山崎と白州の次なる進化 【後半/全2回】

July 31, 2013

昨年5月に発売された「山崎」「白州」のノン・エイジ・ステートメント(NAS)。その味わいとブレンディングの技に、デイヴ・ブルームが迫る。

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最終結果(本文末枠内を参照)は、ワインカスク熟成原酒とオールドシェリーカスク熟成原酒のブレンドだけではないとはいえ、前者の「赤い果実の甘さ」を維持しつつ、後者が風味を舌に落ち着かせて、山崎の興趣がより大きく現れていた。これは白州の場合も同じで、始まりは期待通りの新鮮さと繊細さではなくスモーキーさだった。

「白州にはライトリーピーテッドモルトを使用していましたが、1990年代に止めて、ノンピーテッドとヘビリーピーテッドのモルト原酒を一緒にブレンドし始めました。しかしそのブレンドは、フェノール値は同じであっても、同じ結果をもたらさないことが判明しました。結論として、2005年からライトリーピーテッドモルトを再び使い始めました」

「とても軽いピーティングなので、消えてしまうとお思いでしょうが、スモーキーさは消えても、そのアクセントは残ります」
このNASのベースには、若くてスモーキーなウイスキーにありがちなゴムのような香りは全くなく、強めのミントっぽさと並んで白州の青リンゴの香りを維持し、味には一抹のスモーキーさがある。やはりこれも重厚ではないが、福與氏はよりしっかりした山崎と同様に構造的な深みを付加する代わりに、ここではむしろテクスチャーに富む古いモルト原酒(この場合は18年以上熟成させたリフィルカスク熟成原酒)を加えることで、このウイスキーの味のラインを巧みに拡大した。
味は深みを増し、青リンゴが煮リンゴに変化し、ホワイトチョコレートの味わいと微妙でシルキーな口当たりを伴った。その結果が、微かにバジルやミントティーすら感じられて口がさっぱりする新鮮さを持ちながら、中間ではクリーミーで洋梨のような柔らかさがあるNASとなったのだ。

「ウイスキーは単純であり、また複雑でもあります」と福與氏は言う。「あの25年以上熟成させたシェリーカスク原酒でさえ、実はシンプルなものです。しかし、古いものと新しいものと組み合わせることで、エイジングを超越したウイスキーができるのです。」
私たちは「品質」と「風味」の判断基準として、「年数」に重きを置くことが多い。年数が品質の決定因子のひとつだと主張することは難しいが、長いエイジングがウイスキーに何らかの際立った個性をもたらし得ることも真実だ。核心は「年数」ではなく「熟成」であり、「熟成」が望みの風味、複雑さ、バランスをもたらすはずだ。未熟成あるいは過熟成の2年モノもあり得るし、熟成した4年モノもあり得る。若さと古さを内包し、新鮮で親しみやすく、重厚で…そして熟成感のあるNASウイスキーもあり得るのだ。
ううむ、福與さん、1+1は何になるのだろう? 「別の何かですよ!

カスク・データ

サントリーは熟成に3種類のオークを使用している:
アルバオーク(アメリカンホワイトオーク)
ヨーロッパナラ(ヨーロッパオーク)
ミズナラ(ジャパニーズオーク、別名モンゴリナラ)

これらは以下の5種類のカスクで使用される:
180Lバーボンバレル(アルバオーク)
230Lホッグスヘッド(アルバオーク)
新しいアルバオークからサントリーの樽工場でつくった480Lパンチョン
480Lシェリーバット(ヨーロッパナラ)
480Lバット(ミズナラ)

このうち4種(バレル、パンチョン、シェリーバット、ミズナラ)のサンプルは現在、48%・ノンチルフィルタードでボトリングされた限定版カスクコレクションとしてリリースされている。
山崎の蒸溜液は等しく複雑でピーティングの程度も様々、スチルのペアも6種類あるが、異なるウッドタイプが及ぼす影響について知る数少ないチャンスを消費者に提供してくれる。

 

 

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