ウイスキー用語集―AからZまで【W】
ウイスキー用語集「W」では、とくに「ワーム・タブ」について考察する。
何のマニアであれ仲間内でしか通じないジョークがあるが、ウイスキーも例外ではない。「ウイスキー通」の集団と一緒に蒸溜所を見学すると、彼らは必ずガイドにワーム(ミミズ)を飼っているかどうか聞く。最高のジョークではないが、忍び笑いのひとつやふたつは必ずある。
ジョークはさておき、ワーム・タブはウイスキー愛好家にとって興味と魅力の宝庫である。伝統的にも、ワーム・タブは何年も前に不要とされたが、近年再評価されてきており、いくつかの蒸溜所が再導入を検討するまでになった。
最近では、気化したアルコールを再び液体に戻す方法として、コンデンサーを用いることが多い。コンデンサーの中には銅管が入っており、その中は冷水が流れている。スチルから送られた蒸気はこの銅管に触れることで冷えて液化する。これが銅管をつたって下降して、スピリッツとなって現れるわけだ。(「銅の効果」参照)
ワーム・タブはこれと同じことをする。通常は蒸溜所の外に設置され、冷たい流水をはった桶で、その底を螺旋状にパイプが通っている。ワーム…ミミズという名前の由来である。
ワーム・タブはコンデンサーよりも場所をとり、維持するのにかなりの作業を必要とし、また、気まぐれな天気の影響を受ける。なぜなら、水が温まると本来の目的である冷却が困難になり、場合によっては不可能ともなり得るからである。このような理由から、大抵のワーム・タブはコンデンサーに取り替えられた。
しかし現在、蒸溜所が、厳格な「ウイスキーの規定」の範囲内で新しいフレーバーをつくり出す方法を試行錯誤している。そこで、ワーム・タブを使用して液化する過程が再検討されるようになった。アルコール成分の気体から液体への変化はワームの中の方が時間がかかり、多くの人はこの穏やかな変化がスピリッツのフレーバーに特別な効果をもたらすと考えている。
そしてもちろん「W」といえば…ウイスキー! ウイスキーとは何か?…これはあなた自身で見つけてほしい。ちなみに、私にとっては「なくてはならないもの」だ。用語の解説ではないかもしれないが、その言葉の持つ意味は、ここまでこの用語集を読まれた方ならもうお分かりの筈だ。
用語集―【W】
ウォッシュ(Wash)
水と麦芽糖と酵素が混ざった甘い麦汁(ウォート)にイーストを加ええてできたもろみのこと。酸味があり、通常、そのアルコール度数は7度から9度である。
ウォッシュバック(Wash back)
木(松やカラマツなど)製か、ステンレス製の発酵槽。ウォートにイーストを加えて発酵させ、ウォッシュをつくる。
ウォッシュスチル(Wash still)
モルトウイスキーをつくるために使用されるふたつのポットスチルのうちの最初のスチル。初溜釜。銅製で、ウォッシュを蒸溜してアルコール度数が20度前半のローワイン(初溜液)に変える。
ウイスキー(Whisky, Whiskey)
穀物を麦芽に含まれる酵素で糖化し、発酵・蒸溜し、樽で熟成させた蒸溜酒の総称。スコットランド、日本、カナダなどではWhisky、アイルランド・アメリカではWhiskeyと綴ることが多い。
ウォート(Wort)
細かく砕いた麦芽(グリスト)に熱い湯を注ぎ、麦芽中のデンプンを酵素で糖化したもの。麦汁。