2つの世界が出会う「ザ・マッカランダブルカスク12年」が新発売

December 29, 2016

スペイサイドのシングルモルトウイスキーを代表する「ザ・マッカラン」から、新商品が登場する。シェリー樽原酒100％の「ザ・マッカランダブルカスク12年」は、アメリカンオークとヨーロピアンオークを贅沢に組み合わせた繊細な風味が魅力だ。

文：WMJ

スコッチウイスキーの王国とも呼ばれるスペイサイドで、1824年以来の伝統を誇る「ザ・マッカラン」。ハロッズウイスキー読本で「シングルモルトのロールスロイス」と評された、高級ウイスキーの代名詞的ブランドである。

しばらく魅力的な限定ボトルのリリースが続いていたザ・マッカランだが、このたび発売されるのは、新たな定番になりそうなウイスキー。「ザ・マッカランダブルカスク12年」という名称から想像できるとおり、こだわりの樽熟成から生み出された味わいを最大の特長としている。

ザ・マッカランの樽熟成は、その複雑さや投資額のスケールにおいても他ブランドの追随を許さない。ウイスキーの貯蔵に使用されるのは、原木から処理に至るまで自社で管理する専用樽だ。定評の高いシェリー樽も、独自に購入したオーク材をスペインのボデガ（樽工房）で熟練職人たちが新樽に組み上げ、シェリーのシーズニングを経てからスペイサイドにやってくる。このライフサイクルをすべて自社内で管理しているのが、ザ・マッカランの大きな強みである。

「ザ・マッカランダブルカスク12年」は、ヨーロピアンオークとアメリカンオークを使用したシェリー樽原酒100％のウイスキーである。もともとザ・マッカラン定番のシェリー樽風味は、大半がヨーロピアンオーク材を由来としている。すなわちこの新商品で特筆すべきは、アメリカンオークの影響だ。アメリカンオークといえばバーボン樽を連想するが、この「ダブルカスク」はあくまでシェリー樽原酒100％という点がユニークなのである。

伝統的に、シェリー樽はスペイン北部などで伐採されるヨーロピアンオーク材から作られてきた。だがザ・マッカランは、独自のルートで北米からアメリカンオーク材も調達し、何千キロも離れたスペインに輸送して樽を製造している。南スペインのヘレスにあるボデガ（樽工場）で木材を待ち受けているのは、ザ・マッカランでマスター・オブ・ウッドの称号を持つスチュアート・マクファーソン氏。彼が品質を認めた樽だけに、ザ・マッカランの焼印が押される。

マクファーソン氏のお墨付きを得た樽は、ドライオロロソシェリーを最低2年間シーズニングすることで、ウイスキーの熟成に適した状態になる。新樽特有のタンニンが穏やかに減少し、樽材に深く染み込んだシェリーがフルーティーな甘味を用意するのである。ヘレスでシェリーづくりに一役買った樽は、ようやくスペイサイドでウイスキー熟成という最重要任務に入る。

2つの大きな旅が、完璧に調和したウイスキー

このようにして12年以上熟成されたアメリカンオークのシェリー樽原酒には、同じアメリカンオークのバーボン樽やヨーロピアンオークのシェリー樽とも異なる特性が備わっている。これをザ・マッカランの根幹ともいうべきヨーロピアンオークのシェリー樽原酒と組み合わせることで、100%シェリー樽熟成でありながら完全にユニークな風味が生まれるのである。繊細なブレンドを組み上げるのは、マスター・ウイスキー・メーカーのボブ・ダルガーノ氏だ。

単一の蒸溜所でつくられたシェリー樽原酒100％のシングルモルトでありながら、このウイスキーには2つの異なる世界から旅立った長い物語の融和がある。色は収穫期の麦穂を照らす陽光のようなゴールド。グラスに鼻を近づけると、クリーミーなバタースコッチ、トフィーアップル、オレンジの砂糖漬け、バニラカスタード、伐採されたばかりのオーク材の香りがする。

口に含むと、その個性はさらに際立つ。とろけるようなハチミツ、木のスパイス、柑橘の風味が立ち上がり、レーズンやキャラメルの風味とバランスをとっている。オーク香がいつまでも残り、甘さとドライな感触がフィニッシュを飾る。

アメリカンオークのシェリー樽を由来とするバニラ、柑橘、滑らかな甘みなどの繊細な風味が、伝統的なザ・マッカランの特長である芳醇なフルーツ風味や木のスパイスに溶け合ったウイスキー。この見事な調和は、最後の1滴まで少しも損なわれることがない。

ウイスキーの風味の特徴は、約80%が木の成分からもたらされるとザ・マッカランは考えている。既存のファンにとっても「ザ・マッカランダブルカスク12年」は新鮮な驚きとなるだろう。甘くてまろやかなハチミツ風味は、ふたつのオークの特長を完璧なバランスで引き出した証拠。時間と手間暇を厭わない、ザ・マッカランだからこそ成し得たウイスキーである。