ラベルを読む・6【サッカーに酔う 前半/全2回】
ワールドカップの盛り上がりに、ウイスキーマガジンも少し便乗してみよう。今回はウイスキーラベルに登場したサッカーチームを取り上げる。
ウイスキーラベルとサッカーについてとなれば、考えるまでもなく、現在の世界チャンピオンであるスペインのFC バルセロナ①から始めなければなるまい。
1899年にジョアン・ガンペール氏が、バルセロナで暮らしていた外国人グループと一緒に設立したクラブだ。その経緯を踏まえれば、今も様々な文化的背景を持つ諸国のプレイヤーで構成されていることも意外ではなかろう。このチームのトレードマークなのだから。
設立に至った経緯は、英国のスポーツが次第にヨーロッパ中に普及したことに起因する。19世紀から20世紀への変わり目の頃、人々は余暇を楽しむ方法としてスポーツに関心を持つようになった。
1919年頃、FCバルセロナは、試合だけでなく人格教育とスポーツマンらしい振舞いにも重点を置いたガンペールの努力のお陰で、素晴らしいチームに成長していた。そしてスペイン内戦と第二次大戦の間も、メンバーの損失がありながらも何とか生き延びた。
オランダ人の私にとって、FCバルセロナはプレイヤーとして、またコーチとして大成功を収めたヨハン・クライフと永遠に結びついている。彼に教えを受けたペップ・グアルディオラが不滅の基礎を固めたのも事実だ。
今のところ、おそらくこのFCバルセロナが若いプレイヤーに最高の教育をする世界一のサッカーチームであるという点では、敵味方ともに異論はない。リオネル・メッシがその典型的な例だ。
史上最高ではないかもしれないが、確実に最も有名なチームが、マンチェスター・ユナイテッドだ②③。世界中で推定4億5千万人といわれるサポーターの数を見る限り確かに最大で、「Man U」自体がひとつのブランドだ。
しかし、1878年の設立当時は「ニュートン・ヒースL&YR(ランカシャー&ヨークシャー・レイルウェイズ)FC」という名称で、マンチェスター・ユナイテッドと命名されたのは1902年のことだった。
このクラブは栄光の最高峰と深い悲嘆の底の両方を経てきた。
1958年2月6日にはベオグラードからイギリスに戻る飛行機が墜落。22人が犠牲になった。おそらくクラブ史上最悪の日だろう。幸いなことにその後、当時のコーチであるマット・バスビーは、1966年にイングランドのワールドカップ優勝にも貢献するボビー・チャールトンを主将に迎えて、再び素晴らしいチームを作り上げた。チャールトンのほか、有名な「バスビー・ベイブス(WMJ註:バスビー氏が育成した若い選手たちのこと)」にはスコットランド人のデニス・ローとジョージ・ベストがいる − 残念ながら、ベストは少しばかりウイスキーを好み過ぎたが。
そして国内でも国際的にも多くのタイトルを獲得するようになる。マンチェスター・ユナイテッドには最も在職期間の長いコーチ、アレックス・ファーガソンもいる。ファーガソンは1986年11月に契約を交わしてから一度もクラブを離れず、2013年5月に引退を発表した。「三冠」を獲得した1998/1999年のシーズンがおそらく一番の伝説だろう。
特にヨーロッパ・カップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)の決勝戦は実にスリリングだった。試合の90分までは1-0でバイエルン・ミュンヘンがリードしていた。そしてロスタイムの2分の間にテディ・シェリンガムとオーレ・グンナー・スールシャールがドイツの夢を打ち砕き、マンチェスターが「ビッグイヤー」カップを手にしたのだ。
「マグパイズ(magpie=カササギ)」という愛称のニューカッスル・ユナイテッド④は1881年に「FCスタンリー」として始まった。地域のライバル、サンダーランドAFCと1898年に初めて「タイン・ウェア・ダービー」という特別な試合を戦い、現在まで毎年続いている。
ニューカッスルは20世紀初頭に好調期を迎え、全国タイトルを3回獲得したほか、FAカップ決勝戦に5回出場という驚異的な記録を残し、一度は優勝した。その後は次第に成績が下がり、1955年にもう一度FAカップで優勝したのが最後だった。最近では2009年と2010年に降格と昇格が続き、昨年再び返り咲いた。
最も有名なプレイヤーはイングランド代表チームでも幾多の勝利を上げたアラン・シアラー(2006年に引退)で、クラブの象徴として彼らのスタジアムではバーにまでその名がついている。シアラーは全身全霊をニューカッスル に捧げ、マンチェスター・ユナイテッドからのオファーを断ったことさえあった – イングランド北東部のクラブに忠実であることを選んだのだ。
クラブの愛称はユニフォームからきている(WMJ註:カササギの羽毛は黒と白)。マグパイズはホームでプレイするときには黒白のユニフォームを着用し、伝説によるとこれが幸運をもたらすそうだ。
【後半に続く】