スウェーデンに旗を掲げて【後半/全2回】

November 23, 2013

前半では、日常的に交わされる会話から実際に事業が立ち上がったマクミラの奇跡をお伝えした。では、どのようにして世界がこの蒸溜所に注目するようになったのかを訊いてみた。

スウェーデンに旗を掲げて【前半/全2回】

前半でお伝えした通り、スキー休暇での会話を実現させた8名はスコットランドやアイルランドの蒸溜所を巡り、ウイスキー製造工程を学んだ。どこもかなり似たようなものとは言え、蒸溜所特有の癖があることを早い段階で悟った彼らは、できる限りスウェーデン流のウイスキーを製造しようと決めた。
わずかな資金で何とかやりくりをした。 マクミラ社の社長、マグナス・ダンダネル が子供の頃休暇を過ごした地方の、廃業した酪農場や鉄工所の所有者に話しを持ちかけ、マクミラ(蚊の棲み処の沼地)が誕生した。
創業者達による天才的な一歩は、インターネットを利用して、プロジェクトの‘会員’になるために少額の投資をしたい人がいるか調査を始めた事だった。反応は驚くほど良く、お陰でこの新進の企業家たちはかなりの資金を得た。会員制度には別の利点もある。スウェーデンの愛飲家たちが期待を膨らませてくれれば、将来発売されるウイスキーに飛びついてきてくれる保証もできるのだ。

 

マクミラ社は独自に最初のポットスティルを建てた。銅製の小型蒸溜器は1回の運転で30ℓそこそこ、1樽250ℓか300ℓのカスクを満たすために必要とされるわずかな量しか製造できなかった。
そこで、マクミラウイスキーのため、特別に30ℓの小さなオーク製のカスクを製造したのだ。この決断が副産物としてさらなる利益を生み出した。ひとつは小さなカスクのほうがより早く熟成する。もうひとつは、大きなカスクは価格的に無理だが30ℓカスクなら購入可能な個人顧客に、数百樽も販売出来ているのだ。

最初のウイスキー生産に多大な関心が寄せられたので、2001年には投資に関して早々に決定が下され、急速に拡充が行われた。そして、2002年までに3,500万クローネそれ以上の資金を調達し、スコットランドからより大きな蒸溜器を持ってくるために、株の発行をしなければならなくなった。
「株の半分は、ほんの一部だけ銀行が所有していることを含めて、少額投資家が保有している」マグナスが言う。「あとの半分は、スウェーデン産大麦の使用を通じて利益を享受している、ファーマーズ・アソシエーションが占めている」

農家の関与は、現在ことさら成果を上げている。多くの蒸溜所が世界的な穀物不足や価格倍増と闘っている一方で、マクミラは地域との繋がりによって供給を確保している

 

マクミラ製品のすべてにスウェーデンとの絆が見られる。樽はスウェーデン産のオークを使用、大麦を乾燥させるためのピートは、かつてバルト海であった土地から調達されるので独特な塩気の風味を与える。幾ばかりかの大麦は伝統的なスウェーデンの製法に則り、ネズの枝の上で乾燥させる。
その結果として生まれたウイスキーは、本格的なものが2006年に出始めたばかり。だんだんと慣れ親しむ味で、新しいボトルが出るたびにますます力をつけ、世界からも注目され始めている。
今後、新たなスウェーデンの蒸溜所が出来たときには、マクミラをスウェーデンスタイルとして提唱し同類の味わいのモルトを製造していくのか、マクミラのウイスキーが独自のスタイルとなるのか、実に将来が楽しみだ。
マクミラウイスキーが、国の管理下にある酒類販売店を通して発売された時は、一大イベントとなった。スウェーデンで行列を見たのは、ABBAのラストコンサートツアーの時以来だった。それぞれのボトルが発売当日に完売した。

全国に散らばる5ヵ所のビジターセンターと世界規模のウイスキーブームのお陰で、このスウェーデンの蒸溜所の未来はかなり明るい。
「ウイスキーづくりは簡単なものじゃない」マグナスが言う。「ウォッカの製造のようにはいかないのだ」
「それでも、さらに質のよいスウェーデン製の製品を作り出そうと考えている。スウェーデン独特で、本当に誇れるものを

カテゴリ: Archive, 蒸溜所