ラベルを読む・6【サッカーに酔う 後半/全2回】
世界を熱狂に包み、閉幕となった本年のワールドカップ。ウイスキーマガジン・ジャパンでは引き続き、ラベルに登場したサッカーチームのお話をしよう。ウイスキーは4年に1度と言わず、ずっと楽しめるものであることに感謝しつつ…。
【←前半】
本年のワールドカップはドイツの勝利に終わったが、ウイスキーのラベルということであれば、スコットランドのクラブを抜かしては話にならない。となれば、セルティックFCについて書くべきだが、今回は現在リーグ優勝54回とスコティッシュカップ優勝33回という記録を持つグラスゴー・レンジャーズを取り上げたい⑤⑥。
このチームは、長年にわたりセルティックとの対抗に重点を置いてきた。「オールドファーム」と呼ばれる両者の有名な対戦は、スコットランドの首都で行われる宗教的な一戦と見なすこともできる − プロテスタントのレンジャーズとカトリックのセルティック。
レンジャーズは1972年のECII(UEFAカップウィナーズカップ)でディナモ・モスクワを3-2で下し、欧州カップで一度優勝した。ラベルに登場するサッカークラブの中でもレンジャーズは最も古く、1873年に設立されている。2012年には解散を余儀なくされたが、再融資を受けてスコティッシュ・フットボールリーグのサードディビジョン(4部リーグ)に加わり、2013年にはリーグ優勝を果たした。
ところで、名前の付いた独自のウイスキーをつくるには、必ずしも有名な大手クラブである必要はない。その証拠がスコットランド、ペイズリーのセント・ミレンFCだ⑦。クリケットやラグビーを含めた一般的なスポーツクラブとして始まったが、1877年にサッカーに集中することになった。まだ全国タイトルこそ獲得していないものの、スコティッシュFAカップで3回 優勝している。1983/84年に一度、欧州トーナメントのUEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)に出場したが、ロッテルダムの有名なオランダチーム、フェイエノールトに1-0と2-0で敗北した。
我が故郷ズウォレの名を持つPECズウォレは、2012年にオランダのファーストディビジョンからプレミアリーグに昇格した⑧。この出来事を祝うため、私はズウォレ市のためにシグナトリー・ヴィンテージ社にオーヘントッシャンのカスクをボトリングしてもらい、ラベルには勝利したチームの名前を誇らしげに掲げた。
偶然にもオーヘントッシャンはゲール語で「フィールド(野原)の隅」を意味する。このウイスキーがどこで発売されたか、お分かりだろうか?
様々なボトラーがサッカーに商機を見いだしている。
レンジャーズとマグパイズにはWaverley Vintnersが提供した。ここは世界中のワインに重点を置いた会社だ。カスクエールとビールフェスティバルの開催はその中核ビジネスに属する。
バーン・スチュワートはかつてFCバルセロナのためのブレンドを生産した。今であれば確実にブナハーブン、ディーンストン、トバモリー、それにレダイグが入っていただろう。
セント・ミレンにウイスキーを供給したのはシーバス・ブラザーズ社。所有者のペルノ・リカールはアベラワーとザ・グレンリベットを含め20ヵ所以上のスコッチ蒸溜所を所有しているから、このブレンドは多くのシングルモルトでできているかもしれない。
マンチェスター・ユナイテッドはそのウイスキーの出所を明かしていないので、ブラインドテイスティングにぴったりだろう。
これらのボトルがまだ入手可能かどうか私には分からないが、サッカーは今も世界中で楽しまれている − ウイスキーと同じように。