ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所のビジターセンターがオープン【前半/全2回】
国内外のウイスキー人気に後押しされ、今日も大勢の人々が訪れるニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所。このたび、体験型の展示からウイスキーづくりを理解できるビジターセンターがグランドオープンした。斬新なビジター体験と、画期的な有料テイスティングを紹介する2回シリーズ。
文:WMJ
仙台駅から車に揺られて約1時間。奥羽山脈に向かって広瀬川を遡ると、春の雪解け水がほとばしる新川との合流地点に辿り着いた。ここは今から48年前、竹鶴政孝がニッカ第2の製造拠点に選んだ場所。ニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸溜所の門を入ると、青空に映える赤いキルン棟が見えた。
穏やかなニッカ池の水面では白鳥が羽を休めている。その畔にある新しいビジターセンターは、3月27日にグランドオープンしたばかり。平屋建てのガラス窓には周囲の山々が映り、歴史ある蒸溜所の風景にすっかり溶け込んでいる。
宮城峡蒸溜所は、これまでも専門スタッフによるガイドツアーや蒸溜所ショップなどでビジター体験の充実に努めてきた。蒸溜所見学全般のサービスを提供しているのは、株式会社仙台ニッカサービスという別会社である。同社の高梨直也社長が、ビジターセンター開業のいきさつを教えてくれた。
「テレビドラマの影響もあって、ここ宮城峡蒸溜所も一昨年は過去最高の33万人、昨年は23万人という大勢の訪問客を迎えました。さらに昨今のウイスキーブームで、ウイスキーをもっと知りたい、もっと体験したいというお客様が増えています。今までの見学スタイルではそうしたお客様のニーズに応えられないという課題を解決すべく、2015年から計画を進めてきたビジターセンターをついにお披露目することができました」エントランスホールでは、NHK連続テレビ小説『マッサン』の撮影にも使用されたという銅製のポットスチルが出迎えてくれる。壁面には宮城峡の美しい自然風景とともに、「ウイスキーづくりにトリックはない」といった竹鶴政孝の言葉が映し出されている。
ビジターセンター内のシアターで、『宮城峡物語』と題された約6分の映像を鑑賞した。1934年の余市蒸溜所創設から35年後、竹鶴政孝は理想のウイスキーをつくるために第2の製造拠点である宮城峡蒸溜所を建設。その挑戦が約半世紀の歳月をかけて現在のウイスキーブームに結実し、なお見果てぬ未来へと続いている。
香りを体験しながらウイスキーづくりを理解
ビジターセンターのメインホールは、現代美術館のようにモダンな雰囲気だ。一面がすべてガラス張りのため開放感があり、屋内からでも周囲の自然が間近に感じられる。7つのパートからなる展示コーナーは、ひと回りするだけでウイスキーづくりについて詳しく学べる工夫が凝らされている。
また「樽の効用」コーナーでは、貯蔵に使われる樽の違いを解説。それぞれの原酒の特性を香りで実感きるほか、実物大の樽や製樽工程でおこなわれる樽内面焼き(チャー)の映像も迫力満点だ。「ブレンド」コーナーではブレンダー気分で原酒の香りを確かめ、「カフェグレーンウイスキー」コーナーでは蒸留機の実物模型やモニター映像から世界的にも希少なこのカフェ式連続式蒸溜機の仕組みを理解できる。
メインホールの奥へと続く「ニッカウヰスキーの歴史」コーナーは、ボトル展示を中心にニッカ83年の歴史が追体験できるエリアだ。すぐ隣には竹鶴政孝と妻リタゆかりの品々を展示中の「企画展示」コーナーがある。まさにNHK連続テレビ小説『マッサン』のシーンがよみがえる内容だが、ここは約半年ごとにテーマを変えて多彩な企画展示を予定しているという。
ビジターセンターのオープンに際して、ニッカウヰスキー株式会社の岸本健利社長も喜びを語ってくれた。「宮城峡蒸溜所は1969年に創設され、ウイスキーづくりに欠かせない単式蒸溜器と連続式蒸溜機の両方を併せ持つ世界でも珍しい蒸溜所として操業しています。35年前にニッカウヰスキーに入社した私自身、最初の勤務地が宮城峡蒸溜所だったので感慨もひとしおです。ビジターセンターがウイスキーのおいしさや愉しみ方を広げてくれる場になることを願っています」
ビジターセンターの入場も、ガイド付き蒸溜所見学もすべて無料だ。次回はウイスキーファンにおすすめの有料プログラムについて詳しく紹介する。
(つづく)
ビジターセンターがオープンしたニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所の見学ガイドはこちらから。
WMJ PROMOTION