキーマニアであるパードリックは、2021年にもアイルランドおよびグーバルでバー・マネージャー オブ・ザ・イヤーを受賞しており、同賞を2年連続で受賞するという快挙を成し遂げた。
入賞
バーテンダー・オブ・ザ・イヤー
パンカジ・バラチャンドラン/テソウロ(インド)
ホテル業界のキャリアで成功を収めた後、インド飲食業界の著名なコンサルタントとして活躍してきたパンカジ・バラチャンドラン。デリーの「フーツ」(Hoots’)、ゴアの「テソウロ」(Tesouro)という有名なカクテルバー2軒の立ち上げに貢献した。以前はモンキーショルダーのアンバサダーとして、同ブランドをインド市場で成功に導いた功績もある。最近ではインドの代表として国際的な酒類コンベンションに参加し、インドの魅力を紹介しながら、次世代のインド人バーテンダーたちにポジティブな影響を与えている。
入賞
シェフ・オブ・ザ・イヤー
ジェイソン・ノーラン/ケルティック・ウイスキー・バー&ラーダー(アイルランド)
グルメ業界で豊かな見識を持つジェイソン・ノーランは、2020年春よりケルティック・ウイスキー・バー&ラーダーで料理の腕をふるっている。キッチンポーターとしてキャリアをスタートし、その後はいくつかの高級レストランで経験を積んできたジェイソン。コロナ禍でロックダウンを余儀なくされた時期には、画期的なアイデアによってケルティック・ウイスキー・バー&ラーダーでもテイクアウトの料理メニューを考案した。その他にも調理するタイプのテイスティングボックスを用意し、ジェイソンが文書と映像で調理法を説明するスタイルも話題を呼んでいる。
入賞
ブランドイノベーター・オブ・ザ・イヤー
M&H蒸溜所(イスラエル)
2014年創業のM&H蒸溜所は、イスラエルで初めてとなるウイスキー蒸溜所。現在、地中海沿岸、アッパーガリラヤ、エルサレム山地、ネゲブ砂漠、死海などのイスラエル各地で複数の熟成プロジェクトを実施している。死海は地球上で最も標高の低い場所にある湖であり、特異な気象条件で知られている。このような土地でのウイスキー熟成はM&Hの旗艦プロジェクトとなり、2021年秋に「アペックス・デッドシー・エディション」を発売。熟成環境を通して地球環境について考える革新的な視点で、M&Hはこの分野におけるグローバルリーダーとなった。
入賞
キャンペーンイノベーター・オブ・ザ・イヤー
ウエストランド蒸溜所(アメリカ)
ウエストランド蒸溜所のチームは、これまで聖域となっていたウイスキー界の固定観念に疑問を呈した。シングルモルトウイスキーの品質は、特定地域の風土によって育てられるのではない。むしろ個々の蒸溜所の揺るぎない意図と卓越したウイスキーづくりによって判断してほしいという問題提起である。ウエストランド蒸溜所が企画した「ジャッジメント・オブ・ウエストランド」キャンペーンには、約2,000人のウイスキー愛好家や鑑定家が参加。その内容は、世界各地で高く評価されているシングルモルト4種類のブラインドテイスティングである。その結果、シングルモルトに適した特定の地域はもはや存在しないことが明らかになった。特にアメリカンシングルモルトウイスキーを中心とするワールドウイスキーの正当な価値と品質が証明されたのである。
入賞
PRエージェンシー・オブ・ザ・イヤー
SPEY(スコットランド)
スペイサイドを拠点とするSPEYは、グローバルなPR会社だ。これまでも一流ウイスキーブランドのキャンペーンで様々な商を獲得して、その実力を高く評価されてきた。昨年だけでも、BBCワールドワイドのドキュメンタリー番組でレイチェル・バリー博士を全世界に紹介し、ベンリアック初のビジターセンターを宣伝し、ザ・モルト・ウィスキー・トレイルの新しいウェブサイトを立ち上げ、ウィスキー・オークショニアで希少なアメリカンウィスキーの販売を促進するなどの多彩な活動を展開した。最近では、スピリッツ業界で働く女性を支援するアワウイスキー財団との提携を発表。SPEYのマネージングパートナーであるジェニファー・ロバートソンも、同財団の理事に任命されている。
入賞
コミュニケーター・オブ・ザ・イヤー
フェリーペ・シュリーバーク(イングランド)
ウイスキーライター、ミュージシャン、作家、スピリッツコンペティション審査員、国際テイスティングイベント主催者。フェリーペ・シュリーバークは、実に多彩な顔の持ち主だ。2015年からはウイスキーに関する専門記事を執筆するようになり、ウイスキーマガジン、アンフィルタード、ウイスキーウォッシュにも定期的に寄稿。Forbes.comのシニアコントリビューターも務めている。2018年には音楽、テイスティング、マルチメディアを通じてライブ音楽とウイスキーを融合させた「リズム&ブーズ・プロジェクト」を共同設立。2020年には初の著書『ロンドン・カクテルズ』を出版した。現在はポーランドを拠点に活動し、ウイスキー・エクスチェンジのビリー・アボットと共にテイスティングイベントを立ち上げた。このイベントでは、ポーランドのウクライナ難民のために寄付を募っている。
入賞
地区別の候補者も含めたアイコンズ・オブ・ウイスキーの全容はこちらから。