革新の波 ― カナディアンミスト蒸溜所【後半/全2回】
独自の製法を守るカナディアンウイスキーの蒸溜所・カナディアンミスト。後半では製法の隠れた技に迫る。
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このような革新があっても、コリングウッド蒸溜所で使用される材料と製造過程はほとんど代わっていない。地元産のトウモロコシとライ麦は今もなおここでマッシングされ、発酵、蒸溜、熟成されている。そして、長く低い熟成庫で3年を過ごした後、カナディアンミストが蒸溜所内でブレンドされる。
では、どこに秘密の技があるのか? オンタリオ産「デントコーン」を挽いた後、水、蒸溜廃液、少量の大麦麦芽と混合してスラリー(粥状の液体)ができる。これをステンレス製煮沸器で加圧煮沸し、澱粉を分離する。このマッシュに未精製の天然酵素を加え、トウモロコシ澱粉を糖に変換する―未精製なのは、その方が最終的にウイスキーの複雑さを増すからだ。
カナディアンミスト蒸溜所ではベースウイスキーに一般的な蒸溜用の酵素と酵母を使っているが、フレーバリングウイスキーには使っていない。フレーバリングウイスキーはライ麦、トウモロコシ、大麦麦芽のブレンドからつくられる。
また、蒸溜所用地外で管理される独自の専用酵母株も使っている。どれくらい「専用」か? 各バッチのDNA構造をチェックして正確さを厳格に保っているほどだ。
その酵母を使って、風味を最大限にするため、最大5日間マッシュを発酵させている。
次にマッシュを20基ある60,589リットルのステンレス製マッシュタンのひとつにポンプで汲み入れ、ここで蒸溜用の酵母を添加する。
3日後、できた麦汁を、「犠牲の」銅を詰めたステンレス製コラム・スチルで3回蒸溜する(WMJ註:銅は蒸溜液の硫黄臭を除去するため、ステンレス製のスチルの一部にあえて使用していると思われる)。これが3回蒸溜の秘訣で、スコッチの製造では通常は行われない工程だ。
1回目は短いコラムのウォッシュ・スチルを使う。面白くなるのは2回目で、ウォッシュ・スチルから出て来たアルコール度数およそ60%のスピリッツを15%まで希釈する。これは普通ではない。そう、ここではジョージア湾のきれいな水をさらに加えて、再蒸溜しているのだ。
フーゼル油は水と混じらないので、この2回目の蒸溜で除去され、格段に風味の増した蒸溜液が後に残る。カナディアンミスト蒸溜所の新しいスピリッツが実にクリアでありながら風味に溢れている理由はここにある。
精溜コラムによる最終蒸溜で元のアルコール度数に戻り、樽に詰めて熟成する準備が整う。
カナディアンミスト蒸溜所の熟成庫3ヵ所のそれぞれに最大で38,000個の樽が収められているから、常に10万樽以上が静かに眠っていることになる。
土っぽい芳香に満ちたこのウイスキーの天国が、天使たちを引きつけるのも頷ける。
FACT BOX
住所: カナディアンミスト・ディスティラーズ・リミテッド
202 MacDonald Road, Collingwood, Ontario, L9Y 4J2
ウェブサイト: www.canadianmist.com
【通常は見学不可】