ウイスキー用語集―AからZまで【T・ U・ V】

October 15, 2014

今回はT、U、Vの文字を取り上げ、テネシーウイスキーについて考察する。

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ウイスキー業界における最大の皮肉のひとつは、世界一売れているアメリカンウイスキーが実はバーボンではないということだ。

ケンタッキー州の生産者は我慢がならないだろうが、アメリカのウイスキーと聞いて多くの人々が思い浮かべるのはまずジャックダニエルだ。しかしジャックダニエルはバーボンではない…テネシーウイスキーなのだ。

バーボンはケンタッキー州でしか生産できないわけではない。一連の厳格なルールを守りさえすれば、アメリカのどこでバーボンを造っても構わない。しかしジャックダニエルにおいては、あえてルールに従っていないのである。ジャックダニエルや同州のもうひとつの蒸溜所、ジョージ・ディッケルは何も気にしていない。彼らは「ルール破り」こそが、テネシーウイスキーにプラスアルファを与えると考えている。

テネシーウイスキーは大筋でバーボンと変わらない。原料はトウモロコシ、大麦、ライ麦の混合物で、連続式蒸溜機で蒸溜し、バーボンと同じようにサワー・マッシュを加える。大きな違いが表れるのは蒸溜が済んだ後からだ。
「リンカーンカウンティ・プロセス」と呼ばれる方法では、サトウカエデの木炭層でニューメイクのスピリッツをゆっくりと濾過する。ここで油脂分の一部と、不必要なフレーバーの成分が取り除かれ、なめらかなウイスキーができる。この過程が、バーボンのルールに反するのだ。
テネシー州では当然、この過程こそが美味しいウイスキーをつくるといわれ、ジャックダニエルを愛飲する何百万もの人々も賛成するに違いない。どう考えるにせよ、テネシーウイスキーは明確かつ独自のスタイルを持っていることは事実だ。

だがもしバーボンを炭で濾過するのが違反なら、その作業を行ったと記したラベルを時々見かけるのはどうしてだろう?
それは熟成を終え、樽から出した後に炭で濾過したバーボンがあるからだ。
この場合の木炭の使用には、樽から出したばかりのウイスキーの表面に浮いている固形物や澱を取り除く以上の意味はない。この過程を経てもバーボンには「何も加えられていない」ということにされている。
この作業が一般的に行われたのは、不純物を取り除く技術があまり発達していなかった頃のことだが、昔ながらの手法を重んじる人々のために、今でも同じやり方をしているバーボン・メーカーもある。

用語集―【T・ U・ V】

テイル(Tails)
蒸溜工程で終わりに差し掛かった頃には、スチルから出てくるスピリッツは、アルコール度数も低くフレーバーも少なくなる。そのため、必要な部分以外を次の蒸溜の時に再利用する。この部分の蒸溜液をテイルまたはフェインツと呼ぶ。

シン・スティレージ(Thin stillage)
スティレージとは、「発酵後に残った液体と固形物(アルコールを含まない残滓)」のアメリカ北部での呼び名。固形物を除いたものをシン(薄い)・スティレージと呼ぶ。

ウシュク・ベーハー(Uisge beathe)
ウイスキーの語源になったゲール語で、意味は「命の水」。

ヴァッテッド・モルト(Vatted Malt)
グレーンウイスキーは使わずに、複数の蒸溜所のモルトだけ混ぜたものを指す元々の用語。現在ではブレンデッドモルトウイスキーが一般的。

ヴァッティング(Vatting)
複数の蒸溜所のモルトを混ぜる作業。

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