ニッカの新しいシングルモルトをテイスティング

August 10, 2015

余市は、より余市らしく。宮城峡は、より宮城峡らしく。蒸溜所の個性をより明確に打ち出したニッカの新しいシングルモルトが、9月1日から日本全国で販売される。熟成年数の表示を取り払い、より自由度を増したヴァッティングの成果をひとあし先に味わってみた。


文:WMJ

2014年は創立80周年と竹鶴政孝の生誕120周年を迎え、今年にかけてNHK連続テレビ小説「マッサン」の大反響でも注目されたニッカウヰスキー。2015年の上半期は、前年比の155%という大幅な販売数量アップを記録している。また本年度のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2015では、ウイスキーメーカーとして最高の栄誉である「ディスティラー・オブ・ザ・イヤー」を初受賞し、「フロム・ザ・バレル」もカテゴリー最優秀賞の「トロフィー」に輝いたばかりだ。

そんなニッカが、ウイスキーメーカーの本領でもあるシングルモルトを新しいラインナップで発売するという。「個性を研ぎすまし、一新」というキャッチフレーズの通り、余市と宮城峡、それぞれの蒸溜所の個性をこれまでよりも強調した味わいになっているようだ。チーフブレンダー佐久間正氏の手引きで、さっそくテイスティングを始めてみよう。

重厚で力強い「シングルモルト余市」

シングルモルト余市 シングルモルト宮城峡<br>アルコール分:45% 品目:ウイスキー 容量:瓶700ml・500ml・180ml・50ml<br>販売目標:2ブランド合計で3.4万箱(1箱=700ml×12本) ※2015年9月~2016年8月

まずは新しい「シングルモルト余市」から味わってみる。グラスに鼻孔を近づけると、まずは麦芽の香り。トーストを思わせる麦が焦げたような香りは、世界でも珍しい石炭直火蒸溜で加熱したもろみの匂いだ。またバナナやマンゴーを思わせるフルーティーな香りは、ニッカが使用する特別な酵母由来のもの。年数制限を取り払ったことから、円熟味にプラスして若い原酒の力強さも組み合わさっている。佐久間氏によると、新樽やシェリー樽の比率も上げているようだ。

口に含むと、香りでは決して前面に出てこなかったピート、スモーク、潮の香りが力強く主張を始める。鼻孔に昇ってくるヘビーピート原酒の香りは、まさに余市ならではの重厚な味わい。軽い渋味や苦味もあるが、オーク樽からくる甘みが口いっぱいに広がって穏やかに持続し、余韻は極めてスモーキーである。さまざまな年数やカスクの原酒を用いた「オール余市」となり、蒸溜所の個性がいっそう際立ったように感じられた。

華やかでスイートな「シングルモルト宮城峡」

次は新しい「シングルモルト宮城峡」である。円熟した余市の香りと比べると、よりフレッシュで軽やかなフルーティーさが際立っている。以前よりも比率を上げたという新樽由来のバニラ香が立ち上がり、やがてシェリー樽から来るドライフルーツの香りに包まれる。リンゴ、メロン、パイナップルなど、色の薄い果物を思い起こさせるやわらかな香りだ。

口に含んでも、その軽快さとやわらかさは変わらない。モルトの甘味と樽香がやさしく広がり、口の中で味がじんわりとほどけていく。ライトピートタイプの原酒が穏やかなピートの余韻を感じさせ、すっきりと洗練されたキレもある。蒸気でじっくりと蒸溜された宮城峡らしい穏やかさに、シェリー樽や新樽のモルトを加えることで、軽快な中にも深みと厚みが備わっている。まさしく竹鶴政孝が意図したとおり、余市とは対照的なウイスキーづくりのアプローチがより深化した印象だ。

さらに個性を強調した限定発売の2アイテム

シングルモルト余市 ヘビリーピーテッドシングルモルト宮城峡 シェリーカスクアルコール分:48% 容量:700ml販売数量:各3,000本

新しいシングルモルトの発売に合わせ、それぞれの個性をより強調したボトルも限定で発売される。「シングルモルト余市 ヘビリーピーテッド」は、余市の力強い特徴を生み出すヘビーピートモルトのみを厳選してヴァッティングしたもの。焚き火のようなスモークが前面に押し出され、新樽の比率が非常に高いことから特有のバニラ香が強い。口に含むとアイラにまったく引けをとらないユニークなパワーがあり、フルーティーな香ばしさや厚みに圧倒される。

もうひとつの「シングルモルト宮城峡 シェリーカスク」は、シェリー樽だけをヴァッティングすることで、ドライフルーツの香りが際立つタイプ。シェリー熟成でもっとも年数の古いワインが貯蔵された「ソレラ」を使用し、オロロソ、ペドロヒメネスなどの典型的なシェリー樽から授かったレーズンのような香りが鼻孔の奥に残る。麦の軽快な甘味も相まって、宮城峡特有のやわらかな深みがふくよかに強調されている。以上の2アイテムは、わずか各3,000本という希少品である。

熟成年数の制限を取り払ったことで、ニッカの新しいシングルモルトには10年未満の若い原酒から20~30年といった古い原酒までが幅広くヴァッティングされていると佐久間氏は明かす。「ウイスキーづくりにトリックはなし」とは、ニッカを創業した竹鶴政孝の言葉。蒸溜所の個性をより明確に打ち出した新しいシングルモルトは、あらゆる意味でニッカらしいアプローチだ。

9月1日に新発売される「シングルモルト余市」と「シングルモルト宮城峡」は、発売後1年で3.4万箱(2ブランド合計、1箱700ml☓12本)の販売を見込んでいる。詳細な商品情報はこちらから。

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